第二十九話 虎に翼
オリジナルの魔獣がでてきます。
ゴォォォォ………。
そんな音が響いていた。
ここはとある村、だった場所。
いまはただの焼け野原だが、数時間前まで、少ないながらも人間が生活していた場所である。
どうしてこの場所が焼け野原となったのか。
その元凶は、今、ちょうどいい頃合いに焼けた人間の肉をむさぼり食っていた。
「キシャアアアァァァァ……」
とてつもなく大きな虎に、翼が生えたような、そんな怪物。
そしてそれを纏めて指揮する人型の生き物。
人間にしては、肌の色が青くなっているし、耳は尖り、エルフのようだ。
決定的な違いは、背中に生える黒い羽と、同じく黒く、それでいて先が尖った尻尾。
こいつは、人間ではない。
魔族と呼ばれる、人間が最も忌み嫌う生き物だった。
「………これで13こ目の村か……。いったい何人の人間が死んだだろうなぁ〜。くくく……」
死を嘲笑う。
これぞまさしく鬼畜とも言える行為だが、魔族に限ってはそうでもない。
人間が魔族を忌み嫌うのと同じく、魔族も人間を毛嫌いしているのだ。
嫌いあう者同士の戦いほど恐ろしいものはない。
互いの戦力をかけての戦争ならばまだしも、この村のような虐殺が繰り広げられることも少なくない。
どれだけの人間が命乞いをしても、魔族はまるで、ハエでも叩くかのように人間を殺す。
ハエの命を人間以下に見ているわけではなく、本当に叩き潰したり、とか、そんな殺し方もざらじゃない。
「……次の村には、もうちょっと手応えのあるやつがいるといいな」
魔族がそういうと、明記することができぬような、よくわからない言葉を発して、魔獣たちに指示する。
次の標的となる村を探すために―――――
「やっぱりここは、私の聞いたことがある江戸と同じだったんですね」
「まぁ、そういうことですな」
おじいさんに連れられ、江戸城の最も高い場所、天守閣にやって来た。
「今、異世界はどうなってます?」
このおじいさん自体は、異世界を見たことはないはずだった。
しかし、家継の子孫である彼にとって、江戸という町は、先祖の故郷であるのだ。
そんな町がどうなっているのか、知りたいのも理解できる気がした。
「……今江戸は、東京って呼ばれてます。江戸城よりも大きな建物がたくさん建っていて、日本で一番大きな規模の都市なんですよ」
それもこれも、江戸に幕府があったから。
江戸城を無血開城し、新たな政府の基盤を設置したからであると思う。
だが、この江戸城から見る景色は、360度地平線という、異世界、日本じゃありえない光景だった。
なぜなら、日本の場合、特に現代ならば、ビルが立ち並んでいるばかりで、地平線など恐らくみえっこない。
そもそも日本は山が多いから、地平線が見える場所すらそもそも少ないのではないだろうか。
全て推測だが、どうなのだろうか。
こんなに、全方位何もないなんてことは、滅多にないは………ず。
「あれ……なんだろう…?」
向こうから、何かがやって来る。
とてつもない数の何か。
軍隊のような何かが、こっちに、江戸に向かってやって来たのだ。
「………あれは、ウィングタイガーの群れじゃないか……?」
「ウィングタイガー…?」
「そのままですよ。翼の生えた虎です。戦闘力がとても高い魔物で、危険です!すぐに町の警戒体制を厳重にしなくては!」
そういうと、家臣たちに連絡をして、緊急の警戒体制を整えていた。
陸からの攻撃のために、刀や槍を持つ侍たちや、空からの攻撃のために弓矢を持つ侍など、さまざまな侍たちが守りを固めている。
「………しかし……。ウィングタイガーの生息場所は魔界のはず。なぜ、こっちに来ているのだ……」
バイルは、鎧兜を身に付け、疑問を口にした。
その疑問に答えたのは、家臣の一人だった。
「あれは、魔王軍の一群のようですっ!ニーマイ共和国もほとんどの領土が壊滅させられたと情報が入りましたっ!」
「ま、魔王軍、だと……?」
魔族の総大将、魔王が率いる軍隊。
そのなかの一群が、このウィングタイガーというわけか。
ウィングタイガーは、百人単位で攻めかかって五分というくらいの戦闘力を持つ魔獣だ。
江戸に存在する侍は全員で3万人ほど……。
それに対して、ウィングタイガーの数は、1万体……。
絶望的な数といっていい。
しかし、先祖から代々伝わる侍魂が、こんなところで引くことを許さなかった。
「我らの数は敵の数より2万も多い。怯える暇があれば刀を抜けっ!かの家継公も、一人の人間を守った!我々にはその血が流れている!この江戸に住む、何万人の人々を守るのだっ!!」
「「「うおぉぉぉぉっ!!!」」」
今、魔王軍と江戸が、一直線にぶつかり合う……。




