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魔法使いのお友達  作者: 雨夜 海
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逃げて、逃げて

いつも読んでくださる読者様、ありがとうございます。


そしてクロは、私を監禁することをやめた。



「クーロー、朝だって言ってるじゃん」

「昨日遅かったんだ....あと、ちょっとしたら、起きる...か、ら」

「言ってるそばから深い眠りに落ちようとしないで!ご飯、出来たから!」

布団を引き剥がすようにしてクロから奪い取れば、眠気まなこのクロが伸ばした手を寂しげに彷徨わせる。

「さむい。凍え死ぬ。凍え死ぬだろおいー」

「死なない。起きて。今日は収穫日って前に自分で言ってたじゃん。涼しいうちに終わらせちゃおうよ」

「んー....」

少し納得のいかない声を出しながらのっそりとソファから起き上がったクロが頭をかく。くぁ、と気の抜けた欠伸を一つしてから、ようやく洗面所に向かって歩き出した。


あれから少しだけこの家の生活は変わった。

クロに代わって、私がご飯を作るようになったこと。

クロがこの家に結界をかけることがなくなったこと。


それとあともうひとつ。

私があの人のことを考えることをやめたこと。

太郎でも、二郎でも三郎でもない。あの人の名前は結局いつまでたっても思い出せなくて、いやそりゃ絶対的な契約で無くしたんだし思い出せなくて当然なんだけど。でも考えれば考えるほどに、胸に空いた穴から吹く隙間風が苦しくて、真夜中に悪夢のせいではない涙をこぼしてしまうから。

そして、そんな私を見てクロがまた少しだけ眉を顰めて心配してくれるから、私はあの人のことは考えないことにしたのだ。


あの人のことを考えなければ、無理に城に戻るとか、クロエやステラのこととかも考えなくていいから。


「ん?どうした?」

「んーん、なんでもない」

少しだけ前髪から雫をぽたぽたと垂らすクロは、顔を洗ってようやく目が覚めたらしい。さぁ、ご飯にしよう。

慣れ始めたいつもの日常が、ようやく動きだす。




「ヒヨコ、そっちのやつは収穫すんな。3日後ぐらいに収穫するやつだから」

「はーい。じゃあ取れたやつ、そこらへんで洗ってくるから」

裏庭にあるこじんまりとした畑は2人で暮らすには十分な量で、私は未だに森から出て行ったことはない。けれどもクロが言うにはあの日見た花火はどうやら、近くの町で行われた祭のフィナーレを飾ったものらしく、この近くにはそれなりに大きな町があるらしい。

私が上空からあの黒い怪物に落っことされた時にはそんなもの見えなかったら、あそこからもう少し移動した場所にここはあるのかもしれない。


よっこいせ、と両手いっぱいの野菜を抱えあげながら近くの小さな川を目指す。洗濯だとか水汲みだとかはいつもそこで済ませていた。

家の庭を通るように大元の川からクロが引いている小川に籠ごと野菜をつける。通り抜ける水は泥を拭って幾分か茶色くなる。



茶色く、なるはずだったのだけど。

「あ、れ?」

赤い。水が赤い。まるで血のようだった。

そしてどこからともなく「グルルルルル」、と唸るような鳴き声。


まるでじゃない。

どうやらそれは。その赤い液体は本当にただの血のようだ。


他人事みたいに赤い液体を分析して、ゆっくりと視線を前に移した。

狼、というのが一番想像しやすいだろか。実際に本物の狼を見たことなんてないけど、きっとそれに近くてそれの倍、いや3倍ぐらいの大きさだと思う。銀色の毛は所々血で汚れているが、洗ったらそれはそれは綺麗に違いない。いや現実逃避している場合じゃないんだけど。


その口元からだらりと垂れた誰のものかもわからない腕。その腕の持ち主が無事でいることを祈るけれど、その狼のような魔獣の口元についた血の量を見るに無事な確率はいかほどか。


じーっと、睨むように警戒するように。その魔獣の血みたいに真っ赤な瞳が私を射抜いて離さない。体はピクリとも動かなくて、恐る恐る動かした眼球だけで、この家を守るための青い魔石が割れて地面に落ちているのを確認した。


「なんで、」

一部の結界が壊されてる。普通の魔獣には壊せないってクロは言ってた。なのに、一体何で。この魔獣は普通ではないのか。

疑問は口にするだけ無駄だ。魔獣が襲いかかってくる時間を増やすだけ。戦うための武器もない。目の前にあるのは泥のついた大根に似たこの世界の野菜だけ。


ゲームオーバー。魔法も、エリオスの力も。今の私には何もなくて。

久しぶりの追い詰められるような、張り詰めた空気の感覚に体が震えた。魔獣の後ろ足が地面を蹴って、咥えていた腕がぼとりと地面に落ちるのも気にせずに、私に飛びかかる。ひゅっと息を呑む。


世界がゆっくり、ゆっくりと動く。


大きく開いた口に並んだ牙を見て、きっとあれに噛まれたらひとたまりもないだろうな、なんて考えてみたりする。あれに噛み砕かれたら死ねるんじゃないか、って最近は考えもしなかった死ぬための方法なんてものを思いついたりもしたけど。



「い、やだ!!」



ほぼ反射で籠の中から手に取った白い根菜を縦に構えて、狼の大きく開いた口につっかえさせる。大根に似た割にゴボウのように縦に大きく育ってくれたことを、今心の底から感謝してる。

震える足は立ってくれないから体を回転させるようにしてすぐさまその場から飛びのけば。魔獣が私のいた場所でむしゃむしゃと大根を噛み砕いているとかだった。お味はいかがですか。お気に召さなかったのか赤い瞳はまた私を追いかけた。


もうこの手に大根もない、今度こそ終わった、と思いかけた時。

「ふっ飛べ」

私の顔のすぐ横から腕が伸びる。片方は私を抱き込むように後ろから押さえ込み、もう片方は魔法を放つためにしっかりと魔獣に向けられていた。

そしてその怒り混じりの詠唱通り放たれた魔法で魔獣は後ろに吹っ飛ぶ。キャイン。と痛みを訴えるような鳴き声がしたけれど、それからまたこちらへ立ち向かってくることはなかった。


「馬鹿がっ!!なんで俺をすぐ呼ばない!?」

「声が、うまく、出なかったの.....」

「くそ、迂闊だった。あいつはこの森の西側をまとめてる魔獣だ.....まさかあんな奴が来るなんて思ってなかったから....結界が少し弱すぎたんだな」

立てるか?と先ほどの怒っていた形相とは打って変わってクロは私の肩を支えるようにして家へ向かわせる。

「クロ、あのね、あの、魔獣が誰かの腕を咥えてた」

「腕?人間の?」

「そう、人間の。だから誰かがこの近くで倒れてるかもしれない」

「........服の、色は?」

「え?」

少し悩むようにしてクロがようやくつぶやいたのは、ちぎれた腕の服の色を問う言葉。それの何が重大なのか。わからないけれど真っ赤に染まったあの腕を思い出しながら、小さく答える。

「緑、だったかもしれない」

「そうか」

ただそれだけ。あとは特に何の返答もなく、私を家の中に入れるとクロは水を注いでくれた。


「クロ、あの、助けに「行く必要はない」

本当にもう興味をなくしてしまったかのように、柵を直してくるとだけクロは言うと部屋から出て行った。

残された部屋で一人、ようやく手の震えが治まったなぁと掌を見つめた。前は震えるような出来事がむしろ日常みたいなものだった気がする。


いつからこんなに、弱虫になってしまったのか。

さするように擦り合わせた掌は血の気が引いたみたいに冷たかった。





あれからクロは帰ってきて、まだ腕の持ち主を心配する私に言った。

「きっと、もうじき来る」

「え?腕を取りにってこと?」

それっておばけじゃないの?とむしろ不安を悪化させる私に、クロは些か面倒そうに告げた。

「腕の持ち主じゃないかもしれないけどな。お仲間さんがきっともうじき来るぞ」




そして、本当にその日の晩、夕食の後に家の扉が強く叩かれた。


どんどん、と。扉を誰かが外から叩く音。

「クロ、こんな夜中に誰だろ....」

「俺が出るから、お前はそこにいろ」

クロはソファで、私はベッドに腰掛けて本を読んでいた。穏やかな食後の時間の乱入者にクロは警戒の色をにじませたまま、自分だけ扉に向かう。扉から一番離れた位置にいる私に動かないようにときつく言いながら。


再度、扉が叩かれる。そして叩いた人物は名乗りを上げた。

「扉を開けろ!王城からの使者である!!」

「王城.....?」

王城って、この国の。自然と体が緊張で固くなった。この時間にそんな大層な使者が来るなんて誰が予想できるだろうか。私はベッドの上で読みかけの本を抱きしめたまま扉を見つめた。

案外あっさりと扉を開けたクロの体越しに見えるのは、緑の服。王城の兵士の服の色なのだろうか。

さして驚いた様子もないクロからは、昼間の一件からここに至るまでの道を予測していたようにも思われる。

「どーもどーもこりゃまた夜遅いご来訪で。一体どんなご用件でしょうか?」

「お前はこの魔の森に住む魔術師で間違いないか?」

「...まぁ、そう呼ばれることもある」

魔術師、どうりで魔法が使えるはずだ。自給自足の生活はしているものの、たまに町で買い物もしてくる。そのお金はどこから出ているのか、と気にしていたけれどどうやら無職ではなかったらしい。

それにクロがつく職業ならてっきり殺し屋とかだとも想像していたりしたんだけど。いや決してクロの目つきが暗に悪いと言っているわけではないよ?


「王城から優秀な魔術師に召集がかかっている。この森にはどうやらお前を含めて2人の魔術師がいるらしいな?」

「召集ついでにもう一人の居場所を吐けと?」

もう一人?誰のことだろうか。ここに住んでいるのは私とクロだけで、他に誰かがここを訪ねてきたこともない。

「おいそこのお前!お前が魔術師か?」

「えっ、わ、私?」

「あいつは違う。ただの俺の女だ」

使者の視線から私を隠すみたいにクロは体の位置をずらしてから言う。

「とりあえず召集の理由を聞いても?」

「....あぁ。近々隣国のカルメス国との間で戦争が起こる気配があってな。そのための、戦争のための魔術師の軍を作ることになった」

「へぇ....その優秀な軍隊に召集されるなんて、まぁ光栄なことですねぇ」

ちっともそう思ってなさそうな声色でクロは言う。カルメス国と、戦争?世界の情勢などわからない私だけれど、脳裏に親しくなった人たちがよぎる。



「まぁ、俺ももう一人の魔術師もそれには参加しませんけど」

「なっ、貴様何を言っている!これは王命だぞ!!」

「俺の魔法は....夢を見せるためにある。政治だ戦争だの、そんなつまらん理由のためには使わない」

なんの迷いも躊躇もなく言い切って見せたクロに使者は言葉を失った。

「もう一人の魔術師ってのも、まぁきっと俺の師匠のことなんでしょうけど、この召集には耳を貸さないと思いますよ」

「なぜだ!話を聞かずにそんな!そんなに報酬を釣り上げる魔術師なのか!?」


師匠なんてそんな存在がいたことにも驚きだ。そういえば初めて会った時そんなことを言っていたような気がしないこともないけれど。思えば私はクロのことは何も知らない。


ただ知っているのはクロは怒っている人間をさらに怒らせるのが、得意だということ。


「そんなに気になるなら師匠に聞いてみればいい。あぁ、家が見つからないんだっけ?」


少し小馬鹿にしたようなその物言いは使者を怒らせるには十分であった。

「貴様あああ!!」

「まぁまぁ怒りなさんなって。師匠の家は魔法で隠されてる。それもすごいやつだ。絶対に見つかりっこないのは確かだな」

それに、と言葉を続ける


「師匠は人のいうことを聞くのが大嫌いなんだ」


トドメとばかりに告げられた言葉に使者が激昂して、そしてなぜか。

私のベッドのすぐそばにあった窓が。



ぱりん、と音を立てて割れた。



「っ、離して!!!」

そこから乗り込んできた複数人の兵士に容赦なく体を押さえつけられ痛みが走った。気配に気づかないなんて、随分私も平和ボケしたものだ。

「ヒヨコ!!....お前ら、最初から話し合う気もなかったんだな」

「さぁ、大事な女を傷つけられたくなかったらさっさとついてこい」

「.......お前ら下衆だな」


クロが諦めたように短く息を吐いた。


「わかった。わかったからヒヨコから手を「言うことなんて聞かなくていい!!」


押さえつけられて苦しい肺に無理やり空気を送り込んで、叫んだ。

「私はその人の恋人でも、愛人でも、妻でもない!!殺したいなら殺しなさい!クロもそんな人のいうこと聞かなくていい!」

誰かの足かせになるのは、もう嫌だった。

「黙れ!!」

私を押さえつけていた兵士の拳が、頭をガツンと殴った。目の前で星が舞う。ぐらりと揺れた世界。痛覚。久しぶりの感覚。

「ヒヨコっ!お前!」

ぼやけた視界の中で、クロがこちらに来ようとして捕まる。強引に2人の兵士に押さえ付けられながら外へと連れ出される。ふと気づけばぽたり、と布団の上に赤い染みが一つ。頭に切り傷でもできたようだった。


鉄の匂い。血の匂い。

赤い。赤。あか。あか。あか。





あぁ、どこまでも逃げられない。

「第っ.....7界魔法.....!」


ぶわっ、と魔力が溢れだして、身体中の血が突如沸騰したみたいに巡りだす。ふっと口から息がこぼれた。それはある種の、自嘲というやつだった。


「私にっ、クロに!触るなああああああああああああ!!」


竜巻が小さな部屋の中を吹き荒れる。それはもう、すごい勢いだ。びゅんびゅんと風が暴れまわり、私を押さえつける兵士たちを剥ぎ取り宙に浮かせ、最後には部屋の床に叩きつける。

「なっ!魔術師、だと!?しかもこの力!なぜ王城に召集されていない!」

「黙れ!!」

ただ詠唱もなく言葉を叫ぶだけ。それだけで、私は兵士たちにかかる重力を倍にして叩きつけることができた。お前たちの声なんて、聞きたくない。

今は溢れる魔力の制御に意識を傾けるので精一杯だ。



ふと目を落としたそこにあるのは、クロがつけた魔法を使えなくする腕輪。それでも。その腕輪には一つだけ抜け道があった。



それが、あの人の、魔法だった。



できないわけ、なかった。

ただ、やらなかっただけだった。

本当はやろうと思えばいつでもできたんだ。

だって、あの人の魔法だ。あの懐かしい、あの人の魔法だよ。誰よりも側で見てた。何回も守られた。わからないわけがなかった。理屈とかそういうのは抜きにして、直感的にあぁこうするのかって体が動いた。


それでも今まで一度も第7界魔法を試さなかったのは、力があれば、力をさらにつければ、戦わなきゃいけない気がして怖かったからだ。

あの城に戻れ、と。もう休養はいらないのだと、急かされるような気がして。


「ヒヨリ」


風のおさまった室内で、初めてクロが正しく私の名前を呼んだ。

「泣くな」

自分の肩に私の頭を押し付けるようにして、クロは私を抱きしめた。暖かい。あぁ、本当のことを話すのはいつだって怖いんだ。


「私、ね。本当は化け物なの」

自分の声は、思っていたよりもずっと湿っていた。

「そんなことあるかよ」

「普通じゃない魔力量で、魔法だっていっぱい使えるの。人を、簡単に殺せるの」

今でさえ、千里ちゃんの加護で私の魔力は弱めてあるのに。数人の兵士を無力化したのに、全く疲れを覚えない。

「でもお前は殺してない」

確かに床に倒れた兵士たちは意識を失っているだけのようだ。


「ううん、でも。殺せる。私、殺せるの。指を一つ動かすだけでも十分。これはきっと、普通じゃない」

「それでも殺してないんだよ、お前は。意味もなく人間を殺めるようなやつじゃないって、一緒に暮らした俺がよく知ってる」

「でも、魔法を見られちゃった...もう、ここにはいられないの。私を、私を殺しにくる!あいつが!夢の中のあいつが私を、本当に殺しにくるの!」


もし近くにこの兵士たちの仲間がいたらどうしよう。私の話が巡りに巡ってカルメスまで届いたらどうしよう。嬉々としてその笑みを浮かべる雛ちゃんが見えた気がした。体が、震えた。あの黒い長い髪が脳裏にちらつく。


「私の大切なものを全部奪って、壊された。取り返さなきゃいけないのに、怖くて怖くて.....目を背けてたの」

魔法が使えない私はただの女の子になれて。クロが優しい家に囲ってくれて。全てを忘れられた。

「でも駄目だ。結局私は根っからの魔法使いで、化け物で、」


血を見たとき、確かに体がざわついた。昼間のあの一件でも、押し掛けてきた兵士達を見た今でも、あの雛ちゃんとの戦いが、フラッシュバックした。戦わなければ、殺されるのは自分なのだとはっきり自覚した。

「でも戦えば、私はたぶん、次こそ.......殺される」

本当に、死んじゃう。




「逃げよう」

「え?」

「ヒヨリを全力で隠す。俺が守る。戦わなくていい」

「む、無理だよそんなの」

「無理なんかじゃない。さっき言ったろ?師匠の家なら安全だ。匿ってもらおう。どうせここにはいられない」

城に報告がいけば、きっとヒヨリも召集される。とクロは告げた。私の目をしっかり見て話して、私に選択肢を与えてくれる。

甘くて優しい選択肢を選ばせてくれる。



「行くぞ」

差し出された手のひらを、私はただ握り返すだけでいい。





「なんで、クロはここまでしてくれるの」

倒れた兵士たちを踏み越えながら、クロがまとめた荷物を手に持ち私達は外に出た。

夜の風は冷たい。いつの間にか手にとっていたローブを頭からクロは私に掛けて笑った。


「下心ってやつだな。ある日俺は空から落っこちてきた生意気な女に一目惚れしたわけ。笑えるだろ?」

「....一目惚れした人に普通殺すとか言わないよ」

「見た目はタイプなのに中身は死んでたからなぁお前の目」

「....私、何もできない。魔法しか取り柄ないよ」

「いいよ。今のお前はすっごいタイプだから。まぁ返事は今じゃなくても。とりあえずこの家とはおさらばだな」


住み慣れた家を離れるのにもクロはちらりと一度見ただけ。大した感慨もなく私達は魔獣よけの柵を越え、夜の森へと踏み込んだ。

「大丈夫。俺がいる」

握られた掌だけが、ただひたすらに暖かい。




私とクロは、この日逃げ出すことを始めた。







どこまで逃げれるかなんて、たかが知れていたのに。




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