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第三十三話 魔族〈4〉

いや、実をいうと、それは剣ではなかった。


刺さっていたのは、角……。


この角は……。



「………!」



『遅くなって、すまないな………。ココ』



しかし、私の体のしびれが、全身を覆いつくし、声すらまともに発声できなかった。


しかし、目の前にいたのは……。



『…………ココっ!?』



大切な仲間、ドルクだったのだ―――――






1万匹のウィングタイガーなど、神獣と称される我ならば、時間こそかかるかも知れぬが、一網打尽だって可能だった。


人間が3倍の数もいれば、数でのごり押しも可能なのであって、ただの獣と連携が可能な人間であれば、勝敗は目に見えていた。


しかし、どうやらこの魔獣は、ただの魔獣じゃない。


というかそもそも、ウィングタイガーは餌を狩るときは、数匹単位での行動はしても、1万なんて膨大な数でやって来るなんてことは本来ない。



『どうした…?かかってこんのかっ!?』



「グ……グルゥ……」



神獣と魔獣の違いはなにか……。


テレパシーによる意思の疎通もその一つだが、もっと大きなものがある。


それは、「殺気」と「神々しさ」だ。


神獣のように強力な生物ともなれば、これが一番大きな違いと言えると思う。


現にウィングタイガーが人間には攻めても我を攻めようとしないのは、我が殺気で敵を威圧しているからなのだ。



「グギャア!」



とうとう観念したのか、本能に従って我に食いつこうとする。


本能とはむなしいものだ。


例え、「敵うことがない」と知っていつつも、食らいつかなくてはならない。


しかし、こちらに牙を剥けば、例えどんな敵であろうと貫く。



『っ!』



「グ…………ブハッ!!」



喉の辺りに突き刺した角で、ウィングタイガーは死んでしまう。


ウィングタイガーの死体を凪ぎ払うと、さらに新たなウィングタイガーが攻めかかってきた。


これだから魔獣は。



「グァァァァ!」



『ふん。貴様程度、何の造作もない……』



しかし、いくらなんでも数が問題だ。


1万という数はやはり多い。


こちらの戦力は主に人間。


ウィングタイガー一匹に対して、人間が対等に戦うには、100人必要だという。


つまり、3万人で戦えるのは、300匹が限界ということだ。



『これでは、いっこうに終わらぬぞ…!』



いくらこっちが優勢に立てているとはいえ、人間の方の戦力も限界に近い部分もある。



『…………やはり、敵の大将を叩くのが一番か……』



敵の大将と向かい合っているのは、ココと、なぜかバイルもだった。


しかも、ココとバイルが二人がかりで攻めているのに、魔族であろう彼女は余裕そうに攻撃をかわしているのだ。



『…………はっ!』



我は、ウィングタイガーを次々に蹴散らしながら、どうにかしてあの魔族に攻撃する術を考えていた。


しかし、



「グブゥッ!!!」



『っ!?』



バイルの腹に、何回も何回も、刀を刺したり、抜いたりしている魔族。


そのたびに、バイルの腹からは血が泉のように湧き出て、魔族の手を伝っていった。


しかし、魔族はその血を見て、悦に入ったような顔になっていた。


わき出ている血を見て、まるで喜んでいるような表情を見せているのだ。


「……人間の血は、男女問わずおいしいわねぇ。もっといっぱい、味わいたいなぁ〜!」



グシュッ!グシュッ!ブチュッ!ベチャッ!



『………惨いことをする魔族だ……』



どうやら、人間の血をなめているらしい。


血なんて、金属みたいな味しかしないではないか。


我も一度口の中に血が入ってしまったこともあったが、すぐにはきだしていた。


こんなものが好きなんて、しかも、刀を何度も、何度もバイルに突き刺しているのだ。


滝のように流れる血は、下手すれば死に至るほどの量だった……。



「…………やめろっ!」



「だぁ〜め」



ココはさっきまで、あまりの出来事に棒立ちしていたが、死にそうなバイルを見て立ち直り、斬りにかかった。


しかし当然、魔族はバイルをココの前にやる。


「………ごふ、っ………」



「こんな人質みたいなこと………っ!」



「人質…?何言ってるの違うわよ。お裾分けよ、お裾分け。あなたにも嘗めてほしいの。こいつの血を!」



そういうと、今度は背中から、刀を突き刺したのだ。


バイルからは血が吹き出る。


背中から、腹から、口から。


背中のものはそのまま流れ落ちるが、腹や口から出たそれは、真っ直ぐ目の前にいるココに、全部かかっていたのだ。


ブルブルと震えるココ。


こんな経験、一生かけてもないことだ。


恐怖で全身の震えが止まらないのだろう。



「あらぁ〜、お顔にべっとりついちゃったわねぇ〜。なめとってあげるわ。くくくっ!」



そういうと、首をしめあげ、ココの顔を自分の高さまで無理矢理上げた。


そして、



「う、ぐぅ、あ、があああああ……ぐぅ…!」



「ほら〜。ペロ………。おいしい………。くくく。血ってどうしてこんなにおいしいのかしらねぇ〜。くくく……」



「ひ、っ!」



「魔族の体液には、他の生き物の細胞に働いて、痺れを起こすのよ。あたしの舌のおかげで、あなたは今、顔がしびれてる。だんだんとそれが全身に響いてきて、最後には脳まで届いて死ぬ。くくく。怖いわねぇ〜。くくくくくくはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」



そこから、ココの様子がおかしくなる。


我もあまりのことに、ココが心配になって、その場に走っていた。


噛み付くココ。


腕から血が出ても、もがき苦しむ声を聞いても、絶対に離さず、ついには右腕を根本からぶちぎり、魔族の本気が見られるほどに追い詰めた、そして………。



『ココに…っ!触れるなぁぁっ!!!』



我が、角を突き刺したのだった………。


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