第三十五話 魔族〈6〉
タイトルが前回の続きみたいですけど、場面は違う場所となってます。
「………準備は進んでますか?」
「はい、女王様!」
「………これが済めば、世界は我がものになるのですね……」
「………勇者が魔王を倒さなければ、事は運びませんよ?」
「それはそうね。だから、あの勇者にはとびっきり頑張ってもらわなければ……」
「…………そうですね」
「はぁ〜……」
「おい、親父……」
「はぁぁ〜……」
「………おいっ!親父ぃっ!」
「っあぁ、なんだよ、ルイ……」
「………心配してるのはわかるけど、ちょっとはこっちの暮らしのほうも心配してくれよ……」
俺は、ルイ。
勇者一族の末裔、らしいが、勇者らしいことなんてなにもしていない。
俺は牧場で、家畜の世話をしている。
そんな親父をみて育ったからか知らないが、親父が元勇者だなんてあまり感じられない。
だが、当の親父はそれどころじゃなかった。
「はぁ〜〜。ひどいことされてたらどうしよう……。魔族なんて、危険なヤツばかりなんだぞ?はぁ〜、心配だ……」
「ココが旅に出てから、そればっかだな」
あのココは、親父の心の半分以上を占めていたらしい。
ココがいなくなってから、嫁にいった娘を心配する父親のような状態が続いていた。
もう旅立ってからは長い日数がたっている。
気にしすぎは体によくない。
現に親父に、部屋にこもりきったまま、呪文のように唸り続け、食事すらろくにとっていない。
「……お〜い、親父〜。いい加減に飯くらい食べなよ〜」
「……ココが、う、ぅ〜ん……」
「……はぁ〜……」
やっぱり今日もダメか……。
こうなったらやっぱり、ココが早く帰ってくるしかないんじゃないか……。
そう思っていたときだった。
「へぇ〜。ここが、かの勇者が経営してる牧場か〜」
「グシュゥゥゥゥ…」
「ダメだよ、あの家畜たちを食べ尽くしちゃあ……。君なら全部丸呑みだろうからさあ」
巨大な蛇と、一人の人間、いや、魔族。
蛇自体から発せられる、妖力、殺気。
魔族から放たれる、異様な存在感。
これらに圧倒され、家畜たちが騒ぎ出していた―――
「どうしたんだろ、外がさわがしい…………―――――ん?」
俺が外をみると、牧場に立っている、一人の人間と、その人間の数倍はあるだろう蛇がいた。
「………あいつら、いったい何を…?」
蛇ににらまれた蛙、いや、家畜たちが逃げようとしている。
動物は人間よりも数倍勘が強い生き物だ。
そのため、あそこにいる蛇および人間は、破格的な強さを持つのだ。
親父がこんな様子だから、俺が見に行くしかないわけだが……。
俺は剣を持ち、出ていった―――――
「おっ、出てきたな……」
「グルシュゥゥゥ」
「あの人間も食べちゃダメだよ」
近くに行ってみると、俺でさえわかるほどの殺気を放っている蛇が、俺に対して威嚇をする。
その隣にいた人間は、全身真っ黒な服を着た、まるで絵本に出てくる魔法使いのような格好をしていた。
俺が無言でその場にいると、人間の方が俺に話しかけてきた。
「君が、リム・ルメイドかな?それにしちゃ随分と若いな……」
親父の本名を把握しているということは、大抵の予想はできる。
間違いなく勇者がらみだ。
「………知らないな。帰ってくれないか?俺の家畜たちが怯えてるんだよ、そのでかい蛇のせいで」
「シュルルルルル」
「悪いけど、そうもいかないんだよねぇ。ここが勇者一族の末裔が暮らしてるって、噂で聞いたものだからさ。でも、君にもどこか、リムの面影があるような…。もしかして、息子さんだったり?」
ダメだ、敵に完全に把握されてしまっている。
「…………悪いが、リムは今この場にはいない。諦めて、帰ってもらおう」
「だから……そうはいかないんだって。君たち勇者一族には、ぜひとも会いたがっている人がいるんだよ。特にリムのことをさ!」
「……無茶を言わないでほしいな。今リムはそんな精神状態じゃない。悪いけど、帰ってくれ」
「精神状態が悪いのに、ここにはいないの?どこか病院にでも行ってるの?」
「そうだよ。だから帰れ」
俺は、こいつの追求にいらだちを見せていた。
めんどくさい連中だ。
とっとと追い払いたかった。
「………君、勇者の息子だろ?どうして君がこんなところにいるんだ?勇者は代々男系一族だろう?今の勇者は女だ。それも、君と同年代の………」
「…………だからなんだよ」
「勇者様をみてさ、ふと思ったんだよ。こいつ、強いくせに、歴代勇者にあまりに似てなさすぎるって。歴代勇者は、みな、緑の髪の毛に、同じ色の目をしていた。だけど彼女は、目も髪も、黒色だった。彼女はいったい何者だい?本当に、彼女は勇者なのか?」
「…………だからなんなんだ?話が見えなさすぎる。結局あんたは、何が言いたい?」
「ボクが言いたいことはね、『勇者の秘密を教えろ。だから、〈魔界〉まで来い』ってことかな」
「…………答えはNOだ」
「………そうか。だったら、実力行使と行こうか!!」
「キッシャアアアアア!!」
待ってましたと言わんばかりに飛び出してきたのは、隣でじっと殺気をさらけ出していた蛇。
恐ろしいまでに巨大なその蛇は、俺を敵と認証している。
しかし、こんな大きな蛇くらいならば。
ズシャアッ!!!
蛇は縦に真っ直ぐに両断されていた……。
第0章じゃほぼ空気(笑)だったルイくんを活躍させてあげだいですね。




