Dvergr
ーーードヴェルグ。
かつてオーディン達三兄弟が大地を作りあげたとき、
生命力溢れており、多くの生き物が育まれ、成長し
ていった。
その内の二種の木の枝に形を与え心を与え、声を与えたのが人間であるならば、鉱石や土に与えたのがドヴェルグである。
人間同様人型でありながら、元が元であるためか、肌は褐色を通り越して黒く、光の下で生きることができず、薄暗い地中を生活の場に選んだ彼らは、生活しやすいようにか、身長は低くいが、胴回りはがっしりとして力強い種へとなっていった。
神々の多くは、醜い彼らの外見から嫌悪しました。
そのため彼らとの接触が少なく、彼らのことを良く知らなかったのでした。
しかし、ロキはそうではありませんでした。
このころすでにロキは、両親が巨人族ということで一部の神族から疎まれており、陰口をたたかれたり絡まれたりすることがあり、逆にそういう存在に対し、ロキ自身は見た目や生まれといったことで決めつけたりすることに忌避感があったのかもしれません。
神族の内で暗黙の了解的にドヴェルグと関わってはならない、という雰囲気があったので、おおっぴらに接触は控えたものの彼らに興味があったロキは度々彼らが潜み棲む地下世界へと赴いたのである。
ドヴェルグは生まれが生まれであるからか、
鉱石や金属の扱いがうまく、
精緻な飾りや装飾を随所でみたロキは純粋に感動して、
誉めたりしたのであった。
そんなことが続いたので、最初はどこか遠巻きにされていたロキもいつの間にか彼らに気に入られ、一緒に酒を呑み交わす間柄になったのです。酒はロキの探訪のお土産で、彼らは大いに喜び、実は酒に強いようであったドヴェルグに付き合わされてうんざりすることも度々であったが、実は気のよい連中であり、ロキにとってはやはり、神族といるより居心地がよかったのである。
そんなことがあったので、ロキは精緻な金の装飾品を見たとき、それがどこで作られたものかおおよその見当がついた。
そしてそれはドヴェルグと神族の関係が悪化する嫌な予感がしてもいたのである。
「グルヴェイグは性格の卑しいドヴェルグに金の装飾品を作らせ、その対価として神族の女神と情事に及ぶことを唆したと見られます。恐らくグルヴェイグはその間を取り持つことによってなんらかの報酬、神族からは恐らく金を得ているのだと思います」
できればドヴェルグを悪しく思われるようなことは言いたくないロキでしたが、オーディンに義理を立てていたため、多少ボカす程度に正直に報告したのでした。