第五十三話 人と魔族
久しぶりです。見ていてくれた方は本当におまかせしました。
『〈儂を甘く見すぎていたようだな。儂の魔力は、もはや無限大といっても過言ではない。貴様なぞに負けることなど、ありえないのだ〉』
「ぐ……ぅ」
『〈儂に歯向かったことを、悔やんでおけ。では、とどめだ〉』
黒龍の口許に、巨大なエネルギーがたまっていく。
きっとこれは、最後の一撃になるのだろう。
ルイはゆっくりと目を閉じた。
敗北を認めたのだ。
「だぁっ!!」
『〈っ!!!!〉』
しかし、ルイに攻撃が当たることにはならなかった。
『〈……貴様、なぜ生きている?魔王が封じ込めたはずなのだが?〉』
「……ルイから離れなさいっ!!」
私は、黒龍を言葉を無視した。
『〈……ほう?お前、どんな魔法を使ったのかと思えば、魂融合の魔法を使ったのか……。くくくっ、愚かなことだ〉』
「愚か?」
『〈そう、愚かだ。お前は魔王と合体し、その魔力や力をあげることができた。しかし……。その代わり、お前はもはや、人間に戻ることはできない。人間でもない、魔族でもない。そんな忌まわしい存在になり下がったお前は、とてつもない愚か者だ〉』
「…そんなの、どうだっていいっ!!私が忌まわしくたって何だってっ!あんたを好き放題に暴れまわらせる方が危険だもの」
『〈減らず口を叩く小娘だ〉』
黒龍は空を飛び上がる。
すると、
『〈一気に焼き尽くしてくれるっ!!〉』
口からはとんでもなく大きな炎が溢れ出していた。
恐らく、最大級のパワーであることは間違いない。
『〈くたばれっ!!〉』
炎は私に向かって、強力な息吹になって襲いかかる。
だが、それ自体も、あまり危険だとは思わなかった。
むしろ、私は……。
「暗黒世界!!!」
手から闇魔法、つまり魔王の魔法を繰り出した。
二人の魂が混じった状態のため、魔王の魔法も使える、と、なぜか直感でわかっていた。
ギュルルルルルゥゥオオオオオオ!!!!!
と、激しいぶつかり合いが起こる。
しかし、暗黒世界が、その力を無尽蔵に吸収していくのがわかった、
『《……忌々しい存在め。ブレス程度では、やはり消えてはくれぬか……っ》』
「…………」
吸収した暗黒世界は、ボールのような塊になって私に帰ってきた。
これが、闇魔法の特性、「吸収」らしい。
光魔法と闇魔法は、最上級魔法とされる理由は、その能力があまりにも強すぎるからだ。
光魔法は、すべての魔法を撥ね飛ばし、そのまま力でねじ伏せる。
しかし闇魔法は、他の魔法エネルギーを吸収し、そのエネルギーを自らの力に変えてしまう。
闇魔法と光魔法は、互いに力の使い方が違う。
『《……やはり、魔王の力は偉大であるな。だが……、「魔王に負けた勇者」と「黒龍に負けた魔王」などに、儂は負けるつもりなどない》』
「それは、勇者と魔王の単体での話でしょ?確かに、私自身、魔王に負けたし、その魔王だって、あなたに負けた。でも、二人で力を合わせれば、それ以上の力になるわっ!!」
『《寝言は寝てほざけっ!!》』
黒龍は、再び、空中へと飛び上がる。
―――――二人で力を合わせれば、それ以上の力になる、か。
魔王の魂は、静かに、物思いに更けた。
勇者と魂を融合したとはいえ、どこかでやはり、区別されているのだろう。
魔王の個性とも言える魂は、まだわずかに、自らの姿を残していた。
―――――本来、敵対関係にあったものが、こうして協力することになろうとはな
これは、魔王もやはり、賭けだったのだ。
ルイとの共謀でさえ、本来ならありえないことだ。
だが……。
―――――やはり、世界とはおもしろいものだな。これは神が与えた、運命なのかもな
ふと、そんな思いが口に出る。
―――――ココ。汝と余、確かに紙一重の違いなのかも知れないな。お前の顔つき……。余と似た、なにかがある
魔王の魂が静かに、二人の戦いを見守っていた。
自分にできないことでも、二人でなら、できると信じて……。




