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エルフの国の○○屋さん  作者: バスチアン
エルフの国の定食屋さん
13/20

エルフの国の小学生


わたしのお父さんは変な人です。

まず名前が変です。

お父さんはタカノリという名前です。

昔はサガラ・タカノリだったそうです。

どうして名前が二つあるのかお父さんに聞いてみると、お父さんの生まれた国では家族が同じ名前を名乗るんだそうです。

家族で同じ名前を名乗るだなんて、まるで貴族みたいです。

お父さんは貴族だったのと聞くと、笑って「違う」と答えました。

その後にどうしてタカノリ・サガラじゃなくて、サガラ・タカノリなのか聞くと「どうしてだろうな?」とわたしの方が質問されてしまいました。

自分の名前なのに知らないなんて変なの。

やっぱりお父さんは変な人です。



わたしのお父さんは変な人です。

だって見た目が変です。

黒い髪の毛と黒い目をしているのですが、こんな変な色をしてるのはお父さんだけです。

わたしの髪はお母さんと同じ濃い金色なので、お母さんに似て良かったです。

前に「どうしてお父さんの髪の色は変な色なの?」ってお母さんに聞いたら、「海草をたくさん食べたからよ」って教えてくれました。

海草というのは海に生えている草のことです。

昔、一度だけ家族で海に行ったことがありますが、海の上にプカプカ浮いていて気持ち悪かったです。

あんなの魚屋さんにもあんなのは置いてませんが、お父さんの生まれた国では海草を食べるんだそうです。

お父さんのいた国は変な国です。

そんな国にいたお父さんはやっぱり変な人です。



わたしのお父さんは変な人です。

お父さんはエルフの国の外からやってきたそうです。

鉱人族ドワーフの国よりも、猫人族ケットシーの里よりも、緑人族ゴブリンの国よりも、もっともっと遠くの国で、ロック鳥に乗ってもたどり着けないくらい遠い国らしいです。

そんな遠い所からどうしてやって来たのかとお父さんに聞くと「大きな地震があって、津波に呑み込まれたらエルフの国にいた」と言っていました。

地震というのは地面が揺れることらしいです。

地面が揺れるって、どういう意味なんだろう?

それに地面が揺れたのに、どうして海の話になるんだろう?

やっぱりお父さんは変な人です。




「あら、フェナミナ。学校の宿題?」

「うん、作文だよ。お父さんの作文」


お母さんが声をかけて来たので、作文を隠します。

だって見られると恥ずかしいからです。


「へぇ、お父さんの? お母さんにも後で読ませてね」


お父さんの話をするとき、お母さんはいつも楽しそうです。

いつもニコニコしています。

それなのにお父さんはあまり喋りません。

お母さんがニコニコ話しかけても、いつも「……ああ」とか「……そうだな」とかしか言いません。

あんなに黙ってて疲れないのかな?

以前、お母さんに聞いてみたら「おとこはくーるな方がかっこいいのよ」って言われました。

よく分かりませんが、暗くてカッコいい男の人をくーるというみたいです。

お父さんは好きだけど、暗いのがカッコいいというのが、わたしにはよく分かりません。

お母さんは「フェナミナも大きくなったらお父さんのかっこよさが分かるわよ」って言ってけど、そんな日が来るのかな?





わたしは学校に行く前に毎日店をお掃除します。

机も椅子もピカピカです。

わたしが生まれる前は店ももっと大きかったらしいけど、こっちの小さいお店に引っ越してきたみたいです。

どうして小さい店に引っ越したのって、お母さんに聞くと「経営のびじょんが見えていなかったからよ」と言っていました。

びじょんの意味が解らなかったのでお母さんに聞いてみると「アハハ」と笑って教えてくれません。

きっとわたしが子どもだから難しい話だと思ったのかな?

その後にお父さんに聞いてみたら「3年、5年、10年後にどうなっていたいか考えることだ」って、教えてくれました。

3年後も5年後もうちはずっと食堂のはずなのに、変なの?

10年経ったら……お父さんは食堂をやめちゃうのかな?

ここの食堂はおじいちゃんの代からのお店で、なくなったらお客さんが困るからやめないでって言ったら、お父さんはわたしの頭を撫でて笑っていました。

このお店がなくなっちゃうとお母さんも困るし、おじいちゃんも悲しいはずです。

わたしはこんなに真面目に言っているのに、お父さんは真面目に取り合ってくれません。

わたしが泣きながらお願いして、ようやくお父さんは食堂をやめないと約束してくれました。

その日からわたしは今まで以上にお掃除を頑張るようになりました。

わたしはおじいちゃんの顔を知りませんが、お母さんはよくおじいちゃんの話をします。

昔から来ているお客さんからもたまにおじいちゃんの話を聞くことがあります。

場所は変わっても、ここはおじいちゃんの思い出の残ったお店なのです。

だからお父さんがこのお店をつぶしてしまわないように、わたしがしっかりしないといけません。


「お母さん、掃除終わったよ」

「ありがとう、フェナミナ」

「えへへ~」


掃除が終わったわたしの頭をお母さんが撫でてくれます。

お母さんはわたしの髪の毛をいつも手入れしてくれます。

お母さんの時間があるときは、三つ編みにしたり、お団子にしたり、色んな髪型にしてくれます。

時間がないときも色んな髪留ヘアピン髪飾シュシュを使って可愛くしてくれるんです。


「じゃあ、お母さん、お父さん。行ってくるね」

「ええ、いってらっしゃい」

「……忘れ物だ」

「ふぇ?」


お父さんに言われて見てみると、カウンターの上に小さな包みが置いていました。


「あ! お弁当!!」


わたしは思わず声を上げます。

危なかったです。

もう少しでお弁当を忘れてしまうところでした。


「あらあら、フェナミナってば、うっかりさんね」

「……お前も気づいてやれ」

「アハハハ、ごめんねフェナミナ」


お母さんは笑っています。

わたしはお弁当をお母さんから受け取ります。

お弁当はお父さんが作っています。

お父さんは料理がとても上手なのです。

お父さんの料理は魔法みたいでベタベタで苦いレバーの料理も、フワフワの触感のお肉に変わります。

いつもそうしてくれたらいいのに、お父さんはたまにわたしの嫌いなものをわざと入れてきます。

どうしてそんなことをするのかと言うと“しょくいく”のためらしいです。

“しょくいく”というのは、食べ物を通して勉強することらしいのですが、食べるのが勉強なんて変なの?

お父さんはよく難しい言葉で変なことを言います。

毎日美味しくしてくれたらいいに決まってるのに、お父さんは意地悪です。


「じゃあ、お父さん、お母さん、行ってくるね」

「今度こそいってらっしゃい」

「……ああ」


わたしはお弁当を鞄に入れると、店のドアを開けて学校に向かいます。

今日のお弁当は何かな?

とっても楽しみです。





お昼ご飯の時間がやって来ました。

わたしは教室で友達と一緒にお弁当を開きます。

この時間がわたしはいつも楽しみです。


「今日のフェナミナちゃんのお弁当どんなの?」

「ねぇ、見せて。みせて~」


お弁当を覗き込むのは鉱人族ドワーフのバナリエちゃんと、猫人族ケットシーのネメネリちゃんです。

お父さんが作ってくれたお弁当は美味しいだけでなくとっても綺麗で、たまにおかずで絵を描いていたりします。

開ける前はいつも、ドキドキ、ワクワクなのです。


「ふっふ~ん」


わたしは得意げにお弁当の蓋を開けて見せます。

今日のお弁当は絵は描いていませんでしたが、とっても可愛らしいお弁当でした。

右と左で区切られたお弁当の片側は色とりどりのおかずが格子状の枠の中に収められていて、もう片一方にはわたしの大好きな緑豆の甘煮が入っています。

ベタベタのレバーは入っていないので一安心です。


「うわ~、今日もお弁当美味しそうだね」

「いいな~」

「えへへ~、いいでしょ~」


わたしはお弁当を手に得意になってお弁当を自慢します。

もちろん自慢しっぱなしじゃありません。

皆でお弁当を見せ合ったらおかずを交換します。

大好物の緑豆も少しだけわけてあげます。

友達だったら当然です。

レバーが入っていたら……代わりに食べてもらいます。

と、友達だから当然なんです!


「フェナミナちゃんのお父さんはすごいね」

「そうかな?」

「うん、すごいよ~。うちのお父さんはこんなの出来ないよ~」


緑豆の甘煮をスプーンで掬いながら鉱人族ドワーフバナリエちゃんが言います。

確かにこの緑豆は絶品です。

一緒に入っている四角い黒いやつがまた美味しいのです。


「うちのお父さんも料理なんてしないよ」


猫人族ケットシーのネメネリちゃんも長い尻尾を揺らして同意します。


「でも、うちのお父さんはあんまり遊んでくれないよ」


うちは日曜もお店をしているので、お父さんが遊んでくれることは滅多にありません。

だから、お父さんもお母さんも毎日とても忙しいのです。


「う~ん、それは確かに嫌かも~」

「でも、フェナミナちゃんのうちはお母さんもスゴイよね。いつもフェナミナちゃんの髪の毛を可愛くしてくれてるもん」

「フェナミナの髪ってキレイだもんね~」

「えへへ~」


自慢の金色の髪を褒められると嬉しくなってしまいます。

今日は時間がなかったので編み込んではいませんが、そのかわり緑色のガラス玉がついた髪留ヘアピンをつけてくれました。

お父さんもお母さんも普段は忙しくて遊んでくれることは少ないのですが、こうやってわたしのために色々とやってくれているのです。

だから我がままを言ってはいけないのです。


「フェナミナちゃんのおうちは作文にかけることがいっぱいありそうだね」

「うん、いいよね~。うちはお父さんも、お母さんも、普通のひとだから~」


羨ましそうに二人はわたしを見てきます。

大好きなお母さんを褒められてわたしも満更ではありません。

わいわい楽しくお弁当の時間が過ぎていきます。

でも、事件が起こったのはそんなときでした。


「でも、この緑豆美味しいね~」

「うん、この黒くて四角いヤツを一緒に食べると美味しいね。ねえ、フェナミナちゃん、この黒いヤツって何なの?」

「ふぇ?」


バナリエちゃんに聞かれてわたしの手が止まります。

そう言えば、いつも食べてるこの黒いヤツって何なんだろう?

うちの食卓にはよく上がってくるのですが、他所では食べたことがない気がします。


「う~ん、分かんない。何だろう?」

「フェナミナちゃんも知らないんだ?」


わたしもバナリエちゃんも首を傾げます。

すると、答えは意外な所からやってきました。

ネメネリちゃんです。


「あ~、これって昆布だよ~」

「コンブ?」

「うん、海草の一種だよ~。エルフの国ではあんまりたべないけど、猫人族ケットシーの里ではよく食べるらしいよ~。うちのご飯にもよく出てくるし~」

「か、かかか海草!! 海草って海に生えてるあの海草!?」

「あ、うん……そうだけど~?」

「フェナミナちゃん、どうしたの?」

「あわ、あわ、あわわわわわわ……」


わたしは知らない間に海草を食べてしまっていたみたいです。

どうしよう。

海草を食べたら髪の毛が黒くなってしまいます。

お父さんのことは好きですが、あの変な髪の色になるのは嫌なのです。


「フェナミナちゃん??」

「フェナミナ~?」

「あわわわわわわわ……」





その日の晩御飯はドキドキしながら食べました。

海草が入っていたらと思い、豆を食べるときもスプーンの先でより分けながら食べていきます。

……うん、海草は入ってないみたいです。


「フェナミナ、どうしたの?」

「なな、なんでもないよ、お母さん」

「そう?」


お母さんは不思議そうに首を傾げます。

お父さんも眉間に皺を寄せてわたしの顔を覗いています。

どうしよう、すごく心配されています。

お父さんをチラリと見ます。

黒い色の髪の毛が視界に入ります。

ボヨボヨ鳥の羽みたいな色で、あまり綺麗ではありません。

変な色です。


「……何だ?」

「な、なんでもないよ」

「……そうか」

「うん、なんでもない、なんでもない」


わたしは首をぶるんぶるん横に振って応えます。



次の日の朝ごはんは麦のお粥でした。

海草は入っていません。

でも、その日のお弁当は……


「フェナミナ~、どうした~?」

「フェナミナちゃん?」


ネメネリちゃんとバナリエちゃんが聞いてきます。

お弁当を持ったわたしは固まってしまっています。

だってお弁当に海草が入っているからです。


どうしよう

どうしよう

どうしよう

どうしよう

どうしよう


次の日もお弁当に海草が入っていました。

次の日も入っていました。

次の日も

……………………





「フェナミナ……最近、あんまりご飯を食べてないわね?」

お母さんが聞いてきました。

「ふぇ? そ、そんなことないよ」

「そう?」


最近ご飯を食べるときも海草が入ってないか気にしているのでご飯が美味しく感じません。

お弁当に入っている海草も最近はずっとバナリエちゃんとネメネリちゃんに食べてもらっています。

もしも朝ごはんや晩ごはんに海草が出てきたらどうしよう。

そんなことを考えていたら、お父さんがどんぶりいっぱいの豆を持ってきて、テーブルの上にドンと置きました。

中に入っているのは緑豆の甘煮。

もちろん四角く切った海草もいっしょです。


「……食べるぞ」

「はい。あなたよそいますね」

「……ああ」


お母さんはどんぶりに入った緑豆の甘煮を一人分ずつ分けていきます。

お皿に分けられた豆と海草が三つ。

ひとつはお父さん、もうひとつはお母さん、最後のひとつは当然わたしの目の前に置かれます。


「さぁ、食べましょう」

「……ああ」

「……う、うん」


ご飯の時間が進んでいきますが、緑豆のお皿にはスプーンが伸びません。

食べても海草を避けて豆だけ食べるので、お皿の中にはだんだん海草が増えていきます。

さすがにお母さんもそれに気がつきだしました。


「フェナミナ、さっきからあまり食べてないけど大丈夫?」

「え!?……あの……」

「今日はフェナミナの好きな緑豆の甘煮なのに……ひょっとして体調が悪いの?」


体調が悪いという言葉が出た途端、お父さんの肩がピクリと動きます。

さっきまで黙々とご飯を食べていたのに、ものすごく心配そうな表情でわたしの顔を見てきます。

どうしよう。

お父さんは“しょくいく”に厳しいのです。

海草が食べたくないなんて言ったら怒られてしまいます。


「どうしたの? 具合が悪いのなら今日はもう寝る?」

「ううん、そうじゃなくて……」


お母さんが心配してくれます。

でも具合が悪いわけじゃないんです。

それなのにお母さんを心配させてしまって、胸の中がきゅっと苦しくなってきます。

お母さんの目をまっすぐ見れないわたしはテーブルに視線を落とします。

そこにあるのは緑豆の甘煮です。


「あら? お皿?」

「あわ、あわわわわ……」


どうしよう。

大ピンチです。

お母さんに気がつかれてしまいました。

お父さんもいっしょになってわたしのお皿の上を見ています。

そしてお父さんが言いました。


「……昆布、食べたくないのか?」

「はわっ!」


わたしの目の前には海草だけ残されたお皿が置いています。

言い逃れは出来ません。

最初にレバーを残したときは食べ終わるまで許してくれませんでした。

どうしよう。


「前は食べてたな?」

「えっと、えっと……」


前まで食べれていたのは海草だからって知らなかったからです。

でも今はこの四角いヤツが海草だって知ってしまいました。


「嫌いになったのか?」

「それは…あの……」


だって、海草を食べたら……

お父さんの髪の色が目に入ります。


「……どうした?」

「あの…う……うぅ……だって、だって……」

「どうしたの? フェナミナ」

「……フェナミナ?」


お父さんとお母さんがわたしの目をまっすぐに見てきます。

もうダメです。

目からポロポロと涙がこぼれてきます。

気がつくとわたしは泣いていました。





わたしのお父さんは変なひとです。

わたしのお父さんは、変な名前で、変な髪の色で、変な国から大きな地震に巻き込まれてエルフの国にやって来ました。

普段は無口で暗いのですが、でもそれは言わないだけで本当はお母さんとわたしのことが大好きなのです。

お父さんは料理がとっても得意で、わたしが病気にならないように栄養のあるお料理を作ってくれます。

特に海草です。

なんと海草には髪が綺麗になる効果があるのです。

前に「どうしてお父さんの髪の色は変な色なの?」ってお母さんに聞いたら、「海草をたくさん食べたからよ」って教えてくれました。

でもそれはお母さんの勘違いで、本当は「海草を食べたら髪の毛が綺麗になる」という話だったのです。

わたしが泣いてしまった日、海草が食べたくない理由を伝えたときにお父さんが教えてくれたのです。

お父さんが言うには「海草を食べると髪が生えるのは俗説、黒くなるのも俗説、でも髪にとっていい栄養が多く含まれているのはある程度の実証じっしょーでーたがある」そうです。

最後がよく分かりませんでしたが、海草が髪の毛にいいことはわかりました。

お母さんはお父さんに「ちゃんと教えるように」と注意されると、いつものように「アハハ」と笑っていました。

でも、これで一安心です。

海草を食べても変な色になったりしません。

ここしばらくは海草が気になってご飯が美味しくありませんでしたが、今日からモリモリ食べれます。




「あれ~?フェナミナ、機嫌良さそうだね~」


お弁当の時間に声をかけてきたのは猫人族ケットシーのネメネリちゃんです。

「本当ね。最近はお弁当の時間になるたびに死にそうな顔をしていたのに?」

同意するのは鉱人族ドワーフのバナリエちゃんです。

そんな二人に向かい、わたしは胸を張って答えます。


「えへへ~♪ 今日のわたしは、昨日までのわたしとは違うんだよ」

「は?」

「へ?」


二人はきょとんとした顔でわたしを見ます。

その手元にはお弁当が抱えられています。


「んふふ~、今日のお弁当は何かな~♪」

「フェ、フェナミナちゃん。本当にどうしたの?」

「今日も昆布食べよ~か~」

「大丈夫。今のわたしに怖いものはないんだから!」

「ふ~ん、だったらいいけど~」


ネメネリちゃんの言葉を振り切りわたしはお弁当を開けます。

そこに入っていたのは……


「うぐっ!」

「おっ、レバーだね~」

「本当だ。フェナミナちゃんの苦手なヤツだね」


そうです。

そこに入っていたのは山盛りのレバーでした。


「今日のフェナミナは怖いもんなんだよね~」

「うっ……それは!」


ネメネリちゃんが三角耳をピクピクしながら、悪い笑顔でニヤニヤしています。


「フェナミナちゃん、どうしても無理だったら、私が食べようか?」

「だ、大丈夫だよ……バナリエちゃん。きょ、今日のわたしは一味違うんだから」

「そ、そう? でも、無理しないでね」

「う…うん」


わたしは口を大きく開けて、苦くとベタベタしたレバーを頬張りました。


「フェナミナ、がんばれ~」

「むぎゅ………………苦い」


お父さんはたまに意地悪です。

で…でも、これも食育なのです。

わたしはお父さんの愛情とレバーが混じり合った複雑怪奇な味を涙しながら味わいました。





「私はあなたの髪の色好きですよ」

「……別に、気にしてない」



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