第三十八話 焼けた村〈3〉
「グルルルル…」
「………」
「グルゥゥアァァァァァ!!」
私に向かって、襲いかかってくるウィングタイガーだが、私は、落ち着いて剣をとり、
「はっ!」
ウィングタイガーを斬りつけたのだった。
「……あの娘……。勇者だったの……」
「……………えっと、そのぅ……。ご…っ、ごめんなさいっ!!」
「―――!?」
帰ってくるなり、急に土下座をした私を、みんな驚いて見ていた。
驚いていようがなんだろうが、私には関係ない。
「………この村を、救えなかった……。ごめんなさいっ!!」
「………………」
謝っても、この村は直らないし、この村で亡くなった人も戻ってくることがないのもわかってる。
だが、謝ることは、自分の責任を取るということだと思う。
私は、勇者であり、人間を幸せにする責任があると思う。
それができなかったから、私は謝罪しているのだ。
「……そんな。謝らないでください。ほら、顔を上げて……」
「……………でも」
「あなたは、私の家族を救うことはできなかったかも知れない。でも、今まさに、私を救ってくれた。私は、確かに、あなたに救われたんですよ……」
「そうだな。もうなくなった命より、今、生きてる命を救ったんだ。さすが勇者だよ、な!?みんな!!?」
「「「あぁ!!」」」
「…………みんな……。ありがとう、ございます…………」
「ほらほら、泣かないの。勇者でしょ?さっきまで泣いてた理由は何となく分かるけど、何でまた泣いてるの?」
「だって…だってぇ……。みんな……、みんな、優しくて…………」
「当たり前じゃない。私たちを救ってくれたんだもの、当然よ」
「でも、もしかしたら、またさっきと同じ魔獣がまた現れるかも知れません。さっきは1体だったからなんとかなったけど、次は10体で来るかも知れないし、100体かも知れない……」
「……ふふっ。今度は、私たちが、自分達でこの村を守る番よ。男たちは半分以上殺られてしまってるけど、女だって強いってことを、見せてやるわ」
と、村人たちはみんな元気に笑っていた―――――。
さっきの、母親を失って泣いていた父娘も、私のことを感謝していた。
勇者になって、久々によかったと感じた瞬間だった。
「じゃあ、私は行くので、みなさん頑張ってください」
「あんたも、気を付けてね!」
「どこ行っても、あまりメソメソ泣いてたらダメだからなー!」
ちょっと耳が痛い言葉があったが、きっと愛の鞭だよね。
「ね、ドルク……」
『なんだ…?ココ』
「……………ありがと。私、いつもドルクに助けられてばかりだね…」
ボルケイロ将軍のときも、倒したあとずっと面倒を見ていてくれたのは、ドルクだった。
魔族との戦いのとき、最後にとどめをさしたのは、ドルクだった。
今回、私を立ち直らせてくれたのも、ドルクだった。
ドルクはいつだって、私の味方で、私の心を支えてくれる。
最高のパートナーだと思う。
「これからも、よろしくね?ドルク」
『当たり前だ』
二人の絆は、さらに頑丈に結ばれた。
「……ど、どういう、ことだ……っ!?」
俺は、目の前の景色に混乱していた。
いきなりこんななにもない混沌とした場所に連れてこられたら、どんなやつでもこう反応すると思う。
「はははははっ。だから説明しただろ?お前ら周辺を魔界に転送するって。ここは魔界さ」
「魔界、だと?そんな、こんな、ことっ」
「あり得ない、か?どうしてそんなこと言える?」
「だって、お前が使ったのは、闇魔法じゃないのか?闇魔法は、光魔法と相対する魔法で、闇の力を使用する魔法のはず。だったら、転送なんてできっこないっ!」
「どうしてできないなんて決めつけるの?ボクはこうしてできてるのに?」
「空間の移動は、空魔法のはずだ。闇魔法を使うものが、空魔法なんて使えるわけないんだ」
俺の意見は正しいはずだ。
この世界の全ての生き物には、魔方陣が刻まれていて、その魔方陣によって、使える属性が決まるのだから。
「そうだな。だから、君は光魔法を使えるし、リムも光魔法の使い手だ。だけどね?『魔方陣を1つしか持てないなんてことはない』んだよ」
「は…?」
「だ・か・ら。魔方陣は1つだけしか持てないのは、虚弱貧弱無知無能な生き物だけだよ。ボクたち魔族は、あとから2つ、3つと上書きができる」
「……………!!?」
つまり、魔族の魔法は、ワンパターンじゃなく、さまざまな属性を混ぜて使えるということになるのだ。
「つまりさっきのは……」
「闇魔法の力で、光魔法に弾かれなくしたうえに、空魔法を重ねてこっちに飛ばした。っていうことだよ。どう?これで、君じゃあボクに勝てないってわかったでしょ?だからその抜いた剣をしまいなよ」
「…………グッ」
「悪いことは言わないから、素直に魔王様に会った方が身のためだと思うよ?」
「くそ…っ!」
いったい俺たちは、どうなるのだろうか。
チートな魔族を倒せるのか!?




