第五十五話 ルイと使い魔
お久しぶりです。今回はいつもに比べたら少し長いと思います。
side ルイ
「……なんだよ。この戦い……」
俺は、天空で繰り広げられる戦いに、息をするのすら忘れるほど見入っていた……。
人と竜が一対一で戦っていることもその原因だろうが、一番の原因は、ココが黒龍と対等の戦いをしていることだった。
「……きっと、魔王と何かしたんだろうけど……」
結局俺は、黒龍に対して何もすることが出来なかった。
これでは本当に、魔王の人質だったのかも知れない。
そう思うほど、俺は何も役に立たなかった。
目の前でココがあれほどまで頑張っているのに……。
「……くそ……っ」
俺は、ただただ見守るだけになってしまうのか……。
ものすごく情けない気持ちでいっぱいだった……。
だが、そんなときだった……。
時間は少し前に遡る。
「……これは、いったい……!?」
生体反応がない。
水晶に写されるべきはずのあのひとの生体反応が、ぷっつりと消えていた。
「……魔王、様…?」
まさかとは思うが。
魔王様がやられたとでも言うのだろうか……。
「……どうした?シェルス」
「バーグル!大変なんだ!!」
やってきたのは四天王の一人、闇剣士バーグルだった。
闇剣士という異名は、背中に背負う、漆黒の大剣のおかげだ。
「…魔王様の生体反応が、消えているんだ」
「なにっ…?魔王様のがか!?」
バーグルはとてつもなく驚いた。
四天王にとって、魔王はものすごく尊敬すべき存在で、彼らにとって、魔王様は自らの全てでもある。
「……黒龍とやらがそれほどにまで強かったということなのか!?」
「わかんないよ。魔王様が負けるなんて、聞いたこともないから」
そうだ。
わかるわけない。
想像したくない。
「……とにかく一度、僕は確かめて来るよ。もしもなにかあったら、バーグルを召喚するから、よろしくね」
「……突然召喚するのだけはやめてくれよ」
バーグルはそれだけを言うと、また元の場所へと戻っていった。
僕は黒龍の泉へと、ワープした。
「…………!!?」
「…………!??」
突然目の前に現れた。
魔族が……。
それも、非常によく知っている人物が……。
「つ、使い魔!?」
「……ルイ!?」
そこにいたのは、俺を魔王城へテレポートさせた張本人。
使い魔だった。
「……魔王様は?魔王様はどうした!?」
使い魔は恐ろしいほど慌てた様子で、俺に捲し立てた。
こいつの性格的に、こんなに感情的になるとは思わなかったのだが……。
「…………魔王なら、あそこだ……」
「まっ、魔王様ぁ!!!!?」
しかし、残念ながらそこにあるのは、変わり果てた魔王しかいなかった。
肉塊と成り果てた魔王の遺体が、そこに転がっていた……。
「…な、なんという、こと…っ!魔王様が、負けてしまわれるなんて……っ」
信じられない、とばかりに、魔王の亡骸を抱える……。
「…………っ、黒龍……っっ!!」
次第にそれは、黒龍への怒りに変わっていた。
「……落ち着け、使い魔!」
「落ち着いていられるかっ!魔王様が!魔王様が!!」
「……上を見ろ」
俺が指差した先……。
そこにすでに、体が変化し、まるで魔族のようになったココがいた―――――。
side ココ
「……でやぁっ!」
「ギャオォォォォォアァァァァァ!!!!!」
私の体は、さらに強靭になっていた。
背中には翼が生え、尻尾までついている。
「ギャグァァァァァァァァァァ!!!!!」
「……ぐっ……!」
黒龍の尾が、私に向かって振り下ろされた。
体で受け止め、お返しに魔力を込めた拳を打ち付ける。
「……グルァァァッ!!!」
お返しとばかりに、再び攻撃をしかける黒龍……。
この連続攻撃を、何度も何度も行ってきた。
「……。大したダメージにすら、なってないみたい……」
痛みを感じていないのか、感じる余裕がないのか、黒龍の力は衰えを見せない。
「マズい……。このままじゃ、ジリ貧で負けちゃう……」
互いの力が拮抗した場合、最終的な差となるのは体力だ。
先に体力を消化しきった方の敗けだ。
しかし、疲れを感じない黒龍は常に完全な力を出せるのに対して、体力が減りつつある私が、本気で攻撃できるわけがない……。
「…………っっ!!!はぁぁっ!!」
さらに突っ込んだ攻撃を繰り返す黒龍。
魔王が全属性の魔方陣を持っていたことで、私も全属性を使う。
炎を撒き散らす黒龍に、闇で飲み込み、私の炎を混ぜて解き放つ。
黒龍が放ったものの何倍も強力なそれを、私はうち放った。
しかし、黒龍がやられる気配かこれっぽっちもなかった。
「………ぐっ」
なんとか私が勝つ方法を探さなくては。
私は非常に焦りを感じていた。




