第五十六話 帰国
およそ2ヶ月ぶり……読者様、大変おまたせいたしました。
―――――グルギャアアアアアア!!!
魔王、勇者と、黒龍の激闘を見つめる、とある女王がいた。
「……どういうことなんでしょう?彼女、ココではありませんか……」
魔王を倒すべく、異世界から召喚し、現勇者族の養子にしたのだ。
それなのに、勇者はどうして黒龍と戦っているのか…?
いやそれより。
彼女の背中からはえている翼……。
人間である彼女の体に、どうして翼などはえているのか……。
「…………どういうことでしょうねぇ」
翼を持つ生き物は、この世界にいくらでもいる。
鳥やドラゴン、魔獣、そして……魔族。
「あの翼の形……。魔族に似ていなくもないですね……」
魔族の翼は、蝙蝠がつけるそれに非常によく似た、まるで膜のようなものだ。
それがなぜか、ココの背中についている。
「……融合したということでしょうか?」
古代の魔方陣を使った魔法に、魂を合体させるという魔法があったと思う。
彼女は魔族かなにかと合体してしまったのか。
女王にはそう感じられた。
「しかし……。どちらにしても、黒龍を操るのに、今ほどのチャンスはありません。すぐに準備させませんと……」
女王の暗躍は、ついにクライマックスを迎える。
「ぐっ……!!」
黒龍と勇者の、ジリ貧な戦いは、急にクライマックスを迎えた。
「……魔方陣!?」
それも、見たことがない、魔王の記憶ですら存在しない、なぞの魔方陣だった。
魔方陣であれど、光と闇なら消え去るはず。
消し飛ばしてやる。
「……ムーンダークネスっ!!!」
魔力も少なくなってきたが、大魔法だろうと思う、この魔法を放つ。
しかし、
「…………消えて、ない……!?」
魔方陣は消えていなかった。
つまりこの魔法は、ここではなく、どこか別の場所から使われている魔法。
「くっ!」
効果がわからない魔法を間近で受けるバカはいない。
私はすぐに後退した。
魔方陣は光り、効果を発揮した。
―――ギュオォォ!―――――
黒龍が消えた。
空魔法に近い、空間を制御する魔法だということか……。
「どこに行ったっ!」
空高く飛び上がり、遠くまで見渡すが、魔力を感じないし、そもそも姿が見えない。
「くそっ。人間界にでも行きやがったかっ!」
ここ一体を探しても見当たらないということは、やはり人間界へ行った可能性を考えねばならない。
「よしっ。人間界へ……、いや、ついでにレオードン王国に行く」
一瞬で別のところに向かう、瞬間移動。
これをできるのは、魔王の「使い魔」だけだ。
使い魔がルイと喋っていたのを、見ていた私は、急いで使い魔を呼びつける。
「今の魔法で、黒龍が人間界に召喚された可能性が高い。私たちも、人間界に行くぞっ!」
「はい。魔王様」
「ココっ。俺も行く。女王に話をつけに行く」
ルイが本気だということが、犇々と伝わってくる。
「わかった。くれぐれも無茶はするな。私の幸せは、お前らと一緒に生きること、だということを忘れるな」
「……あぁ」
空魔法による転移で、私たちはレオードン王都へと移動した。
「……これはどういうことですか?ルイ……」
「それはこっちの台詞だ。女王……」
怒りを露にするルイ。
今にも剣を抜いて飛びかかって行きそうだった。
「女王よ。貴様はいったい、どういう意図で黒龍と手を組んだ…?魔族を滅ぼすつもりか?」
魔王の方が、言葉を発する。
魔族の危険とあれば、魔王が口を出すのは当然だ。
「それもありますね。魔族は人間にとって大敵です。竜を使ってそれを蹴散らせるのなら、それに越したことはありませんね……」
しかし、女王の思惑は、それとは違うようだ。
「異世界人であり魔王である貴女に、我々人間界の勢力図を言ってもわからないとは思いますが……。我々は、人間界を統一しようと思っているのですよ。そのために、黒龍を使ったのです」
人間界を統一?
「そう。我らレオードン王国と同じ、いや、こういうのは癪ですが、むしろ強力な隣国、ボルケイロ帝国。やつを一網打尽にするには、この方法しかないのです」
「黒龍を使う、という言い方も気にくわないが……、それ以前に、貴様、いろんな人間が、その攻撃に犠牲となることをわかっていてやっているのか?」
とても、一国の王が行う行為には思えなかった。
しかし、彼女が言った言葉は。
「ふふっ、人間の敵である魔族が、人間の犠牲を気にするなんて。滑稽なことですね。でも、そんなものはどうでもいいのです。私たちの望みが叶えば!」
わかったことは二つ。
この女を止めるのは必須であること。
そして……、黒龍の牙はボルケイロに向かうこと。




