第四十六話 狩り〈2〉
ズドォォォォン
という衝撃音が鳴り響く。
私の魔力と、ワイバーンのブレスがぶつかって爆発を起こした。
衝撃波が周囲を巻き込み、吹き飛ぶ。
私も同様に吹き飛ばされ、近くの岩や木をなぎ倒すほどの力が加わる。
私の目の前では、私と同じようにして吹き飛ばされたワイバーンが、怒り狂っているのか翼を広げて全速力で飛ばしてくる……。
「…………っ!!」
「グギャオオオオオォォォォォォォォォォ!!」
「……放てっ!!」
村人たちが再び矢を放つ。
勢いを増して飛び込んでくるワイバーンに飛ばすそれは、当たれば確実にダメージを負わせられるはずだが……。
「ブゥワアアアアアア!!!」
「くっ!!」
ワイバーンがブレスを振り撒いて、矢を焼き尽くす。
このワイバーンはかなり戦い慣れしている。
「…………くそっ!」
リーダーが舌打ちをする。
思ったよりもこのワイバーンに苦戦してしまっているからだ。
勝てない。
ワイバーンの闘志をギリギリにまで引き上げてしまったせいで、向こうは完全に興奮状態だった……。
「ギャアアアアアアア!!!」
「あ、がああああ!」
ワイバーンの攻撃は、ブレスだけじゃない。
私に向かって、強烈な突進を食らわせてきた。
手を後ろに縛られているせいで、攻撃を防ぐ手段を持てず、がら空きのボディにクリティカルヒットした。
「―――――っっっ!!?」
「ヴォアアアアアアアア!!!」
さらに、そこにもブレスを吹き込む。
私を灼熱のブレスが包み込み、燃やし尽くそうとしていた。
「……あ、づっ!ぐはぁぁぁぁぁ!!!」
私は地面に転がりおち、そのまま芋虫のように転がり回る。
全身を灼熱の炎が纏うのだ。
痛いし、熱いし、怖い……。
そのうち熱も消えたが、私の体は動かない。
あまりにもダメージを受けすぎたのだ。
「……ぃ……あ………ぐ…ぁあ………」
なんとか体を立ち上がらせようと、必死に力をいれるが……、当然入らない。
「…………うぐ……。もう……ダメ……だ…っ」
頭が真っ白になっていく。
死ぬ…………。
一瞬にして悟る。
勝利を確信したように、ワイバーンは咆哮を上げて襲いかかる。
ただ転がっている肉塊のような私では、もう勝負がついているのだ。
あとは、ワイバーンに噛み千切られて、食べられるだけで終わる。
結局魔王には会えなかった。
やはり私では、勇者になるほどの器じゃなかったのだ……。
しかし……
「行けぇぇぇっ!!」
シュンッ!!
ブシャァァァッ!!
「ア…………アギィアアアアアアアアアア!!!」
「……………?」
悲鳴が聞こえた。
人間じゃない、なんだか化け物のような声。
まだ私、死んでない……。
いったいどういうこと……?
「ヒギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」
突き刺さっている矢。
ワイバーンの体に突き刺さる数本の矢から、ワイバーンの血が吹き出て、悶え苦しむワイバーンの様子が見える。
「…………!!危ないっ!!」
ワイバーンが今度は、魔族の人たちに向かってブレスを放とうとしている……。
ダメだ……そんなことすれば、村人たちが……!!
「守らなきゃ…っ!村人たちを、守らなきゃっ!!」
何ができるだろう……私にいったい、何ができるだろう。
腕が使えないんじゃダメだ……、腕の縄をほどかなきゃっ!
「………い、ぎぃ……あ、擦れ……てっ……!痛……い…、あ……うぅ……」
縄が手首に食い込んで、擦り傷になる。
でも、ほどかなきゃ。
「グゥオオオオオオオオオオ!!!!」
「……あ…ぅ………うぅ……あ……う……うぅ…………あ……ぅ……あう………ぐっ!」
痛みに耐えながらも必死に振りほどこうとするのに、強く結ばれていて取れない。
しかし、無慈悲にもワイバーンはブレスを吹き上げた。
「…………グルゥアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
「―――――とれたっ!間に合えっ!間に合ってぇぇぇぇぇ!!!」




