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限りなく馬鹿だった頃  作者: 京香
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4 あたしは字が読めない

彼の電話の声に、

あたしは痺れた。

好きになったせいもあるけど、

その声は、あたしの耳朶を巡って入り、頭蓋骨の内側を一周して、脳味噌にズキュンと突き刺さる。


「二人で…会おうよ」


友達のお節介なカップリングを無視して、飯田君は言ってくれた。


みんなに内緒の秘密・・・

甘い誘惑。


てる子や松子を出し抜いた快感と優越感で、脳味噌が躍り出すようだった。


放課後。

茅ヶ崎の隣の駅で約束をした。

「駿河屋さんて店の前で待ってて、学校から帰ったらすぐに行くから」


皆さん、

私この頃さー、

馬鹿だったから駿河(するが)って漢字を読めなかったの。


飯田君の言う店がないので、駅前の電話ボックスから電話をした。


ケータイ無い時代で、お母さんとかが出ると緊張したものです。


「え?目の前に駿河屋さんて見えるでしょ?」


「しゅん?…がやさんならあるよ」

少し沈黙があった。



「…馬って入ってる?」


「うん」


「それが、するがやさんて読むんだよ」

飯田君は笑っていた。


あたしは恥ずかしくて、駿河屋さんの看板を見上ながら、電話ボックスの中で真っ赤になってしまった。


そして飯田君が現れてからも、ずっと赤いままだったのだ。

カッコわりぃよー。


彼はまだ紺のネクタイの制服のままで、あたしはえんじ色のネクタイ。


お互いの制服を見るのは初めてだった。


まぶしくも新鮮。


ゲーセンをながめて、

飯田君は定期入れを買うと言うので付いていった。


「何色が好き?」

飯田君が振り返ったので、あたしは「白」と答えた。


すると、白の定期入れを店員さんに包んでもらい、

あたしに寄越した。


「ぇ?」


意味が分からないので、キョトンとしていたら、

「プレゼント。舞子のボロボロだったから」


マジ?

男の子って、そんなところをみているものなの?

いつ見られたんだろう?と思いながら、ドキマキしたあたしは、「あり、ありがとう」と言いながら、


蟻がとうなら、芋虫ハタチ。


思わず下らない駄洒落を、言いたい誘惑を必死で抑えたのだった。

(駄洒落がマイブームでしたから、これで、さんざん友達をうんざりさせておりました)


それから映画を見た。

高校生のデートなんてそんなもんですよね?


夕方になって、

「お腹すかない?」


あたしは胸が一杯で空いてないと言った。


「俺はペコペコ」


飯田君は喫茶店でカツカレーを頼んだ。


あたしはお腹が空いているのに空いてないと言い、ソーダだけ。


神様、どうかあたしが馬鹿だとバレませんように…

あたしはさっきの失態を忘れようと、必死だったので、口数は少なく、

定期入れをもらった割には、顔が固まっていた。

だからぎこちなかった。


彼の方はこの時、こいつならやれそー、なぐらいの気持ちだったかも知れないけど、私には王子様にしか見えなかったのだ。


飯田君はタバコを吸った。

制服なのに大胆不敵。

固い空気の中で、彼も何とかしたいとあがいていたのかもね?


そして煙を吐き出す時には目を細めた。


そう言えば見開いて吐き出す人はいないなーとボンヤリ考えたのだった。




※※※※※

恋にイカれているやつは、傍迷惑なもんだ。

見て居て気持ち悪い。


その頃の私、トイレで座った瞬間にニコニコしていた。


孤独な空間で思う事は一つ。

飯田君だ・・・


用を足して、ドアを開ける。


スッピンの母親と目が合う。

朝っぱらからニンマリする娘に、ちょっとイラつき、罵声が飛んで来る。


「いつまで入ってんの!」


知らないよ~、

世界はバラ色、

人生は美しい。

通学途中も笑う。

電車の中、駅の階段、

不気味ですなー。

だぁって、楽しいんだもーん、ふふっ うっふ~っ、


人はいつ、この病から開放され、毎日が落ち着くのだろ?

一生治らなければいい。でも、そしたら一人しかエッチ出来ないね?

それはそれで残念だよ。

(独り言)


さて、あたしの友達は、名前が無かったので、今頃ですが、ご紹介します。


彼女は加部水絵。


彼氏が7人居ると豪語の、やり手ギャル!

あたしは、そのおこぼれを頂戴したのです。

それでなければ、17歳のあたしが自力で男子を捕まえられる訳がありません。


友達は 不細工なんです 。

あたしの方が100倍可愛いい・・?(まだ言うか)

でも悪魔のよーな接客トーク

で、男を悩殺します。


後に普通の主婦になったので、キャバ経験あるわけないですけど、男心を揉むのが上手い!!


とにかく男は、褒めてよいしょだよと教えてもらっても、

あたしにはそれを駆使する能力がない。

哀しい・・・

ちきしょう~っ!

あっ、

当時乙女のあたしが、言う訳ありません。訂正。



※※※※

「舞子、あんたドンケとど~なってんの!?」


学校で、加部水絵があたしの机に尻を乗せた。


(どうって?あたしは奴を男にカウントして無いよ)

口には出さないけど、明らかに拒絶の態度のあたしに、加部 水絵は畳み掛ける。


「ドンケあんたが好きなんだよっ! 可哀相じゃん!」


又はじまったよ

何であたしが、可哀相だからって、奴と付き合わなきゃいけないのさ。


「ドンケなら絶対浮気しないからっ、傷つかなくてすむからだよ!」

加部 水絵は超おすすめ特売セールみたいに言った。

てか、ドンケに浮気なんか出来ないだろ?


こないだ、皆で海に行った時、あたしは水着の上にはおっていた、デカめのシャツにグレープジュースをこぼした。


ドンケは「貸しな」と言い、海の中で洗って来て砂だらけにした。


飯田君は「馬鹿だな!ドンケっ!シャワーがあるだろ!シャワーが!」と怒ってた。


家に帰ってバックをあけたら、

日焼けと渇いた砂浜のしょっぱい匂いがして、ジャリジャリ砂のついたシャツが出てきた。


あ~っ、これを飯田君が洗ったなら・・

でも洗って来たのはドンケだったので、あたしは昼間の海の匂いにむせた。


・・・ドンケにあたしが好きなのは、飯田君だと告白したかった。

あたしの相手は表面上、小池 精気・・・通称ドンケ。

性格は優しい。いつも自分より、相手の要望を優先する。

でも、優柔不断、頼りない。


飯田君は、俺様タイプ。

ちょっとカッコつけだ。


何故飯田君が好きなのか?

理由は無い。

人を好きになるのに理由なんて無い。

後々、冬ソナの名セリフをあたしはすでに発見してた

すげ~!



イカれている私は、男の子を好きになったんじゃなく、

頭に勝手な妄想が渦巻いているだけだったのかも知れない。



続く。




お読みいただきましてありがとうございます。

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