第四十九話 勇者vs魔王
どうしてこんなところにルイがいるのだ。
ルイは私と離れて、レオードン王国の外れで暮らしているはずなのに。
「………どうして、こんなところに?」
「……………それは」
「余が連れてきた。お前の家族なのだろう?なら、こいつは餌に使える」
魔王がにやり、と笑みを浮かべる。
口を開け、何かを言おうしていたルイだが、魔王の言っている言葉が当たりだったのか、口を塞ぐ。
「この、非道っ!」
「いくらでも言え。勇者などという殺し屋を悠々と待っていられるほど、こちらにも余裕などないんだよ」
魔王は相変わらず笑みを絶やさずに言う。
顔全体は、フードをかぶっているから見えないが、口はにやついているため、笑っていることなど一目瞭然だ。
「……許さないっ!私の命だけならともかく、ルイは関係ないでしょっ!!」
「…………なら言わせてもらおうか。お前ら勇者の使命は、元々は魔王を殺すことだろう。なら、余の命だけならともかく、なぜ部下の命まで取る必要がある?」
魔王の部下、と聞いて、江戸で戦った、魔族を思い出した。
彼女はたしか、四天王だった。
「…………あの人は、町を襲ってきたんだから、倒して当然じゃないっ!あなたがやってることは、ただの人質よ!?」
「……まぁいいではないか。貴様が勝てば、余は死に、こいつは助かるのだぞ?負ければ、お前もこいつも、どうなるかはわからんが……」
「………………っっ」
卑怯だと言おうとしたが、こっちから言っても、相手は何か言い返して来るに決まっている。
なら、相手のお望み通り、倒すことが先決だと思うことにした……。
「…………わかった。だったら勝負をはじめましょう」
「……あぁ。その方が賢明だな。お前の実力、見せてみろ」
魔王は武器も取らず、身構えた。
身構えるといっても、少し腕を構える程度。
なめてかかられている……。
「いくぞぉっ!」
剣を振りかざし、まっすぐ振り下ろす。
ギィンっ!!!
魔王は爪で受け止めていた。
この爪は、金属よりも硬いということか。
「はぁっ!!」
剣で二三回攻撃を繰り返す。
しかしそのたびに魔王が間合いを入れ、攻撃が入らない。
「………っ」
「こんなものか?余の体にすら触れられんとは……」
バカにしたように笑う。
だが、魔法を使えば……。
「ムーンライトドラグーン!!」
竜を模した光魔法が飛び出す。
これなら大ダメージ間違いなしだ。
だが……。
「ほう。たしかに強い魔力だな……。だが」
魔王は闇魔法らしき、黒いエネルギー塊を作り出す。
だが、どう考えてもその大きさは、ビー玉くらいしかなかった。
「それ」
魔王がその小玉をなげる。
すると……。
ギュギュギュギュ!
ズガァァァァァ!!
いっきに肥大化し、私の魔法とぶつかった。
巨大なエネルギーと化した闇魔法に押され、結果消滅し、闇魔法の方が、私に向かってきた。
「ぐぅっ!?」
攻撃が思いっきり直撃し、私は吹き飛んだ。
「………っっ」
肩を痛めてしまう。
「どうした?もう降参か?」
「そんなわけないでしょっ。ドルク、手を貸してっ」
『当たり前だっ!』
ドルクに乗り、ドルクごと、魔王に突っ込む。
「『いくぞぉぉっ』」
「ふん。………ほれ」
闇魔法ではない、別の魔法が放たれた。
赤い小さな塊の魔力は、私たちに近づく。
そして……。
ギュギュギュギュ!!
ゴゥッ!ボアァァァァァ!!!
とてつもない量の「炎」に変わった。
「……っ!?なんで、炎っ!?」
『……魔族は強いやつならば、二つ以上の属性を扱えると聞いたことがあるが、まさかこれがっ!?』
二つ以上の属性……。
それが事実なら、闇魔法以外の攻撃手段が、この魔王には可能だということなのだ……。
さっきのは、炎魔法ということか。
小さな魔力だったはずなのに、とてつもない量に膨れ上がる。
まるで爆発のように大きくなっていたのだった。
『………ぐぅぅぅ』
「っはぁ!」
光魔法で炎魔法を防ごうとするが……。
『ダメだっ。向こうの魔力が高すぎだっ!!』
「―――――っっ!!ぐぅあぁぁぁ!!!」
熱に蝕まれる私を見て、余裕そうに笑っている魔王…。
「っ!」
体に炎を纏ったまま、魔王に突進していく。
私自体が炎を纏うわけだから、魔王だってダメージを食らうはず……。
ワイバーンのような戦い方だった。
「………はぁっ!」
しかし魔王は、殴ってきていた。
それも、腕に闇魔法を纏った状態で……。
「えぐぅっ」
「残念だな。お前の力量では、余を傷つけることすら叶わないのだから」
「……そん、なっ、こと……っ」
しかし、私の受けたダメージはかなりのものだった。
そして魔王は、一切のダメージを負っていない……。
優勢なのは、誰がどう見ても魔王だ。
「…………まだ…………。やれるんだから……………」
『ココっ』
ドルクすら、見守ることしかできなかった。
いくら神獣と言えども、魔王に太刀打ちなどできなかったのだ。
「……ふぅ。おもしろくない。もう終わりにしよう」
「おもしろく、ない?」
「あぁ。弱いものが絶望した瞬間。戦いはつまらないものになる。お前はまだ負けないと口では言っているが、顔は素直に絶望の表情をしている。そんなやつと戦っていても、楽しくなるわけない。楽にしてやる。余の技で……」
「…………!?」
魔王の全身から、魔力があふれでるのを感じた。
いつかの将軍との戦いなどとは比べ物にならない。
天災のような力だった。
「……………闇魔法よ、全て飲み込めっ!!!!!暗黒世界!!!」
目の前が真っ黒に染まっていた…………。




