3話 召喚
「あ゛ー、いてっ……」
やっと終わった……用が済んだらポイですかそうですか……。
時間が経ち高橋四人は先に教室に戻って行った。最後に『おい、バレねぇようにしてこいよ……チクったりしたら、分かるよな?』と、聞き飽きるくらい聞いたセリフを吐いて。制服のズボンをはたき上着も脱いで手ではたき汚れを落とす。
(……これも全部アイツらの為、か)
そう思うと腹が立つがしゃあない。どうせ教師は役に立たない。何回か言ったが最初の一回だけで取り合ってもらえなかった。仕事しろよなマジで……。
「……よし、戻るか」
はたき終わった上着を羽織る。今日はもう無いだろ、と思いながら部室を後にし教室へ向かった。
◇◆◇◆◇
「あっ、やっほー東野くん。どこ行ってたの?」
あー、来ちゃったかー……うわぁ、見てる見てる。
「ちょっと先生に呼ばれて」
「そうなんだ、何の用だったの?」
「え? あ、あぁ、ちょっと荷物運んでくれって頼まれて……」
我ながらなんという穴だらけの嘘を、もし他の生徒に言っていたら確実に嘘とバレただろうな。何せ授業が終わると同時に四人に呼ばれ連れて行かれたんだからな。
余程鈍いのか御堂は俺が虐めにあっている事は知らない。どうやら高橋達が根回ししているらしい。ようやるよ、本当。
「へー! 偉いね東野くん、今度私も手伝うから呼んでくれないかな?」
手伝う? 高橋達をですね分かります。
「あー、それはちょっと厳しいかな? 結構重たかったし、こういうのは男の仕事だから、任せとけば良いんだよ」
「そうかー、あ、チャイム……ごめん戻るね」
助かった……丁度チャイムが鳴ってくれた。俺も席に戻り次の教科の教科書をとノート取り出す。もう呼ばれないよな?
「チョー痛い……もうアイツら裏で五人繋がってんじゃないのマジで……」
昼休み、また同じ場所でサンドバック。
あれか?最後のセリフがフラグだったのか?
くそっ、我ながら迂闊だった……!!
……はぁ、きつ。
今迄に死のうと思った事はまだない。一度少しだけ考えたことがあるが、あんな奴等のせいで死ぬのは癪なのでヤメた。復讐、も考えたが今の自分にはできそうにない。ということで筋トレにもチャレンジしたが三日坊主だった。我ながら情けない。
「……戻ろ」
服の汚れを落とし教室へ戻る。まだ昼休みということもあり教室内は騒がしかった。4〜5人のグループを作り楽し気に話す女子達、視線を移すと今度は2〜3人のグループを作り携帯ゲームやトランプをしている男子達。何故かオセロをやっているグループもある。
そして、その中で机に顔を埋めて寝たフリする俺。
チッ、後2人は同類が居たはずなのに、外に行ってやがるな。
結局俺はいつものように寝たフリをして昼休みを過ごす。
それから時間は経ち、昼休み終了のチャイムが教室に学校全体へ響く。
──それと同時に、クラスに異変が起きた。
「な、なんだこりゃ?!」
「ちょ、見えねえ!!」
「きゃぁ! 目が……ッ」
「なんなのよこれ!」
「知るかよんなの! 誰か先生呼んで来い!」
突如目を覆いたくなるような強い光が教室の床、壁、天井から発せられた。クラス中パニックになり騒いでいる。もちろん俺も例外ではない。ダッシュで教室のドアに向かい廊下へ出ようとしたがそれは叶わなかった。
「なんだよ、これ──ッ!?」
俺が最後に見たのは、一際強烈な光が全てを覆いさったとこだった。俺の意識はその光に包まれながら、暗闇へと落とした。
この日、俺の……俺たちの日常は、チャイムと共に終了した。