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9話 気付かぬ再会

 

 少し遅れて夕食の席に着き食事を済ませた俺は、現在1人だけ、皆が集まり話している外で今後どうなるのかを見守っていた。


 ちなみに食堂は100人の人間が同時に使える程広く、10人用の横長机が10席用意され、食事も着いた時には並べられていた。

 味は普通に美味しかった。


「じゃあ決定だね……。皆、恐らく、いや、絶対に今後危険な事が起こるだろう。けど! 皆で力を合わせれば必ず帰れる筈だ!! 諦めないで協力し合って絶対に日本へ帰ろう!!」

「おう!」

「ああ!頑張ろうぜ!」

「そうだね、皆居るんだし……」

「そうよ、こっちには久山君や雲之君だって居るんだし!」


 どうやら決まったようだ。

 皆で盛り上がっている。

 まぁ予想はしてたけどな。だって、魔樹とかいうのを倒さないと帰れないんだし。最初から答え出てるのに何を話し合う事があったのか。


 そして流石はクラスのリーダー。

 皆をやる気にさせて団結させた。俺なら絶対無理だな。そもそも俺はあの輪の中にすら絶対に入れない。

 あそこに居るのは力があり役に立ち誰かに必要とされる有能な人間、そして俺は、力の無い、この世界で誰にも必要とされない役立たずの無能。皆が日本に帰る為に戦う、けど俺にはそれができない。


 皆が戦っている時、俺はどうなっているんだろうか? 城で1人のうのうと過ごしているのだろうか? もし日本へ帰る時、俺は帰れるのだろうか、いや、帰させてもらえるのだろうか……。

 そんな不安が過るが今考えていても仕方が無い。


 はぁ……。


 もう終わったし……戻ろ。


 俺は気付かれないように食堂の出口へ向かい、今だ盛り上がって楽しそうに皆が騒いでいる食堂を後にした。


 ◇◆◇◆◇


「ふぅ」


 部屋へ戻った俺はベッドへ横になり一息。

 帰りにちょっと迷子になりかけたけどメイドさんが居て助かった。


「さて、どうしようか、つっても、何も無いんですがね……」


 ベッドで横になり天井を見続けて20分程して、ウトウトしていたとこで、コンコン、と部屋がノックされた。


 ベッドから起き上がりドアを開ける。


 …………。


 来客と見つめ合うこと10秒。

 ドアをそっと閉めて俺はベッドへ戻った。


「疲れてるんだ俺は。早く寝た方が良いな、うん」


 コン……コン……。


「……」


 もう一度ノック。

 何故だろう、唯のノックな筈なのに、今度のノックは開けるのが怖い。

 だが開けないともっと怖そうななので俺は再度ドアへ向かい開ける。


「なぜ閉めたのかはあえて聞かない事にしてあげます……。今、お時間いただけますか?」

「はい……」


 部屋への訪問者は全く予想できなかった人物だった。


「……何で俺のとこに? 東条(・・)さん」

「はい、少しお話がありまして」



 クラスのリア充グループの1人、東条凛だった。



「で、話って何かな?」

「……」

「? な、何?」

「……。いえ……」


 机を挟み向かい合って座り、話があると言われたので用件を聞くと、東条は何も答えずただジッと俺の目を見てきた。

 流石にそんな耐性は無いのでサッと視線を逸らした。


「……」

「……」


 お互いが無言のまま、部屋はシンと静まり返っている。

 何だこの空間は……地獄じゃないか……。


「……東野くんは……」

「は、ぃ? な、何?」

「……好きな人は、いますか……?」

「えっ?」


 何? 何て? 好きな人? ……何で?

 数十秒経ち、東条の口から出た言葉に俺の頭の上に大量の?が浮かんだ。

 言われてみれば、好きな人か……考えたこともないな……。最後にそんなこんと考えたのは、中学3年の終わり頃くらいだろうか?


 途中から転校して来た娘で良く話すようになって、確か卒業式の日に告白しようかしまいか迷った挙句、最後に皆が連絡先交換や写真とっている時その娘が1人になるのを待ってたけど、結局できなかったんだっけ……名前、なんだったかな……。


 懐かしい思い出に、僅かに心が温まる。あの頃はまだ普通に学生やってたなぁ。今もだけど。あの頃はイジメなんて無かったしな。まさか1年後自分がイジメられる事になるとは思ってもみなかったな。


「あっ、好きな人は、居ないな、うん」

「そ、そうですか……!!」

「お、おう?」

「良かったです……。夏奈さんと、あんな話してたから……」

「なんて?」

「ふふ、何でもないです」

「そ、そうか、もう良いのか? その、用は」


 途中何か言ったみたいだが聞こえなかった。けど、その後に見せた笑顔は、いつも大人びた感じの東条だが、その笑顔は年相応の可愛らしさがあって、とても似合っていた。


「はい、私はこれで失礼しますね」

「あぁ、またな」

「──……ッ、おやすみ、なさい」


 一瞬ボーッとして、再度ハッとなって早足で去って行った東条を見送り、俺はベッドへと倒れ込む。

 思わぬ来客があり中断されてしまったが、今度こそ寝よう……

 最後の東条の顔が赤かくなっているように見えたのは、きっと気のせいだろう。


(‘‘またな’’とか、久しぶりに使った……風呂は明日で……良いや……)


 薄れゆく意識の中でそんな事を考えながら、俺は眠りに着いた。



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