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魔法使いのお友達  作者: 雨夜 海
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贈り物と声


「なんでかなー・・・・・。」


ぼぅ、っと上の方に見える窓を見つめながら考えてみる。

弁解すら許されずに、体の自由を奪われて連れてこられたこの場所はどうやら牢屋らしい。

鉄色の鉄格子が、夜空に浮かぶ月らしきものに照らされて、鈍く光っていた。

最も、この世界の月は赤いらしくて、それがまた私に異世界に召還されたという現実を突きつけていた。


はぁ、と本日何度目かのため息を着いてから牢屋の隅っこにうずくまった。


「・・・・・今頃お誕生日会に行ってるはずだったのに。」


お祝い、してあげれなかったなー・・・約束してたのに。


『ヒヨ姉ちゃんっ約束だからね!』


キラキラとした笑顔をこっちに向けてくれた、孤児園の子供が頭の中に浮かんだ。まぁ、自分の今の状況はお誕生日会どころではない。むしろ処刑されるか否かの瀬戸際だ。


「・・・・寒い。」


毛布さえ渡してもらえなかったし。

上の窓から入ってくる隙間風はこんなに冷たいというのに。

ぶるる、と身を震わせながらも足を抱え込んで体温を逃がさないようにする。

何を考えても明るい気分になるものなんてなくて、ただ体の疲労感に任せて、私は眠りに落ちていった。





「・・・・・あ、れ?」


気づくと、私は元の世界の自分の学校の教室に立ちすくんでいた。


「私、戻ってきてる?これ、夢じゃないよね?」


定番の確認方法で、思いっきり自分の頬を引っ張ってみたけれど、

びにょん、と痛くない上にあり得ないほど伸びた頬を見て、夢なのかと少し落胆した。


「ヒヨ。」


急に呼ばれた名前に、反射的に振り返った。

窓際に、夕日の光を受けて髪の毛をキラキラと光らせてるトキが居た。


「トキ・・・・?」


トキが、居る。

あの届かなかった手を、今なら彼に届かせることができるだろう。

そのくらい近い位置にトキが居る。


「ほら、こっち来い。」


いつもながらの無表情で、トキはちょいちょいと私に手招きする。

なんで、夢にトキが出てきたんだ?

疑問に思うことは尽きないけど、大人しくトキの傍に行く。


「誕生日プレゼント、欲しがってただろ?」


あ、


ひとつの記憶が頭の中によみがえった。

これは、私が16歳の誕生日の時の夢だ。


思い出して懐かしさに浸っていると、照れたようにトキが私に手を差し出した。


「ほら、手。」


何コレ。指輪でもくれんの?告白シーンなの?とか当時の私は妄想力を発揮しちゃって困ったけど、トキのプレゼントはそんなものじゃなかった。


私の手よりもずっと大きな手で包み込むと、トキはゆっくりと呪文らしきものを唱え始めた。


「――――――――聞こえる?」


暫くしてから少し心配そうに私の顔を覗き込んだトキ。

何の魔法を掛けられたのか、最初は少し頭がぼーっとしたけど、徐々にその感覚に慣れていく。


「・・・・・トキ、これ、」


自分の耳に、思わず手を当ててしまった。


「覚えて、くれてたの?」


「・・・・あんだけ嬉しそうに話されたらな。」


上手くいったことにほっとしたのか、トキは私から目を逸らして息をついた。


「あーあ、そろそろ家に帰らないとなー」

「今日はトンビの野郎が俺等の縄張りに来やがってさ。」

「もちろん、追い返してやったんだろ?」

「あったりまえだ。」


教室の窓から見える木に止まったカラスを、私は凝視した。


『いいなー、動物の声が聞こえたら、毎日がきっと楽しいんだろうなー』


ファンタジーな小説の後に漏らした私の言葉を、トキは聞いてくれてた。




「トキ、ありがとね。」


自然に出てきた言葉を口にすると、やっぱりトキは照れたような顔をして目を合わせてはくれなかった。


今まで貰ったどのプレゼントよりも、ずっとずっと嬉しかった。


魔法を掛けてくれたことよりも、

トキが私の小さな言葉を聞いてくれてたことが、何よりも嬉しかったんだ。


にへら、と緩みきった顔で笑っていた私の夢の世界に、



――――突然亀裂が入った。



「え?」



足元が崩れて、暗闇に逆さまに落ちていく。

嫌な浮遊感が全身を襲った後、私の体にまるでストン、と落ちたみたいに意識が浮上した。


目が覚めたそこは眠る前と同じように、何もない暗い牢屋。


「・・・・・・だ、れ?」






――タスケテ――


けれども聞こえたその声に、私は一気に意識が覚醒するのを感じた。

どこからともなく聞こえてきたその声の主を確認する暇もなく、立ち上がろうとした私の体は地面に伏せる。


「な、にこれ・・・?」


力が入らない。

いつもクリアに聞こえていた人ではないものの声に、ノイズが混じる。


「・・・・く、るし。」


やがて訪れた息苦しさと、じわじわと来る頭痛に私は顔をしかめた。

なにこれ、なにこれ、なにこれ。

さっきまでの幸せな気持ちなんてどこかに吹っ飛ばされた。


痛い、痛い、痛い、痛い。


どんどん酷くなっていく頭痛に頭を抱え込むようにして、牢屋の床に蹲る。


「あ、あぁ、ああああぁっぁぁっ」


言葉にならない声がひたすら口から漏れて、天井の高いここに響く。


―イタイ、イタイ、イタイ―

「痛い!痛い!痛い!!」

―誰か、タスケテ―

「誰かったす、けて!!」


頭の中に響く言葉は、最早自分の本心なのか別の生き物の言葉なのかは分からない。

けれども、尋常じゃない声に異変を感じたのか、暫くしてから牢屋の番をしていた兵士が飛び込んできた。


「お、おいっ大丈夫か!?」


牢屋の鍵を開けて抱き起こされたけど、返答できるほどの余裕は私にはない。


「コエ、声、が、」


焦点の定まってないであろう私の目を見て、2人目の兵士が医者を呼びに外へ駆けていくのが分かった。



――殺サレル――



そんな言葉が頭の中で響いた瞬間、さらに頭痛は激しさを増した。



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