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第二話 記憶がない!?〈2〉

「……………ごべんな゛ざい……」



まだ涙声だったが、謝った。


おじさんがさっきから、オドオドとして私の様子をずっと見守ってくれていると気づいたため、謝るしかできなかった。



「………まぁ、何も覚えてなくたって生きていけるさ。お前が自分のことを思い出すまでは、俺がお前の親としていてやる」



「…………本当、ですか?」



「……あぁ。だから、安心しろ。な?」



おじさんは、私の近くに来て、背中を擦ってくれた。



「………ありがとう、ございます。じゃ、じゃあ、これからは、お父さんって呼ばないと、ダメですかね?」



「………無理にそんなことをしなくてもいいさ。別におじさんとでも呼んでくれ。俺の名前は、リムって言うんだ。よろしくな、ココ」



「ココ?」



「お前が名前を覚えてないなら、しばらくはこの名前を使いな」



「………ココ。ココ、ココ」



私は、名前を必死に頭にインプットさせる。


これからは、絶対に忘れないように。




「親父〜、いったいどうした?


だ、誰!?」



次には、青年が入ってきた。


緑という個性豊かな髪の毛に、同じく緑という目の彼は、どうやら息子のようだった。


しかし、私の姿を見て、少し警戒しているように見えた。



「あ……、ルイ!この子、記憶喪失らしくてよ。家もどこかわからないから、しばらく家で預かろうって思って……」



「親父!簡単に言うけど!この子の家族も探してるかも知れないじゃないか!!」



私の、家族?


しかし、私の家族の顔を思い出すことはなかった。


私には、どんな家族がいたんだっけ。


お父さんはどんな人だっけ?


お母さんはどんな人だっけ?


兄弟はいたのかな、もしかしたら姉妹だったのかな?


何人家族だったっけ?


幸せな家族だったっけ?


するとまた涙が溢れてきた。


なんで、こんな大切なことまで思い出せないんだろう?


なんで私は、こんなことまで忘れちゃったんだろう?


みんなもしかしたら本当に探しているかも知れない……。


でも、私はそれが誰だか知らない。


知らないんだ……。



「!!!」



あ、ルイ君が戸惑ってる。


そりゃそうだよ。


私は泣いてるんだから。


私は必死に涙を堪えようと頑張った。


でも、全く堪えられない。


泣いちゃダメだ、泣いちゃダメだと思うほど、涙腺は緩くなる一方だ。



「……ひぐぅっ……うぁ……」



「……………ルイ、泣かしたな」



「いやいやいや!違うよねぇっ!?」



すごい慌てて、おどおどしていった。


いや、ルイ君は悪くない。


だから、泣き止まないと。


でも、私は泣き止めないんだ。



「うぅぅ……あぁ……あぁぁぁ」



「お、お、落ち着けよ。な?何か気に障るようなこと言ったなら謝るから!な!?」



「うぅぅ……違うの………、違うの……私、記憶を忘れたから……、不安で……不安で………」



「…………ごめんな。お前の気持ち、考えてあげられなくて。じゃあ、記憶が戻す手伝いをしてやるから、な?」



「本当……?」



ルイは本当に優しい言葉をかけてくれた。


涙が消えていた。


不安が取れた。



「ありがとっ」



私は素直に、お礼を言ったのだった……。






もう夕方になっていく。


夕日がとても綺麗で、地平線まで見えたその景色に見とれていた。



「ココ〜。親父が飯食おうってよ〜!」



「…………うん、わかった」



今日から私は、この家族と共に、生きていくんだ。


元の家族のことは全く思い出せない。


でも、それはいつか思い出せるだろう。


それまでは、リムおじさんと、ルイと共に、楽しく暮らしていきたい。


おじさんの髪の毛も緑です!

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