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2話

「おい翔くんよぉ……夏奈に話し掛けんなって言ってるよなぁ?」


 三時限目と四時限目の間に入る10分間の休み時間。俺は面倒くさい状況に追いやられていた。場所は人が少なく不良の溜まり場にピッタリな環境、廃部になった部が使っていた部室。


 俺はクラスメイト4人に囲まれている。何で冷静なのか? そりゃ毎日の事だからな。あー、いや毎日じゃないな。御堂が話し掛けてきたらか。まぁそうじゃなくても急に呼び出されて……ってこともあるけど。

 

 最初にこっちをニヤニヤとしながら俺の名前を呼んだのは高橋(たかはし)(りょう)。御堂に好意を抱いている男だ。そして俺を虐めている中心人物であり、俺の高校生活を壊した男。


 それと、勘違いしてるみたいだが俺から話し掛けてないぞ。てか見てただろお前、笑顔で見てたじゃん。


 俺は寧ろ話し掛けられて迷惑なんです、だから関わりたく無い人物No.1になってるんです。ちなみに2位は高橋。


 俺は最初からこんな風に連れ出されていたわけじゃ無い。きっかけは高校一年の時、高橋が御堂と俺が仲良さげ(高橋視点)に話しているのを見たというのが虐めの始まりだった。


「おぉ〜い? シカトこいてんじゃねぇよオイ!」

「グッ……」


 突然腹部を強烈な痛みが襲う。高橋に蹴られたようだ。取り巻きの3人はニヤニヤと不快な笑みを浮かべて様子を見ている。


(慣れたとはいえやっぱり痛いな……)


 そう、決まって俺が御堂と話した日にはこの理不尽な暴力が始まる。俺から話し掛けようが掛けられようが関係無くにだ。


 コレが始まったのは1年の二学期から、最初はクラスメイトが注意してくれてたりしたが、全くの意味を成さなかった。それどころか高橋は注意してきたクラスメイトに逆ギレし当たり散らす始末で、注意してきた生徒にも暴行するようになった。

 すると今迄庇ってくれていたクラスメイト達は掌を返し自分がターゲットになるまいと一切関与しなくなった。


 取り巻きの3人は途中から参加しだした。元々高橋と友達だったらしい。類は友を呼ぶ、ってか。

 ちなみに教師も1度だけ注意したが一週間もするとそれも効果を無くした。

 クラスメイトに関しては仕方が無いと思っている。だって、もし俺がそうだったら俺もそうするし。そう思うと責める気にはなれない。まぁムカつきはするが。


 そんなこんなで俺はぼっちデビュー、誰も寄り付かなくなった。オマケに高橋達から俺と同じように何かしらされた奴等が何故かお前のせいだと俺に当たってくるわでもう大変。


 クラスメイトからは影口叩かれ柄の悪い奴等には高橋四人組を筆頭にパシリに使われストレス発散に使われ、唯一被害が無かった教室も日に日に悪戯が酷くなり、部屋に籠城して学校を休む事もできたが、登校し続けた。

 反撃しようにも俺は喧嘩なんかしたことないし、勝てるわけもないのでそんな無駄な事はしない。余計酷くなるだけだ。


「シカトすんなって言ってんだろうが‼︎」

「カハッ……はぁ、はぁ、はぁ……」

「ケケケッ、亮くん手加減しちゃってる感じぃ? 俺も参加して良いぃ?」

「おう、どんどんやれやれ」


 今度は脇腹付近に衝撃が走り痛みと息苦しさが襲う。肝臓に入ったらしい。俺が蹲り呻いていると取り巻きの1人、声から察するに、後藤が俺の背を踏み付ける。


 それを始まりのゴングとしたのか、残りの取り巻き2人も参加し始めた。今から次の授業が始まるまでの5分間、俺はコイツらのサンドバックになる。

 ご親切に残った時間は俺に服の汚れなどを消させる。基本的に顔は攻撃されないが頭はされる。傷でバレるとか思っているのだろうか。今更、そんな事気にするのかよ。と、心の中で嘲笑う。


 そんな事実際に口にしようものなら今日は1日中サンドバックとなる。学校は勉強するとこでありサンドバックになりに来るんじゃない、良い加減ヤメろ。

 とリンチされているというのに呑気にもそんな事を考えつつ、殴られ、蹴られながら終わるまでの数分間、俺は心の中で、目の前のコイツらを逆にボコボコにする。


 抵抗? これが始まった最初の内はしていたが意味無いと知り今は無抵抗だ。心の中ではなんだかんだ好き放題言いながらも現実では何もできないビビりな奴と言うこと。虐められる方にも理由があるとか聞いたことあるが、一理あるかもな。


「っ……‼︎ グッ……ァ……本当……つまんな……」


 目の前のコイツら、そして何より、こんな状況に置かれながら、何もしようとしない……何もできない俺自身が。


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