第十六話 夢オチ!?〈2〉
「もうっ。あとはお姉ちゃんだけなんだから、早くしてよね〜」
「はいはい…」
私は髪の毛を整え、服を着替え、外に出る。
外にはお父さんもお母さんも待っていた。
「じゃ、行くかっ」
と、お父さん。
「うんっ。行こう行こう!」
とお母さんと妹。
家族の旅行は、いったいどこに行くんだっけ?
「じゃあ、空港まで行こうか。離陸までまだ時間はたっぷりあるけど」
どうやら海外まで行くらしい。
なるほど、小学生くらいであろう妹がはしゃぐ気持ちも分からなくもない。
海外なんて、普段住んでいる日本からしてみたら「異世界」みたいなものだ。
文化、生活、人、価値観、何もかもが本来住んでいる日本とは違う。
最初は確かに戸惑うかも知れない。
でも、それがさらに新たな自分の価値観を築く原点になったりするのだ。
新たに自分の大切な「何か」を手にいれることができるかも―――
あれ、海外なんて行ったことないはずのにどうしてこんなに熱烈に語れるんだろう―――。
自分で自分が不思議だった。
「じゃあ忘れ物はないな?なら行くぞーっ!」
私は、自分が「何か」を忘れている気がしてならなかった……。
やがて有名なとある空港に着いた私たち。
しばらくその辺をうろついたあと、私たちは飛行機に乗った。
離陸してしばらくすると、私は眠気に襲われた。
このままぐっすりと眠っておけば、幸せだったはずなのに……。
私はなぜか、妙な感覚に襲われた。
虫の知らせとでも言うのだろうか。
エレベーターに乗ったときの、ふわっ、とした感覚に近い。
深い眠りについていたはずが、突然意識を覚醒させられた…。
「えっ…!?」
体がほぼ70度くらい傾いている。
シートベルトをかけたまま眠っていたおかげか、体はシートに座ったままだった。
どうしてこんなに傾いているのか。
『現在、緊急着陸体制に入っています』
というアナウンスが入ったのだ。
「これ…っ。どう、いうこと……っ!?」
「お姉ちゃんっ!怖いよぅ!怖いよぉぉ」
と、泣きながら恐怖し、怯える妹。
「大丈夫だっ!大丈夫だっっ!!」
と、必死に妹を安心させようと、大丈夫を連呼するお父さん。
そのお父さんの腕をぎゅうぅぅっと握りしめているお母さん。
私も急に不安になる。
でも、妹が大泣きしている手前、私も泣き出したりしたら、不安しか煽らない……。
「絶対に大丈夫だからっ!絶対にっ!何かあったら、私が、守るから!」
「……………っ!!」
涙が止まる。
ようやく安心したらしい。
よかった……。
だが……。
ヒュウゥゥゥアァァァァァァァァァァ―――――
ドォォォアァァァァァァ―――――!!!
爆裂、爆発、爆音、爆風………………………
それが私の体にいっきに襲いかかる。
「ぐぁっ!!」
妹からそんな声が響く。
大丈夫か、と、妹を振り向こうと、横を見た瞬間……。
「……!!!」
私の頭を、何かがぶつかった。
あまりにも鋭く、硬い何かがぶつかったのだ。
意識がなくなっていくなかで私が見たものが、あまりにも強烈すぎたことだけが頭に残っていた―――――。
「聞こえますか!?××さん、聞こえますか!?」
私の目が覚めたのは、とある病院。
どうやらここは日本らしい。
「ん……っ」
途端に頭痛が起こる。
ただ、頭の内部から起こる頭痛じゃない。
頭を打ったときとかに起こる、間違いなく物理的な頭痛。
いや、これは頭痛とは言わないのか。
「目が覚めました!」
「………ここ、は?」
「病院ですっ。○○総合病院です!」
「……………どうして私、こんなところに?」
「…………くわしい話は後でします!とりあえず治療が先です!」
と言われ、「集中治療室」と書かれた扉をくぐった。
そこでは、止血とか、縫ったりとか、色んな治療を施された。
そして、病室に入れられたところで、詳しい話を聞かされた。
「あなたが乗っていた飛行機が、突然の事故によって墜落したんですよ。上手く不時着することができずに、飛行機が爆発を起こしていて……。あなたの頭にも何かぶつかったみたいで、大きな傷がありましたよ。幸いにも、後遺症が残るほどではなかったですが……」
と、ナースが私に淡々と語っていた。
しかし、その顔には真剣さと、なぜか哀れみの表情が見てとれたのだ。
「それで……、私の家族、は?」
それが一番気になった。
お父さんもお母さんも妹も無事だろうか。
しかし、帰ってきた言葉は、予想だにしないものだったのだ……。
「あなた以外の乗客は全員、即死でした………」
「……………!!?」
いや、何かの聞き間違いだ。
本当は聞こえていたが、絶対に聞き間違いだと思いたかった。
「……今、あなたに言うことではないかもと思いましたが……。残念ながら、変えようのない事実なんです」
「いや!いやいやいやいやいやいやいや!」
「………………」
「いやっ!いやいやいやっ!いやぁぁぁぁぁっ!!」
私は、現実を逃避した。
死んでなんかいない。
お父さんもお母さんも妹も、絶対に生きてる。
だって、私たちが治ったら、旅行に行くんだもん。
今度は私だって早起きして、旅行に行くんだもん。
「うあぁぁっ!ああっ!ああああああああああああああ――――!!」
なのに私は、病室だと言うのに、大きな声で泣いていたのである。
ナースもただひたすら、私の手を握ってくれていた。
こんなの、いやだっ!
家族がなくなるなんていやだっ!
私の大切な、家族、家族、家族、家族、家族、家族、かぞく、かぞく、かぞく、かぞく、かぞく、かぞく、カゾク、カゾク、カゾク、カゾク、カゾク、カゾク―――――
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
私は悲鳴で目が覚めた。
そこは、何やら魔法陣が輝く、少し広い台にいたのだ。
「はぁ……っ、はぁ……っ、はぁ……っ」
なんて夢だ。
だが、あれは私の夢だったのだろう。
いや、それよりもどうしてこんな夢を……。
「目が覚めたか?勇者ココ!」
「……だれっ!?」
ざっ、と睨み付けた。
そこには私を倒したはずの将軍がいたのだから……。
「っと。そんな睨み付けるなよ。俺がお前のことを殺さなかったことは、このうえなく幸運だし、お前が死ななかったことも、このうえなく幸運なんだぜ?」
たしかに、なぜか、あれだけの傷がきれいさっぱりなくなっている。
死闘を広げたはずなのにだ。
しかし、その理由はすぐに証明されることとなった。
「控えよ。我が国の偉大なる帝王様がいらっしゃる」
「て、帝王?」
そして、その姿が見えた……。




