1話
「はぁ……」
月曜日午前8時。
休み明けという憂鬱な気分で憂鬱な学校へと登校している。
高校に入って2年目の秋。
ラノベや漫画のように幼馴染が迎えに来て一緒に登校しているわけでもクラスメイトと待ち合わせしている訳でもない。二年間毎朝1人で登校するというのが俺のデフォだ。
まぁ、別に友達欲しいとも思わないけど、望んだとこでできるわけじゃあるまいし。
っと、もう学校の前だったので校門を抜けて学校へ入る。
俺が通っているのは一学年6クラス、生徒数600人、校舎はコの字型4階建てのちょっと生徒数が多いだけの普通の高校だ。
教室がある3階へと続く階段を登って行く。重い足を1段、また1段と、登る毎に気も重くなる。
黒文字で2-3と書かれたプレート、原因である教室の前へと来た。まだ朝のHR前なので廊下に出ている生徒も少なくなく、ザワザワとしている。教室の前で立ち止まっていたせいかチラチラと視線が集まっていた。
いつまでもつっ立ているわけにもいかないのでドアを開け教室へ入る。一瞬、毎度の事だがクラスメイトからの視線が集まる。何時もの事なので気にせず自分の席へ向かい座ると、
「あ、おはよう東野くん!」
不意に横から声を掛けられた。もうそっちを見なくても分かる、正直見たくないし向きたくない、無視したい。
なんとかそんな気持ちを押し込め心中で溜息を吐きながらそちらを見やると案の定、予想は見事に的中した。
御堂夏奈。
整った小さな輪郭にぱっちりとした目、リップを塗っているのか薄いピンク色に、艶を持った小さな唇。身長は150後半くらいと小柄な体型だが出るとこは出ている少女。
街で見掛けたら絶対振り返るだろうなと言えるくらい可愛い。よく二次元の少女に付けられる美少女という名称を手にした者だ。本人にそんな自覚は無いだろうが。
さらにクラスの人気者であり学年人気No.1の女子生徒であり、『俺の関わりたくない人物ランキングNo.1』でもある。
そんな彼女が此方をニコニコと背中まで伸びた栗色のウェーブがかった髪を揺らしながら見ていた。
何でこんな娘が俺に話し掛けて来るのか、今だに分からない。正直やめて欲しい。
だが無視すると後が怖いので一応挨拶を返す。まぁ挨拶してもしなくても同じなんですがね。
花のような笑顔を咲かせている後ろで今にも人を殺しそうな、某殺人人形のみたいな表情の奴がこっちガン見してんだぜ? 怖過ぎ。
「うんうん、朝から表情が暗いね? もうちょっと明るく明るく!」
「ハハ……」
貴女と話しているだけで暗くなります。
男共の視線が凄いんですよ、どれも嫉妬、何でアイツが……とか、くだらないものばかりだが流石に此方も好きで話しているわけじゃないし……何でアイツが? 俺が聞きたいわ。全くもっていい迷惑だ。
「あはは、じゃあ私戻るね、またね」
そんな俺の思いなど露知らず、目の前の少女は手を可愛らしくフリフリと振り、席を離れ自分の席に着いた。もう来んな。
8時25分、丁度チャイムが鳴り担任教師が入ってくる。
今日も面倒な1日が始まった。