第五十八話 政略のカード
新しい異世界ものが書きたくなったので、先にこっちの小説を完結させます。
ルイの斬撃が側近連中に襲いかかる。
側近たちはその剣を手持ちの武器で受け止める。
甲高い金属音が鳴り響き、周囲には魔法を発動させる人たちがいる。
「はぁっ!」
あらゆる魔法技が飛び交うが、
「サウザント・シールド」
大魔法使いが唱えた呪文に弾き飛ばされる。
「この魔法障壁は、そんなものでは崩れませんよ?」
「くっ……」
「余所見などしている余裕はないぞっ!!!」
すると、それを待っていたように大剣が襲いかかる。
全長が、自身のそれとほぼ同じの剣を、いとも簡単に操り攻撃する。
それも、その重さであれば押し潰しや破壊もできるであろうに、彼はそれを斬ることに使う。
「……はぁぁぁっ!!!」
天魔法使いが空を高く仰ぐ。
上級魔法を放つための溜めである。
「天の裁きにて散れ!!魔王の手下ども!!」
「………っ!!」
さすがのシールドも、上級魔法以上の攻撃に耐えるかはわからない。
魔法を斬撃でかわせるはずもない。
「……ムーンボール!!」
「かはっ!」
光の弾丸が、彼の腕へ飛ぶ。
それはルイの光魔法によるものだった。
「……光魔法にそんな小細工は通じないぞ」
あれからルイは、隠れて修行をし、魔法力を高めていた。
天魔法本来の使い手ならばともかく、復刻版の弱い魔法ならば破壊できるまでになっていた。
「……くそっ!!」
互いに一進一退。
勢力が均衡状態にあるようだった。
「……一国の王の側近に、これほどまでの力があるとは……」
「俺たちは、ただの側近なんかじゃねぇよ」
「俺たちは全員、『龍の加護』を受けてるんだよ」
龍の加護―――古の龍の力の一つで、龍の鱗を、魔法によって身体に取り込むというものだ。
龍の鱗には特殊な魔法がかけられており、その魔法だけでも、身体を強化させる力を持つ。
だが、それが龍の鱗と共にとなればわけが違う。
龍の体は、多少の攻撃では傷ひとつつけられない。
その体の一部を、人間の身体に宿したとき、その人間はまさしく、龍のごとき力を得ることができるのだ。
それがまさしく、龍の加護だ。
「……ますます気にくわない連中だ。龍の加護など、成功率は10%もない欠陥魔法のはずだ。失敗すれば死に至るか、力の制御が効かない化け物になるはずだが……。お前らは自分達で決めてこの魔法を使ったのか?」
「いや。女王の命令だ」
大剣使いは眉間にシワを寄せる。
つまり、10人に1人しか成功せず、他は死んでしまうような魔法を、彼女は他人に強制させたということになるからだ。
「……やり方があまりにも残酷だと思うが?」
「俺は選ばれているのさ。神にも、女王にも。俺の技はすべて、神に選ばれた者の行いなんだよ!」
「ふざけるなっ!」
怒ったのはルイだった。
ルイの剣に光が宿り、鋭い斬撃が襲う。
「……!!!」
ルイですらも知らない、新技だった。
自分の怒りが、きっと剣に宿ったのだ。
ルイはそう感じた。
剣の力がみるみる上がる。
「……はぁぁっ!」
敵を斬りつけようと剣を向ける。
それを受け止めようとしたが、
「無駄だぁぁぁ!!」
剣とぶつかった瞬間、音を立てて武器が破壊されていく。
まるで叩き割ったかのように、粉々に砕け散った。
「うがぁぁぁ、ぁぁっ」
斬りつけられたのは、天魔法使い。
光に唯一対抗手段を持つはずの男が、最初に倒されてしまった。
「……くそっ!」
「無駄だ!」
剣にかけられた魔法は、大きな光の力であり、他の魔法は寄せ付けない。
まるで腕のように剣に込められた魔法が、男へと向かっていく。
「ぐ、っは!」
「らぁぁぁ!!」
ザシュッ!!
大剣使いによって、男は真っ二つに切り裂かれる。
「……くそっ。こんなところで、終わらせてたまるかよっ!」
「お前たちの野望のために、世界を終わらせたりはしない!」
最後のあがきとばかりに、大技を繰り出し始める。
しかしそれも、ことごとく消滅させられた上に、とどめを刺された。
「残るは。女王だけだな」
「………くっ」
女王も、まさか全滅するなんてことを予想などしていなかっただろう。
いつもの凛々しく自信にあふれた表情は、焦りのものに変わっている。
「まさかここまでのものとは思いませんでした。さすが勇者の血筋とほめるべきか、優秀なメンバーだとほめるべきか」
「ほめることよりも、命乞いでもしたらどうなんだ!?女王よ」
「魔族に諭されるほど、落ちぶれたつもりはありません。それに、王などというものは、代わりを常に残しておくものです。私が死んでも、私の代わりに別の王が即位すれば済む話。レオードン王国が滅びることはありえません」
「レオードン王国のためになら、命を捨ててもいいということか。見上げた精神だが、今回はその使い方を誤っているのではないか?」
「そうでしょうか?あなた方のほうとしても、龍がいなくなったことであの大陸を完全に魔王の覇権にすることができるのですよ?」
確かに、黒龍がいたことにより、全部の土地を魔王のものにすることが、事実上不可能だったのは確か。
だが、
「女王よ。お前にとって『命』とはなんなんだ?」
「………そうですね。私の命の使い方的に言えば、『政略のカード』といったところでしょうか」
「そうか」
それだけいうと、大剣使いは剣をふるった。
女王の首は消し飛び、その頭が地面に転がったのだった―――――
女王撃破完了です




