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第三十一話 魔族〈2〉

もうあきれるほど鬼畜です。グロい部分が大半ですので、苦手な方はご注意ください。

「恐怖のあまり声も出せないとは………。未熟者のくせに勇者なんて大層な役目など背負いやがって……。もういいわ。とどめをさしてあげる……。楽になりなさい……」



黒い球が私をターゲットとロックオンする。


これで私は無に帰ってしまうのか………。


嫌だ、だけど、怖い。



「―――――っっ!」



「散れ。勇者…!」



ゴウっ!という音が鳴り、私の方に飛んでくる。


どんどん膨張していくそれに触れてしまえば、私は無に…………。



「どらぁぁぁぁ!!」



その黒い球は、霧散していた。


霧散させたのは、私ではなかった。


怖くて目を瞑って動けないなか、助けてくれたのだ。



「………バイルさん………っ!」



「……おぉ、よかった……。危なかった」



私は驚いていた。


バイルさんはこちらの総大将なのだ。


バイルさんにもしものことがあったら、いったいどうなるのか。


そんなの目に見えているはずなのに……。



「……どうして、助けて……っ」



「あなたは我らが同胞だ。絶対に死なせませぬっ!」



私をかばうようにして、敵の大将である、あの魔族を睨み付けて言った。



「………へぇ。あたしの魔法を封じるなんて。なかなかやるようね…」



と、彼女の目からも殺気と興奮が一緒になったような眼差しでバイルさんを見つめる。


互いのにらみ合いが続き………。


「大丈夫です。もう動けます……」



私がようやく動けるようになったところで、再び戦いになった。






しかし、2対1にもつれ込んでも、こっちの劣性に変わりはなかったのだ。


この魔族は、相当の戦いの経験がある。


とてつもなく危険だ。


二人で絶え間なく攻撃を与えているのに、一切彼女は隙を見せない。



「はぁっ!!」



ボルケイロの将軍との戦いのときに学んだ技、魔力の波動を使った攻撃を試みる。


しかし、



「…………くくくっ。その程度じゃ、気休めにもならないわ……」



「ぬあっ!」



気がついたら距離を詰められ、攻撃を受けていた……。


私は動くことすらできなかったのに、どうしてこの魔族は動けたのだ。



「…………チッ!」



「あらあら、危ないわね」



私に攻撃をしてきた一瞬の隙に、今度はバイルさんが攻撃を試みる。


鋭い剣技で、すぐに斬りつけられそうなものを、彼女はすぐにかわし、刀を根本からへし折る。



「な………!?」



「この剣、すごく鋭いのねぇ〜。使えそうだわ〜」



「ぐが!ああああああああ…………」



そして尻尾で、バイルさんの首を締め上げる。


苦しそうな悲鳴をあげるバイルさんだが、彼女は気にする様子もない。



「……ほらほら〜。なにか反抗してみなさいよ〜。ほら!」



「グブゥッ!!!」



バイルさんの脇腹に、彼女は自らへし折った日本刀の刀身を刺し込んだ。


バイルさんからは悲鳴と血が溢れ、魔族の顔と手にも、その血がつく。


しかし、彼女はその血を舌でなめ回し、



「……人間の血は、男女問わずおいしいわねぇ。もっといっぱい、味わいたいなぁ〜!」



グシュッ!グシュッ!ブチュッ!ベチャッ!



と、何度も何度も、彼女は刀身を刺しまくる。


そのたびに、苦しいバイルさんの呻く声が響き、とてもじゃないが見ていられるようなものじゃなかった……。



「…………やめろっ!」



「だぁ〜め」



私は必死の思いで斬りにかかる。


これ以上傷つけたら、治癒魔法でも元に戻らない。


いや、もしかしたらもう手遅れかも知れない。


だが、死んでしまうよりずっといい。


しかし、彼女は尻尾を私の前に差し出してきたのだ。


目の前には、腹部を血だらけにしたバイルさん……。


もう虫の息だった。



「………ごふ、っ………」



「こんな人質みたいなこと………っ!」



「人質…?何言ってるの違うわよ。お裾分けよ、お裾分け。あなたにも嘗めてほしいの。こいつの血を!」



ブシャッ!



「ぐ、ぶぁぁ!」



ビチャビチャビチャ…………



彼女は背中から、バイルさんを刺した。


当然再び血を吐き、血を噴射させる。


その血は、目の前にいる私に降りかかってくるのだ……。


今の私の顔には、バイルさんの返り血が、きっといっぱいついているのだろう……。



「……………っ!!」



「あらぁ〜、お顔にべっとりついちゃったわねぇ〜。なめとってあげるわ。くくくっ!」



彼女は今度はターゲットを私に変える。


私の首をしめると、顔を近くまで引き寄せる。



「う、ぐぅ、あ、があああああ……ぐぅ…!」



「ほら〜。ペロ………。おいしい………。くくく。血ってどうしてこんなにおいしいのかしらねぇ〜。くくく……」



「ひ、っ!」



かくいう私は、目の前の彼女のあまりにもむごい行為に、ただ、怯えるしかできない……。


バイルさんは地面に倒れ、息をしているかどうかさえ分からない。


私も首をしめられ、息はしにくいし、彼女になめられた部分が、だんだんとしびれてきて、感覚がなくなってきている気がした………。



「魔族の体液には、他の生き物の細胞に働いて、痺れを起こすのよ。あたしの舌のおかげで、あなたは今、顔がしびれてる。だんだんとそれが全身に響いてきて、最後には脳まで届いて死ぬ。くくく。怖いわねぇ〜。くくくくくくはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」



私は、だんだんとしびれが大きくなるのを感じ、ただその場に立ち尽くすしかなかった。


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