第十三話 破動
ガチシリアスに迎えたらいいなぁ~という甘い期待。
『ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』
ドルクの叫び声、そして。
ズドォォォォォォン!!
という爆発音がした。
「な、なにっ!?うわっ!!」
私は音に驚いたのも束の間………、家全体におぞましいほどの衝撃が走った。
壁という壁は崩れ去っていき、全てのものが形をひし曲げ、壊れていく。
私の体にも相当なダメージが発生する。
衝撃なんて生ぬるい。
『破動』だった。
全てのものが塵に変わっていく。
破壊の波動だ。
「ぐっ、ぐぅぅぅぅぅっ!!」
これが魔力だと瞬時に察知した私は、急いで自分も同じように魔力を解き放った。
魔力には同じく魔力を持って制する必要がある…。
「ぐあぅぅぅぅっ!」
だが、力と同様、魔力も大きさが全てだ。
私は押されている。
手を前に突きだし、まるでビームのように魔力を放つ。
しかし、手に相手の魔力が犇々と感じ取れる。
手がしびれる。
相手の魔力に押し負けているのだ…。
「ほう。お前が勇者か。俺のこの魔力を多少ではあるが受け止めることができたか…」
「ふぎぃぃぃっ!」
あいての男がまだ余裕を見せているなか、私は女の子が普通出してはいけないような悲鳴を出していた。
「はしたない悲鳴だな。勇者よ……」
「な、なに………よぉっ。あ、あんたっ、はっ!」
「こいつは失敬した。名を名乗ろう。俺は、ボルケイロ帝国軍の将軍。ガール・グレイスだ」
「…………私は、ココ・ルメイド…」
私が勇者だと知っているということは、ある程度身分は割れているってこと。
「くくく。やはりルメイドだったか……」
「いったい何のようですか。一般人まで巻き込んで。これが将軍みたいな偉い人がやることですかっ!」
偉い人というのは、弱い身分の人を守るべきだ。
私の意見ではあるが、こんな風に他の人を踏みにじるような人は最悪の人だと思う。
「………平民など、いらぬも同然だ。俺には関係ない」
「…………!」
信じられなかった。
こんなことを平気ではける人間がこの世界に存在するなんて…。
「許せないっ!」
三人は、意識を失っている。
たぶんだが、死んではいない。
私は許せなかった。
彼らは優しかった。
彼らからすると、私は外国人で、ただの他人だ。
それなのに、三人とも優しかった。
彼らを守れなかった私も悪かったが、踏みにじるこの男は許せなかった。
「そうだ。怒ればいい。勝手に怒って俺に刃を向けろ。だが俺が負けることなどない。お前はただの平民。だが俺は兵士だ。身分の差だ。絶対に埋まらない」
「…………そんなの、関係ないっ!」
私には、今、怒りしか沸き上がらなかった。
ホーリーゴールデンブレードを手に取る。
「なるほど。確かにその剣は勇者代々に伝わる伝説の剣だな……。魔族殺しでもあり、『同族』殺しでもある………」
「……………っ!」
男を睨み付ける。
まだ男は余裕の笑みだ。
今なら一瞬で致命傷を負わせられるかも知れない…。
「たぁっ!」
「…………」
剣を大きくふりかぶり、男に斬りつけ、られなかった……。
「なっ!?」
「………くっくっく」
男の腕によって、私の剣が止められていた。
「これくらいのことができんようでは、一国の軍を将軍など務めきれんわ」
どうやらその腕には、爪形の武器が取り付けられているみたいだ。
それは相当硬い金属でできている。
「…………ぐぐっ」
「勇者と聞いたからどんな化け物女かと思っていたが、ただのチビガキだったか。パワーなどほとんどない……」
男の力は相当だった。
私は全力で剣を振るうが、全て爪で受け流されてしまう。
力でなんとか押し払おうとしてみたが、圧倒的に力不足だった…。
相手が大人の男性だからなんていうものじゃなく、圧倒的にこの男の力が上だった。
「こんなやつしか、今の勇者家系は勇者になれんのか。ルメイドも堕ちたものだ。まぁいい。楽に殺してやろう」
男の爪形の武器が黒紫に光っている。
なにか技を発動し、
「くたばれ」
「……っ!!」
一瞬。
わずか一瞬のうちに、私の全身におぞましい何かが貫いた。
何かとしか表現できない。
ただ、肉が裂かれて、血飛沫が吹いている体を見て、意識が遠退いていく様子しか分からない。
「…………ぶあっ!!」
「ほぅ。まだ立つか…。気力だけならば誰にも負けん勇者かもな…」
何とか立ち上がった。
体に走っているあまりにも衝撃的な痛みはどうしようもないが、手までしびれ、呼吸すら危ういくらいだった…。
「だが……。出血多量で死ぬのも時間の問題だな。悪いことは言わん。そのまま素直に目を閉じろ。そうするだけで楽になれるぞ?」
「………あなたに、聞きたい。………どうして、私を、狙う、の?」
途切れ途切れに言葉を繋ぐ。
どうしても聞きたかったのだ。
「………まぁいい。冥土の土産にさせてやる―――――」
そこから、男の話が始まった……。




