3 DVデート
「逃げなっ!!」
あたしとテル子と松子は、
弾けるように走り始めていた。
「みんな!バラバラに逃げよう!」
あたしは叫んだ。
その方が、捕まりにくいと思ったからだ。
陸上女子松子は、スニーカーで砂浜をガンガン飛ばした。
まるで弾丸だ。
あたしはサンダルで、膝が震えているが必死だ。
しかし、砂に足を取られて全然進まない。
テル子は内股走りで、もっと遅れていた。
とにかく、こんな所で犯されるのは嫌だ!
集団のヤンキーに囲まれた自分が、現実味を帯びて迫ってくる。
(絶対に嫌だ!やられたくない!!)
こんな時に限って、周りには誰もいないのだ。
広大な砂漠に捨てられた気分。
神様、
こんなことなら、赤いポストの約束を果たせば良かった。
そしたら男子の紹介話に乗らずにすんだし、カンニングだってしなかったのです。
振り返るとドンケは、集団でめちゃめちゃに殴られていた。
袋叩きと言うけど、本当にそうだ。
可哀相…
でもどうすることも出来ない。
※※※※
ドンケは、
下腹を押さえながら、ヨロヨロとこっちへ来た。
ヤンキー達は、後ろではやしたて、笑っている。
あたしは、許っせない気持ちになった。
「だ、大丈夫?」
ドンケの顔は、ボコボコに腫れていた。
唇には血と砂が滲んでいる。
テル子は黙ってハンカチを差し出した。
テル子って、女らしい・・・
「ド、ドンケ~っ?」
少し先の岩の上で、煙草を吸いながら座っていた男の子が、驚いた様子で駆け寄って来た。
白のTシャツとジーンズ。
普通さが砂浜と似合っていた。
「ドンケ!誰にやられたんだ?!」
「分かんない…」
「そうか、ちきしょう…俺が居ればな」
オレ?
俺が居たって10人は無理だしょ?
と思ったけど・・・その子はカッコ良かった。
あたしは・・・
一瞬で恋に落ちた。
飯田 聡17歳。
その子が現れてから、急に会話が弾みだした。
空気が爽やかになったのだ。
もちろん乱闘の後で、興奮状態だから弾むに決まっている。
やがて三人目が現れた。
小泉 達也君、17歳。
家の手伝いをしていて遅れたと説明した。ドンケの様子に、ありえねーと眉をひそめた。
てか、何故バラバラに現れるの?
これではあたしの予想したデートと違う。
あたしの思い込み妄想デートは、現地でキッチリ集合して、どこかに遊びに行き、盛り上がって、楽しかったねまた遊ぼー
っ・・・て、
なるかと思っていた。
それが…
後から分かったんだけど、実は男の子達もクラスが別々で、あまり口を聞いた事が無かったんだって。
ただ、うちの学校の女子達とデートしてくれないかと、あたしの友達に頼まれ、集まってきたらしい。
でもリーダーは自然と飯田君になった。
何か飲む時も、行き先も飯田君が決めた。
ドンケは飯田君の家来だ。
もう一人、小泉 達也君。
彼はマイペースでクール。
でも、私達と会っていて楽しいのかそうでないのか、喜怒哀楽が無くて良く分からない。
飯田君とは、違うタイプのイケメン。スマップなら吾郎ちゃんで、飯田君はキムタクタイプとイメージしてください。
あたしはもう、絶対に絶対に飯田君だった。
なのに、衝撃的な事を翌日友達から告げられる。
「ドンケがあんたを気に入ったってさ舞子」
「はっ?」
「髪型とか、超絶好みだって」
「…い、いやだっ!いやだぁ~っ!」
友達はすでに勝手にカップリングしていた。
陸上女子松子と、クールな小泉君。
風紀委員でオバ化してるテル子とキムタク飯田君。
そしてピンクシャツ&グリーンのスーツのドンケとあたし。
ちよっと待て!
なんでテル子と飯田君なの?
飯田君はそれでイイダ~!?
つーか、あたしの方が顔だってスタイルだって性格だっていいのに!
あたしはとても納得出来ない!
テル子~!
あの身の程知らず!
「だってテル子が飯田君を気に入ったんだよ」
友達は言った。
「ドンケはあんたが好きだってゆーし・・付き合ってあげなよ可哀相じゃん!」
可哀相・・
可哀相ですむなら警察はいらん!
あっ、違うか?
とにかく私たちのグチャグチャなグループ交際は始った。
グショグショじゃ無いよ!
未だ17歳だし・・
そんなこと分かってるって?
※※※※
「僕と誰が乗る?」
飯田君が振り返って聞いた。
ここは小田急沿線の遊園地。
六人御一行様が、初めて選んだデートコースだ。
カップリングは決められてしまったので、
飯田君とボートに乗るのは・・・あの、オバ化のテル子。
でも、あたしは飯田君の言い方に 、何だかファジーなものを感じたので・・・
「私が乗る!」
と名乗りをあげた。
飯田君は私の手を取ってサッサとボートに乗り込んだ。
ドンケの困惑した顔。
テル子の裏切り者~っみたいな視線を背中にビシバシ感じたけど、痛くないよ!
お気に入りをゲットする為には・・・
当然その後はギクシャクした雰囲気で、全く盛り上がらずに、
デートっつーか?
集会は終わったのだ。
その夜。
電話がなった。
「今度二人で会わない?舞子ちゃん」飯田君の声だった。
私は昼間、ボートを漕ぐ彼の腕の筋肉を思い出して、胸が熱く・・
いや もう、悶えてしまいました。
☆私はこの頃、
男は全員私を好きなはず!と、固く信じていました。
アホですな。




