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第三十六話 焼けた村

「………へぇ。この蛇を一撃で縦に斬るなんて。君もなかなかの腕前だよねぇ。まぁ、勇者ちゃんは魔王様配下の四天王を倒したからそれくらいはできてないと、勇者一族の人間としては恥ずかしいけど」



勇者ちゃんなんて軽々しい呼び方で呼ぶな。


しかも、やはりココも接触済みだったらしい。


となったら、話は違う。



「……俺たちを魔界に連れていってどうする気だ?」



「ん〜、それは魔王様の考えだからよくわかんないけど、歓迎はするって言ってたかな?」



魔王の歓迎なんて、これほど胡散臭いものはないだろう。


こんな話は無視するに限る。



「だったらなおさら、お断りだな。俺はこの牧場の経営でいそがしいんだよ。牛とか豚とか、いっぱい飼ってるからさ」



それを全部飼育させる親父も親父だが、今のところどうにかなる問題でもなさそうだ。


ココが早く帰ってきてくれるのが一番だが…。



「……だったらなおさら、早く魔王様に会ったほうがいいと思うな。魔王様、気は短いんだよね。気に入らないことがあればすぐに怒鳴ってるし。まぁ、命を取らないからまだマシだけどね。とにかく、早く会ってあげてほしいな〜」



「何回も言わせるな。俺はここにいるんだ。魔界などには行かない」



「だったら、この場にいるなら、魔王様に会ってもいいんだね?」



「………どういうことだ」



魔王がここに来るとか、そんなことだろうか。


仮にも一国の王じゃないのか、魔王は。


いや、魔王の場合、魔族全てを束ねる王なわけだから、そりゃもう偉大な存在のはずだ。


魔族では。



「………魔王がここに来るのか?元勇者だってここにはいるんだぞ?」



「まさか〜。魔王様は動かないよ。もしもの事態だって考えられるわけなんだし。だから、来てもらうのは君たちだよ」



「だから行ってるだろ。俺は行かないって」



イライラさせる話し方に、俺の限界値はキレそうだった。


しかし、



「行けるさ。『この辺り全体を魔界に飛ばせば』ね」



「は…!?」



「いくよ!」



魔法使いの男は上空に飛び上がり、何やら黒い塊を作り出していた。


どうやら闇魔法に見える。



「……………転送っ!」



魔法使いの上空にできた大きな黒い塊は、俺たちや牧場を全て丸のみしてしまうほどの大きさになっていた。



「な、なんだ!?これは!!」



「………ボクの魔法だよ。転送魔法とでも言おうかな。ほら、周囲の様子を見てごらん」



「―――――!!!」



そこは、『魔界』としか表現できない、禍々しい大地が広がっていた―――――











「……これが、ニーマイ共和国……」



『ひどい有り様だな』



私たちがついに来たのはニーマイ共和国の村。


しかし、村はひどい状態だった。


家は完全に焼け焦げ、なかには人の焼け死体みたいなのもある。


煙の臭いや、物、生き物が焼けた臭いなどが漂い、とても嫌な感じだった……。


私は思わず鼻を覆っていた。



「四天王の話から聞いて、ニーマイ共和国は完全に焼け野原にしたらしいから、もしかしたら、このままずっと続いてるかも知れないね………。こんな、風景が……」



『…………なんだか、悲しいな』



私たちは、この村の惨状を見ながらため息をついて歩いていた。


しかし、



「お、お前………っ!!これ、いったい…っ!な、んで……っ!!」



「そんな……、お母さ、ん……どう、して……」



少し歩いた先、静かだった村に二人の声が聞こえた。


男の声と少女の声。



「…………まさか……。魔族に……」



「……どうして…っ」



今にも泣きそうな、二人の声が聞こえた。



「………なんで……。助けて、くれなかったんだよっ。勇者は……」



え?



「こんなに、人間がいっぱい死んじゃってるのに……、どうして、勇者は、助けて、くれなかったの……」



え?



「もしも、勇者が、この村に、来てたら……」



「勇者なのに、この村を、救ってくれなかった……」



「―――――っ」



『ココ。気にすることはない。お前は一人なんだ。お前一人じゃ限界もある……』



ドルクが私を慰めてくれているが、私の心はすでに苦しい思いでいっぱいだった。


魔族との戦いが、もっと早く、旅をもっと早くできていたら、救えた命もあったかも知れない。


村が救えたかも知れない。


そう思うと、勇者だなんて、急に恥ずかしくなって来た。


救うこともしないで、何が勇者なんだ。



「……ごめんなさぃ……。ひぐっ、ごめんなさい………。ひ、ぐ。ごめんなさいぃ……」



地面にへたり込み、涙をポロポロとこぼしながら、謝罪の言葉をずっと繰り返していた。


泣くことしか、私にはできなかった。


謝って、許しを乞うしか、できなかった。



「……ごめんなさい……。ひぐぅ、ごめん、なさぃぃ……」



涙が止まらない。



『ココが泣く必要はない。お前は頑張ってたじゃないか。魔族相手にも、魔獣相手にも、頑張って戦ってただろ。お前はよくやっていた』



「……でもぉ、だって、うぅぅあぁぁぁぁ」






「………こんなところに、人がいるぞっ!」



え?



「大丈夫?あなたも、家族を殺されたの?」



違う、私は、



「俺たちの避難場所があるんだ。魔族には見つかっていない。そこに行こう」



泣いてる私を、避難場所まで連れていってくれた。


私を匿ったってしょうがないのに。


あなたたちが怒っていた、勇者なのに。


私は、言葉にできないまま、その避難場所に来てしまった……。


結局ルイの活躍は見られず………。なんだかなぁ~………。

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