第十七話 記憶がある!?
「やぁやぁ、勇者よ。目覚めはいかがかな?」
「最悪です……」
そこにいたのは、かなり大柄で柄の悪い男性だった。
こんなやつが帝王とは信じられない。
「そうか。まぁ確かに、あの悲鳴ではおそらく相当な嫌な夢を見たのだろうなぁ?」
「……………私に何をしたんですか?」
私が見た夢は、私がこの世界に来る前のことだった。
あんなに感覚がリアルな夢はないだろう。
あれがもしも失われていたはずの「記憶」だとしたら、そんなものをもう一度呼び戻すなんて、単なる偶然で出来るものじゃないだろう。
「おいおい。俺が何かしたとでも言いたいのかね?勇者君?」
帝王はとぼけた。
こいつは間違いなく知ってる。
こいつ以外に逆に誰がこんなことをすると言うのだ。
「まぁ確かに。勇者の存在を確認したと聞いたあと、勇者を瀕死状態にしてこちらに差し出せと、将軍リオライ三世、本名ガール・グレイスに言ったのは事実さ。そして確かに、血まみれで瀕死状態のお前を連れてきた。そこでだ。勇者を治療したあと、拷問や尋問をかけ、他のルメイドの人間の場所を教えるのも手かと思ったが、手っ取り早く魔法で記憶を探り、そこから見つけた方が早いと思った。そこで俺は、自分の時魔法でお前の時を操り、記憶を再生させた。
すると、お前の素性がよく分かった」
「…………っ!!つまり、私があんな夢を見たのは、あなたのせいだって言うこと?」
「よくわかったな。正解だ。だが、お前には別の面白いことがわかったのだ」
「何よ」
「さっき自分の夢でもみただろう?お前は、『家族を失った』のだろう?」
帝王は、私を挑発するように言った。
そうだ、私は、家族を失っている。
「だから?それがなんの関係があるのよ」
「だが今、お前は家族を築いている。こっちの世界での家族は、仮の家族だ……」
仮の家族?
どうしてそんなことを言うんだ。
リムおじさんとルイは、そんなものじゃない。
「お前はただ、家族と過ごせなかったのを、こっちでわざわざ体験していただけだ。所詮、お前たちの家族なんて偽物なんだよ」
「…………なんで、あんたなんかにそんなこと言われなくちゃならないわけ!?あんたには関係ないじゃないっ!」
「クックッ。そうだな。関係ないな。だからこそ、他人事であって、面白いじゃないか。家族がほしいなどという欲求不満にかられてできた仮初めの幸せのために、必死に魔王を倒そうなんて馬鹿言ってるお前は、心底面白い」
私の心からは、とてつもないほど怒りが溢れ出ていた。
この男は、他人のプライバシーを簡単にこじ開けたあげく、それを馬鹿にしているのだ。
私じゃなくても、誰だって怒るはずだ。
「………あんたなんかに、何が分かるのよっ!私たち家族の、何が分かるのっ!!仮初めなんかじゃない。仮初めなわけがないっ!!だって、リムおじさんは、私のことを何回も守ってくれた!ルイだって気にかけてくれた!みんな優しくて、本当に優しくて。私は幸せだった。少ない時間だったけど、こんなに幸せだった時間はないのっ!あんたなんかに、家族の何が分かるのよっ!!」
馬鹿にされたのが、本当に許せなかった。
涙が溢れて、私の頬を伝う。
これは私の、怒りの涙だ。
「下らん。お前が魔王を倒して、幸せになることなんてできないんだよ。お前は、不幸にしか、なることは許されない」
「…………どうしてですか」
「簡単さ。今からお前は死ぬ。お前の記憶を頼りに、他のルメイドも死ぬ!可哀想になぁ。お前が家族になったやつらはみんな死んでいく。お前が、家族になったばかりに!!」
「言いたいことは、それだけかぁぁぁぁ!!」
私のなかで、何かが壊れた…………。




