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4話

 

「どういうことだよおい!!」

「カメラ探せ!!」

「なによこれ……どうなってんのよ……」

「ウチに帰りたいよぉ……」

「ふざけんじゃねえぞこら!!」


 周りの騒がしさに段々と意識が覚醒していく。軽い倦怠感覚えながらも強引に意識を覚まし、横になっていた体を起こす。


「ですから、それはできませぬ……どうか、どうか……」

「ふざけんなっつてんだろうが!! とっと帰しやがれ!!」

「おいジジイ、真面目に答えねぇとただじゃおかねぇぞ……」

「いやはや……他の方々が目を覚ましたら全てお話しますと……」


(どうなってんだ……?)


 怒鳴る声の方へ視線をやると、魔法使いが着るようなローブを着た爺さんに脅すような口調で詰め寄る男子達数名が居た。その後ろでは、女子達が地面にへたり込み、涙を流していたり、友達と慰め合ったりしている。


 さらに全体を見回す。

 俺達が居るのは、教室程の広さを持った石造りの部屋だった。地面には、何やら怪しげな文字で構成された陣のようなものが書かれ、その上に、まだ気を失っている生徒が横になっている状態だ。


 もちろん俺が座っている場所も陣の中だ。どうやらクラスに居た生徒全員居るみたいだ。他には、爺さんと同じような格好をした人達が、杖を持ち、俺達を囲むように陣の外に佇んでいた。


(この状況は……知っている。ラノベや漫画で読んだことがある……)


 恐らく……異世界召喚……。

 自分でも馬鹿なこと言っていると思うが、これは予想であってまだ事実かどうかは分からない。ドッキリという可能性もある……とほぼゼロに近い希望を持ちながら目の前の言い争いを見守る。


「とりあえずこの部屋から別室へ案内します故、他の方々も起こしくだされ」

「マジでどうなってんだよ……おい、起きろ!」


 言い寄っていた生徒も少しは落ち着いたのか、まだ気を失っている生徒達を起こし出した。周りも同じようにまだ意識の無い生徒を起こしだした。


その後、俺達は怪しげな部屋を出て、別室へ移動した。


 部屋を出ると、今居た部屋とは違い、石畳ではなく、ちゃんと整備され整えらた、赤いカーペットが敷かれた通路だった。壁も凹凸が無く、こちらも整備され、舗装されていた。クラスメイト達も物珍しそうにキョロキョロと、視線を忙しなく動かしていた。


 外側の壁には、一定の間隔で壁に小窓が空いていて、通路に光を通していた。そして俺はその窓から見えた景色を見てドッキリ、悪戯、誘拐。ここに来て考えた事全てを投げ捨てた。


 そこには、赤を基調とした、石造りや煉瓦造り、木造りなど様々な建物が建てられていた。街を囲んでいるのか、遠目には、城壁が見える。極め付けは少し離れた位置に見える巨大な城だった。まるで映画のセットのような──。


 中世ヨーロッパのような街並み。


 直感的に確信した。


 ここは、日本じゃない。


 気を失っていたのは感覚的にはほんの数分程。そんな短時間で海外に行ける筈は無い。


 けれどここは日本じゃない。


 答え出てんじゃん……。


(マジかよ……)



 ◇◆◇◆◇



「では改めて、クルセリア王国魔法師団13隊、第三師団長をやっております、名をガート・ヒル・フィルバと申します。フィルバとお呼びくださいませ」


 別室に移された俺達は、豪華な装飾品が置かれた、先程よりも広い部屋に来ていた。大人数が同時に使えるような横長の机を挟み、全員分用意された椅子に男子女子に別れ座り、一息ついたとこで爺さんの自己紹介。

 皆何言ってんだコイツ、みたいな顔をしている。


 魔法師団? 王国?


 やっぱり確定じゃないですかやだー。


「いきなりの事で混乱しているかと思いますが、順を追って説明致します」


 そう言うと皆が頷いた。とりあえず今自分が置かれている状況を把握したいのだろう。そして爺さんが話しだそうとした時、1人の阿呆が居た。


「おい! 意味わからねぇ事言ってんじゃねぇぞ……良い加減帰しやがれ!」


 高橋だった。


 意味わからねぇって、それを今から聞くんだろうが……俺にはお前が意味分からないよ……。


 他の生徒達も同じような事を思ったのだろうか? 軽く引いている。こういう時単細胞な奴はありがたい。今だ戸惑っていたり困惑していたクラスメイト数人も頭が覚めたらしい。一緒になって引いている。


「それを今から説明するのです。席に着かれてください」

「そうだよ高橋君、とりあえず話だけでも聞かないと、今の状況を把握しておく必要がある」

「チッ……人気取りかよ」


 爺さんの言葉に高橋が何か言い返そうとした時、ガタリと音を立て椅子が引かれ、一人の男子生徒が声を上げた。


 久山(くやま)輝樹(てるき)


 クラスのトップカースト集団のリーダー格で、御堂もそのグループに所属している。容姿端麗、成績優秀運動神経抜群、サッカー部エースの絵に描いたような金髪イケメン。暗めの茶髪、吊り目強面の誰かさんとは大違いだ。


 高橋は久山に言われ、不満を顔に貼り付けたような表情で、乱暴に椅子を引き席に着く。一応久山も御堂と話していたりするが、ああやってボコられるのは俺だけだ。


「底辺ぼっちには偉そうにしてリア充イケメンくんには何もなしっすか……ああいうのお山の大将って言うんだっけ? そこんとこどうなんですかね高橋くん」


(って言いたいけど言えない今日この頃……)


「では……ここは皆様が居られた世界とは異なる世界でございます。皆様にはこの世界で魔物共を討伐してもらいたいのです。我々師団含め騎士団も総出で倒しているのですが……苦戦を強いられ……最後の手段として強力な力を持つとされる異界の方々、つまり皆様方を召喚した次第であります」


 おいおい……なんつー理由だよ……。


 周りを見渡すと、他の奴等も呆然としている。一部オタクらしき奴は何故か嬉しそうにしている。「我が邪気眼が遂に……」とかブツブツ言っていたのは聞かなかった事にしよう。


「それはつまり……僕らは帰れないということですか……?」


 今だ頭が追い付いていないクラスメイトを他所に、久山が尋ねる。

もう既にリーダーの頭角を現しはじめた。


「いえ、帰える方法はあります。ただ、帰るには魔樹の核が必要となります」

「マキ? どんなものなんですか?」

「はい。現在我々は魔物の侵攻を食い止めるのに苦戦しております。その魔物を生み出しているのが──『魔樹』でございます」

「なッ!?」


 マジか……そんなの戦うこと決定じゃねぇか……。






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