第四十四話 処刑執行!?
なんだか久々にゆっくり書く時間があったのにこのクオリティ……
次の日の朝。
朝起きたときには、両手首を十字架にかけられている状態で、村の広場に放り出されていた。
いきなりの状態に私は驚き、パニックになりかけたが、必死に落ち着かせていた……。
「…………(大丈夫。まだ大丈夫。ドルクが助けてくれる……)」
ドルクは私の視界の中にいないが、たぶんどこかで様子を伺っているのだろう。
そんななか、魔族の男の一人、髭を長く生やしたおじいさんのような人が話をしだした。
「人間よ。何か、最期に言いたいことはないか?」
このあと私は、間違いなく殺されるのだろう。
公開処刑のようで、ここの村人であろう魔族が、何十人と私の周囲に集まっていた。
男性も、女性も、少年も、少女も……、おぞましいものを見るように私を見ていた。
「……どうして、私を、殺そうとするんですか?」
「村人に剣を向けた報いだ。人間は野蛮だ……。殺すに限る……」
おじいさんは淡々と、恐ろしいことを語っていた。
私だって、攻撃してきた魔獣を殺してはきていた。
蝙蝠みたいな魔獣とか、巨大な鷹とか、翼の生えた虎とか。
自分も確かに残酷なことをしてるのは理解できる。
この世界にやって来て半年。
降りかかる火の粉は振り払えるくらいの実力を持っていなくては、幸せも自由も手に入らない。
それがこの世界の常識だってことは、ずいぶん身に染みている。
でも、いざその刃が自分に向けられると、相当怖い。
「……それは、本当にごめんなさい……。でも、こっちも身を守るのに必死で」
「言い訳を聞きたいわけじゃない…。貴様のような野蛮な生き物、殺すしかない」
「ちょっと待ってください。どうして、そんなこと言うんですか……。なんで、私が野蛮なんて言うんですか……」
元の世界なら、剣を持っているだけで十分野蛮だ。
でも、この世界なら、剣を持っていたって別に変ではない。
むしろ、剣を持っていないと危ない。
ここは魔界だ。
例の翼の生えた虎だってここ魔界の出身だし、なんたって神獣の一種、バイコーンだっていたのだ……。
こんな魔界に、武装無しでいる方が危険すぎる。
「人間なんて、みんな野蛮だ。魔族を忌み嫌い、差別するような連中だ。お前だって、魔族だと分かったから斬ろうと思ったのだろう…?」
確かに、魔族だったから警戒したのは事実だ。
だが、私の知っている魔族は、血をなめて喜んで、他人が苦しむ様を嘲笑うような人だったため、魔族全員がこんなものだと勘違いしていたのだ。
「……それは、ごめんなさい。魔族の人がどんな人なんて知らなかったから……。あなただって、私のこと、知らないでしょ?」
「人間のことなど、知ろうとは思わないな。人間は勇者を使って、すぐに魔王様を殺そうと企むような連中だ。かつて魔族を魔界に押し込めたのも、人間の連中だっ!」
「……でも…っ、魔族の人だって、人間の町や国を攻撃してたっ。完全に破壊されてる町だって、私は見たよ。そんな町の人は、みんな魔族を恨んでた……。『魔族のせいで、町はめちゃくちゃだ』って……。人間も魔族も、みんなやってること、同じなんじゃないの?」
互いに恨みあって、互いを攻撃しあう。
それのトップが、魔王と勇者なのだ。
魔王も勇者も、互いにやってることは変わらない……。
お互いに迷惑をかけているだけ。
なんだかそんな気がしていた。
「…………やっぱり、魔族の人たちは、人間が嫌いなの?」
「当然だ。魔族を嫌い、倒そうと企むような連中を好きになれるはずなんてないだろ」
「…………お互いに………分かり会える、なんて思えないの?」
「……………………お前は、分かりあえるって思うのか?」
難しい質問な気がした。
私が今まで見た限り、人間のなかで魔族に好感を持っている人は今のところいない。
逆にこのなかで、人間に好感を持っている魔族もいなさそうだ……。
別種族や違う一族が分かり合うのは難しい。
でも……。
「……私が、証明して見せる……」
「………どうやってだ?」
私は勇者だ。
いわば、人間の代表。
だったら、私が人間の株をあげる大切な存在になるわけだ。
「……もう一日、チャンスをください。私が、人間の代表として、人間のすごさを教えます」
「……………………」
「私もさっきまで、魔族は野蛮で怖いって思ってた…。初めてあった魔族が、人間をすごく嫌っていたから、私も殺されかけた……。それで今回も捕まったから、魔族は怖いって思った。だけど……、あなたは、ただ純粋に、村人を守ろうとしただけだった…。そんな人が、野蛮なわけないよ……」
守りたいものがある人は、それに向かって全力で戦う。
私にも、その経験があるから。
「……だから、今度は私に、人間の代表として、野蛮じゃないことを証明させてほしいの」
「…………………」
おじいさんは、黙り込んでしまった。
「いいんじゃねーか?1日くらいよ」
一人の男の人がそう呟く。
「でも……殺されかけたのがいるとなるとね」
「でもこんなに頼み込んでいるわけだし……」
「殺されたくねーよぉ」
次々に言葉をかわし始める村人たち……。
わかっている。
この村での私の認識は、どうせ殺人鬼同然。
でも、このまま殺されるのは、私のイメージにも、人間という種族のイメージにも、プラスにはならない。
「お願いしますっ。両手縛って使えない状態とかでもいいんですっ!お願いしますっ!!!」
手なんて使えなくたってどうにかなる。
とにかく私は、人間として、野蛮じゃないことを証明したいのだ……。
「………………手を後ろで縛り付けておけ。その状態でなら、今日一日、村で過ごすことを認めてやろう」
そして、私は、十字架から自由の身になれたのだった。




