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6話

 

 平均よりもさらに下。

 俺です。

 今俺は哀れみの視線と一部蔑むような視線に晒されていた。

 皆がステータスを確認し終わると、爺さんが全員のステータスを確認すると言い、一人一人見ていったのだが、俺の番で止まった。


(そりゃそうか、あんなクソみたいな数値だもんな)


 あまりに予想外だったのか、何て言ったら言いのか分からないといった表情をしている。

 クスクスと笑い声が聞こえたので視線を向けると、高橋達が愉快愉快と言わんばかりに笑みを浮かべて笑っていた。


 チラリと視線を巡らせると、こちらを心配そうに見つめる御堂の姿があった。

 御堂や久山達はやはりチートだった。

 属性2から3つ持ちで、久山に限っちゃ4つ持ちとの事。流石トップ連中だわ。


「おい東野ぉ〜、落ち込むなよー」

「そうだぜ東野くぅん、俺達が守ってやるからさぁ」


 高橋と後藤が茶々を入れてきた。

 余程嬉しいのか口元が完全に緩み切っている。

 自分達が見下しイジメてる奴がゴミみたいな数値だったらそら嬉しいだろうな。

 自分と相手の能力がはっきりと分かったんだから。

 実際自分より俺の方が高かったらどうしよう、とか思っていたのだろうか?


 ……無いな。アイツらがそんな事考えるはずないし。


 一つだけ言えるのは、この世界でも俺は虐められる、ということだ。しかもステータスの数値というオマケ付きで。

 どうせ『役に立たないゴミ野郎』とか『無能』とか言われるんだろうな。

 そうなる事は目に見えてる。


「これは……とりあえずこれより王城へ向かいます、部下の者に付いて行ってください」


 爺さんの指示で部下の人達が生徒達を引き連れて部屋を出て行く。

 俺もそれに続いて部屋を後にしようとすると、


「待ちなされ」


 後ろから声を掛けれた。

 振り向くと爺さんがいた。


「お主にちょいと話がある」

「えっ? 分かっ……分かりました」

「無理して敬語を使わずともよい」

「あ、はい……」


 さっきと話し方違う。

 こっちが素なのだろうか?


「……諦めるでないぞ」

「え? どういう……」

「東野くん!」

「うぇっ!? み、御堂?」


 不意にまた後ろから声を掛けられ、振り向くと御堂がいた。

 いきなりでビックリしたわ。

 お陰で爺さんが言った''諦めるな''ってどういう意味か聞き損ねてしまった。

 本当タイミング悪いな……まぁ高橋はもう行ってるっぽいし、良いか。


「あの……ステータスの事は、気にしなくて良いと思う、あっ、嫌味とか、そんなじゃなくて、た、ただの数字でしょ? えと、だから……」


 励まそうと、しているのだろうか? 確かにただの数字と言えば数字だが、後々その唯の数字(・・・・)がどれだけ大事なのか、嫌という程分かるだろう。


 何より俺自身が、一番……


 俺がそんな事を考えていると、御堂は手を忙しなく動かし、勝手に慌てふためきだした。

 なにこれ? どうするの? 自分不良とは関わるけど普通の人とは普段あまり関わらないんで分からないんですが。


「私も、できることがあれば手伝うから……な、何でも言ってね……?」

「……ぅぃ」

「!! そ、そうっ、絶対、絶対だからね? 本当に何でも言ってね? わ、私に!! そ、それじゃ、先、行くねっ」


 余程恥ずかしかったのか、俯きながら言った御堂だったが、俺が返事をすると、バッと顔を上げ、表情を明るくし、僅かに頬を染めながら早口でまくしたて、小走りで部屋を去って行った。


「……ってちょぉぉおおい!?」


 違う違う違う!!「ぅぃ」って返事じゃないから!! 言われた事が予想外過ぎたのと何か頬は赤いし上目遣いだしでめちゃくちゃ可愛いのもあってなんかよく分かんない言葉でちゃったやつだから!!


 てか何で私に、の部分強調したんだよ。

 アレか? 私みたいな美少女が手伝ってあげるんだから感謝しなさいよね!? 的な?


 けっ、ツンデレはお呼びじゃねぇよ、俺はクーデレ派なんなんだよ。


  あ、いや別のパターンもあるのか……もしかして御堂が俺を好きとか……?


(いやいやいや、流石にそれは痛いぞ。でももしかすると俺のことを御堂が……フヒッ)


 ってちげぇ!!


 変な妄想してる場合じゃねえ、マジでやべぇぞ……本人は善意で言ったんだろうがコッチは迷惑以外なんもねぇ……もし高橋にバレたら……


「……冗談じゃねぇぞおい、早く追わねぇと…… !!」







「……若い、な」

「ですね。あ、フィルバ師団長、私達も早く行かないと」

「む、そうだった、つい観察してもうた、行こうか」



 ◇◆◇◆◇



「……チッ」


 人の気配が無くなり、部屋を出てすぐ脇にある柱から1人の青年が姿を現す。

 その瞳は嫉妬に染まり、ジッと、通路の方を睨みつけていた。

 そして青年もまた、通路を歩き、視線の矛先である、同じクラスメイトの青年と少女が集まっている建物の出口へと向かって去って行った。


 最後にそこに残ったのは、1人の青年の嫉妬と、怒りだけだった。



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