表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/75

第八話 虚空

次の日。


疲れてしまっていたのか、起きる時間はもう正午に近いような時間だった。



「…………ここは、家?」



どうやら、私たちの家のなからしい。


いったいあのあと、私はどうなったのだろう。


おじさんはどうなったのだろう。


なんだか頭がポワポワとしている。


夢を見たあとのような感覚。


今までの出来事は全部夢でしたー☆


なんて言われても、普通に信じてしまいそうだ。


それくらい、頭が重い。



「おはよ……」



「おっ、ココ。おはよう」



さっそくおじさんに出会ったのだが、私は驚きを通り越していた。


私が記憶に残るおじさんの最後の姿は、満身創痍で、両手が緑に変色した姿だ。


それなのに、いま、目の前にいるおじさんは、怪我なんて一切見られない、綺麗な肌だった。


夢でも見ているのだろうか。


それとも、今までのことが全て夢だったんだろうか?



「あの……おじさ―――――」



「ココ、悪いけど、俺はいま忙しくてよ、後にしてくれねぇか?」



「…………………」



避けられた?



おじさんが、なんだか私を避けているように見える。


だって、今までこんな反応を示したことなんてなかったのだ。



「…………ごめん。おじさん、ごめんなさい」



なんだか胸が苦しくなった私は、走り出していた―――。






「…………ぐすん」



この涙は、いったい何の涙なのだろう。


ただおじさんが、忙しいからあっちに行っていてほしいと言っただけだろう。


仕方がないことだ。


おじさんだって仕事があるんだから―――。


どんなに自分に言い聞かせても、私の心の中に、それを全否定させる何かが根付いている。


辛い。


苦しい。


胸がイタい。


おじさんが私を避けている。


その気持ちがありありと伝わってきた。



「……私の、何がいけなかったのかな……」



私が今までしたことのなかで、何か間違いなんてあったのかな。


『あれ』が夢じゃなかったのなら、盗賊に襲われたことかな。


おじさんには、酷い迷惑をかけてしまった。


それとも………、私が寝ていたあとの、あの戦いで、私が「家族」って言ったりしたことかな。


それとも、それとも。


いろんな負のイメージが浮かんできてしまう。


おじさんが避けているのだ、私のせいで。


何が悪かったのだろう。


何がいけなかったのだろう。


思い出せることを、フルに活用して思い出そうとしていた。


思い出したら、謝りたい。


謝って、おじさんに許してもらいたい。


おじさんは、優しいから、きっと、きっと、許してくれる。


そう願った―――。






「ココ、悪いけど、俺はいま忙しくてよ、後にしてくれねぇか?」



俺は、親父の機嫌が悪いのをずっと気にして、距離をとっていた。


実は親父の機嫌が悪いときは、本当に怖い。


そのため、俺は親父の様子を遠くから監視することにしたのだ。


親父の機嫌が悪くなったのは、昨日の夜からだ。


今日は遅いから、もう寝ようと言い出したあたりから、親父はずっと虚空に睨み付けていた。



「…………おや――――」



「いいから、寝ろ」



と、問答無用で明かりを消され、寝ることしか出来なかった。


そして今日も、午前中はずっと、虚空を睨みながらの作業だった。


ただ時々、何か考えるように顔をしかめると、すぐにまた虚空を睨みだす。


いったいどうしたのだろう、と思っていた矢先だった。


ココがやって来た。


ココは何か深刻な表情で、親父に何か言おうとしていた。


すると、



「ココ、悪いけど、俺はいま忙しくてよ、後にしてくれねぇか?」



と、答えられた。


ココはその瞬間、いっきに表情が暗くなった。


信じられない、といった表情。


するとそのあと、



「…………ごめん。おじさん、ごめんなさい」



と泣きながら、どこか遠くへ行ってしまった。



俺は追いかけようか、とも思った。


しかし、親父がココを泣かせた、そのことに腹が立った。


ココは親父を信頼し、尊敬しているはずだろうに。


なのになぜ、あんな言われ方をしなくちゃならないんだ。


俺は初めて、親父に腹が立った。



「…………親父!」



「―――――!来るなっ!!」



親父は俺がすぐそばまで来ているのを見ると、慌てて叫んだ。


さぁ、いったいどういうことなのか?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ