うそをついてはいけない
「どうして嘘をついたんだ! 私はそれに腹がたっている!」
僕は今、じいちゃんの前で正座をしている。
僕は、じいちゃんが大切にしていた盆栽にサッカーボールを当ててしまい壊してしまった。
「いいか! 壊してしまったことはしょうがない。しかし、なぜ飛んできたカンに当たって壊れたと言ったんだ!」
そう。僕は壊した理由を風で飛んできたカンのせいにしたのだ。
そんな嘘もすぐにバレた。外は風が一切吹いてなかったのだ。
「こら! うつむいていないで私の目を見なさい!」
僕はブルブルと震えながら顔をあげた。じいちゃんの顔はぼやけて、白髪交じりの黒髪は逆立っているようだった。
「口があるのだから何か言うことがあるだろ!」
「ご、ご、ごめんなさぁぁぁい! うぇぇ~ん!」
僕は我慢していたものをすべてはき出すように泣いた。
薄く目を開けると、じいちゃんの部屋から出て行く背中が見えた。
その夜、僕は眠れなかった。
ちゃんとご飯は食べてお腹はいっぱいだ。
お母さんとおばあちゃんが「おいしい~」と笑っちゃうぐらいおいしくて、僕もいっぱい食べた。
きっと、おなかがすいているせいじゃないんだろう。
僕はもう一度目をつぶった。
目をつぶると、今日のじいちゃんが暗いところから出てきた。
僕はあわてて目をあけて周りを見た。そこは僕の部屋で、どこにもだれもいなかった。
そのあと何度も目をつぶってみるが、何度もおじいちゃんがあらわれて、ついには目がさめてしまった。
目をこすってから、僕は口の中がかわいていることに気づいて、足音を立てないようにキッチンに向かった。
シャー シャー シャー
キッチンに向かう廊下で、お風呂場から何か物音が聞こえてきた。
おばけかな? と思うと「怖い」より「会いたい」という気持ちの方が強くなった。
ゆっくり、ゆっくりとお風呂場へ向かう。
シャー シャー シャー キュッ
ドアに手をかけると同時に、物音は止まった。
僕のことに気づいたのだろうか? 消えちゃうのかな? いや、それでも今なら間に合う!
僕は思いっきりドアをあけた。
そこに立っていたのは、タオルを首にかけているじいちゃんだった。
先ほどまでの物音の正体は、シャワーの音だったことが分かった。
しかし、そこに立っているじいちゃんは、いつもと違うところが一つだけあった。
電気の光に照らされて、頭がピカピカと光っていた。
「なあ? 嘘をついてはいけないんだ!」
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