10話
翌日、目が覚めた俺は執事の人に、部屋に備え付けてあるシャワーの使い方を教えてもらって体を流し、朝食の場へと向かった。
そして、そこで事件は起きる。
「東野くん、隣、良いですか?」
「はい……」
食堂へ席に着き食事へ取り掛かろうとした時、意図的にクラスメイト達から離れたとこに座っているはずなのに、声が掛かった。
朝は昨夜とは違いバイキングのような感じで、用意された料理から好きな物を取って食べるというものだ。
そんな中、既に食事している生徒も居たが、ピタリと動きが止まった。
ヒソヒソと話したりチラチラとこっちを見たりしている。高橋は一瞬こちらを見たが、御堂じゃなければ興味無いのか、また食事を再開した。
「東条さんが……」
「え? あの2人って……」
「うそ? そんな関係?」
「マジかよ……」
最悪だ。
朝からこんな目に逢うなんて……。声をかけてきたのは東条さんだった。
スープ、サラダ(みたいなもの)と手のひらサイズのパン2つを入れた、器三つを乗せたトレーを持っていて、俺が了承すると、東条さんは俺の対面の席へと座った。
「ごめんなさい、1人で食事していたのを邪魔してしまって……」
申し訳なさそうに、しゅんとなって言った。
正直、‘‘1人で’’のとこで結構なダメージを受けたが、相手に悪気はないはずなので、表情に出さず、俺はそのまま会話を続ける。
「いや、俺は全然、寧ろ嬉しいくらいだよ」
朝から美人と朝食、してみたかったんだよね。逆にこっちが朝から汚いもん見せてすいませんって謝りたいくらいだ。
「そ、そうですか。そう言ってもらえると、私も嬉しいです」
「──────」
天使は、実在したのか……。
東条は僅かに羞恥心の交じった笑顔を見せた。それだけで勘違いしてそのまま勢いで告白してしまうくらいの笑顔。
そしてとても、とても興奮を煽るような、イイ笑顔でした。
そして見惚れていると、
「おはよっ、私も一緒に良いかな? 東野くん」
「────え?」
「御堂、さん……」
二人目の来客だった。
◇◆◇◆◇
「………………」
三人が無言のまま、食事は続いていた。
最初は、御堂が場を盛り上げようとしたのか、二人に色々質問したりしていたのだが、ネタがなくなってきたのか、段々と無口になり、必然的に残り二人も話すことはなくなった。
料理を運ぶ手のみが動き、場には気まずい雰囲気が流れている。
何でこんなことになっているのかと、翔は困惑していた。
一人食事をとっていると突然美人なクラスメイトに声をかけられ同席──さらにもう一人のクラスメイトにも声をかけられ同席。
(これなんて罰ゲーム?)
男子からすれば、美人美少女なクラスメイトと共に食事するという夢のような体験にもかかわらず、翔がそう思うのも無理はなかった。
周囲からは視線が三人の席に集中し、ひそひそという声があちこちから聞こえる。
さらに男子たちはありありと嫉妬の視線を送っている。
その視線に気付いた翔は、頭を抱え、二人に聞こえないように、
「どうしてこうなった……」
気のせいか、窶れたようにも見える表情で、ぼそりと呟いた。