探偵の仕事
「おいおい、本当にこれだけしか持ってないのか?」
柄の悪いランサーの男と
「隠し持ってるんじゃ、ないだろうな」
小太りのガンナーの男。
神秘の洞窟の最深部のクエストクリアをすることで手に入る赤の光石。換金レートがいいので、初心者がよく金策に使うのだが、それに目をつけて悪いことを考えるやつもいる。
「ほ、本当にこれだけです」
困った顔のシーフの少年に
「じゃあ、ドロップするか試してみるか?」
「プレーヤーから、直接ドロップって」
さすがに警備兵が来るんじゃないのか、とガンナーの男。
「平気、平気、このゲームって結構「直接叩くのもありなのか」
「ぐはっ」
ランサーの男に、ボロい片手剣のダメージ。
そのダメージソースを見て
「ボロい片手剣の威力、おかしくね?」
「そういや、多少は元のステータスに依存するって」
説明があったような、と続ける。
「もっと叩いて、そっちからドロップしてやろうか」
「だ、誰だてめぇ」
妙な仮面を被った小柄なフェンサー。
装備品から見ても、初心者だということが丸わかりだが。
(う、うわぁ……)
(あの仮面、超ダサい……)
不良たちは、あからさまに仮面のフェンサーから目をそらした。
「他人からカツアゲしてるんじゃねぇよ」
遊ぶならルールを守れ、という仮面のフェンサーに
「なんか、萎えたわ」
「行こうぜ」
そういって、去って行った。
「……なんか、妙に避けられているような」
というか何でこんな格好で、と霧夜は呟く。
「あ、あの……」
シーフの少年は「ありがとうございます」と頭を下げる。
「その仮面、Sランクアイテムの真理の仮面ですよね」
「は? Sランクアイテム?」
話はちょっと前に遡る。
「じゃあ、この仮面装備して」
響から渡されたものに
「……ガン○ムのライバルキャラでも被ってそうだな」
霧夜は眉を寄せる。
「もし、クラスメイトとバッタリあって……ひょっとして、霧夜っていいやつ? ああやって強がって見せてるけど雨の日に見つけた子犬を優しく守ってあげているんだ」
とか言われたらどうする、と響にいわれ
「鬱陶しい……」
霧夜はため息をつき
「つーか、アンドロマリウスなら蛇とかだろ」
「あはは、よくご存知で」
てっきり嫌がらせの一環でよこした仮面だと思ってた。
(この仮面、けっこういいものなのか?)
「確か、なぞなぞ博士の最終問題を問いた景品ですよね」
前言撤回。
おそらく、響が暇潰しに挑戦したクエストの景品。
「本当にありがとう。あの、できれば名前を……」
「……ただの初心者だ」
多くを告げず、去って行った仮面のフェンサーを見て
「また、会えるといいな」