第七話 ココ爆発
泣き疲れて眠ってしまった。
まだ寝たりないのか、重たい瞼をゆっくりと開けようとする。
「―――っ!!?」
そこには、見るも無惨な光景が広がっていた。
地面は煙を上げ、灰が舞っている。
その周囲には草原があり、目の前の空間だけ、大地が見えている。
そしてそこには二人の男性が立っていた。
片側は短刀を握っており、眼鏡をかけた男性。
剣は紫のような光を発していて、何か液体も滴っている。
対するは、リムおじさん、だったのだが……。
「………はぁ…はぁ……はぁ…はぁ……」
と、荒い息をしている。
肩は大きく動いているが、足はフラフラで、今にも倒れそうな状態だった。
両腕に眼鏡の男の短剣から出ていたのと同じような紫の液体が流れていた。
違うところは、その液体が流れたあとの皮膚の色が緑っぽくなり、煙が上がっているところだ。
「……………はぁ…はぁ…………」
「どうでしょうか?諦める気になりましたか?」
とても丁寧な口調で喋る眼鏡の男。
その口には、余裕が見てとれる。
「……何度も………言わすな……。俺は、誰にも、指図されねぇ……。絶対にだ!」
リムおじさんはナイフを持ち、切りかかる。
鋭い攻撃であったが、それを楽々とかわした男は、リムおじさんの太ももを斬りつけた。
「あがあぁぁぁぁっ!!」
「痛いでしょう?降参しましたら、解毒いたしますよ?」
どんな状況かは理解しがたいが、リムおじさんが満身創痍であるのは分かる。
そして、解毒と言っているところから……まさか……。
「……私の毒魔法の威力を舐めない方がいいですよ?私の魔法は、確実に人を死に追いやります……」
毒魔法?
魔法っていうのが何かは知らないが、人を死に追いやる毒というのは危険だ。
おじさんの腕が緑に変色しているのも、恐らくその影響のようだ。
「………おじさんっ」
思わず私は叫んでいた。
おじさんが危険な目にあっているのに、私に出来ることは何もないのが情けない。
「………こ、ココ…っ」
「ようやく目が覚めましたか。あなたにも聞きたいことがあるんですよ」
そういって、男は私の方に顔を向けた。
「あなたはリムのことを『おじさん』と呼んでいるようですが…、どういった関係ですか?」
短剣の矛先が私に向けられる。
丸腰の私に出来ることは何もない。
私はおじさんに視線を向ける。
おじさんは、私に、何も言うなと強く表情に表している。
「……わ、私、は…」
「正直に言った方がいいでしよ?彼のように鍛えてあれば、私の毒にも若干の耐性はありますが、あなたのように何も耐性がなければ、一瞬にして死にますよ?」
「…………………」
言えと脅す男。
言うなと願うリムおじさん。
言わなければ、私は本当に殺されてしまうかも知れない。
でも、おじさんは何も言うなって言ってる。
殺されるのは嫌だけど、おじさんの迷惑をかけたくない。
「………あんたなんかには、関係ないっ!」
私は強く言った。
盗賊のときみたいに、怖くて震えそうだけど、なんとか言い切った。
「そうですか。なら、お望み通りに、リムを殺してあげましょうっ!」
「―――――っ!!」
殺されるっ!
私を守ってくれたおじさんが、私のせいで殺される…。
何で殺されなきゃいけないんだろう。
おじさんが何をしたの。
私が何をしたの。
「……やめて…っ!」
「どうかしました?言う気になりました?」
「おじさんに、近づかないで……っ!私の、私の、大切な………『家族』に…っ!」
もう私には、恐怖とかよりも、怒りの感情の方が強かった。
恐怖、怒りの感情が混じり合い、私の心から溢れていく。
頭が爆発しそうなくらいの激情が、ぐるぐると渦巻いていく。
私の激情、どす黒い心は、何故か白へと変わっていった。
おじさんに、触れてほしくない。
何もしてほしくない。
怒りに任せて、その白を極力まで高めていった。
「……!なんだ、この力はっ!まさかぁぁっ!」
「…………ココ?」
男の顔が一気に驚愕に変わっていく。
ざまぁみやがれ!
そんな激しい心が、私を揺さぶっていく。
「白い力……!まさか、『光魔法』!?」
「うるさいっ!おじさんをいじめた!その罪を償えっ!」
もう私は、白い力のパワーに飲み込まれていた。
「ぐぐっ!こんな小娘に、私が負けてたまるかぁぁぁぁぁぁっ!!」
「…………………」
私は右手を前に出す。
手のひらを突きだし、体から溢れる、白い力を手に集めていく。
「……………おじさんをいじめた、天罰だぁぁぁぁぁぁ!!」
白い力が、エネルギーへと変換され、おぞましい力として放たれた。
ブオッ!
波動のようなパワーとなり、飲み込んでいき、爆発していった。
「うがあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
そして、意識が途切れた。
ようやく主人公の真骨頂発動!というか、勇者が未だに旅に出ない……orz