第三話 村にて……〈2〉
勇者としての初戦闘シーンもありです(ネタバレ?)
「お姉さん、そんな落ち込まないで」
「………うぅぅ〜」
「アイツ、嫌なやつだから、みんなに嫌なこと言い回してるの。だから全然気にしなくていいよ」
男の子も女の子も、両方とも私を慰めてくれている。
その状況がまた情けなくて、涙が出る。
「ていうか、お姉さん、なんで助けようとしてくれたの?」
「………ほっとけなかったの………。でも、こんなことになってたら、意味がないんだけど…」
もう自嘲しか出てこない。
恥ずかしい。
恥ずかしすぎる。
「………ありがと。もう大丈夫。ごめんね?でもさ、そっちも、なんであんなことになってたの?」
「私、すっごく怖がりで、泣き虫だから。いっつもアイツにいじめられてるの……。で、その度にバートが助けてくれるんだ……」
バートというのは、隣にいた、小さな男の子のことだろう。
彼はなんだかんだ言って、かなりの度胸がある、肝の据わった男の子らしい。
「嫌なことされてるのに、こいつ、やめてって言わねえからなっ。守ってやってんだ!お姉さんのことも守ってあげるよ。またおばさんって言われたら!」
地味にもう忘れ去りたいあの事件を再びぶり返してくる。
「そ……そうだね、あははははは………」
夜7時を回り、宿に帰った。
そこでは、大きな食堂があり、食事をとることになった。
メニューはそこそこおいしい料理で、お腹一杯食べることができたのだった。
お風呂に入り、布団に入ると、そのまま吸い込まれるかのように眠ってしまった。
次の日、なぜか外が騒がしい。
私は起き上がると、外に出てみた。
「……どうしたんですか?」
「大変なんだ。魔物が数匹、この村に入ってきやがったんだ」
この村の住人なのだろうおじさんが、そう私に教えてくれた。
人々が避難するなか、私は、バート君を見つけたのだ。
「お姉さんっ!大変だ!」
と、私に言う。
「どうしたの?」
「ミーウが!ミーウが!魔物にっ!」
「どうしたの!?」
「家が魔物に崩されて、壁に足を挟まれて動けないんだ!」
つまり、ミーウちゃん、たぶん昨日一緒にいたあの女の子だろう。
彼女が魔物に襲われてるかも知れない、と。
「大変じゃんっ!今すぐ助けに行かないと!」
「お姉さん大丈夫なの!?」
バート君は驚いた表情で、私に言った。
そりゃそうかも知れない。
彼からみた私のイメージは恐らく、ただの泣き虫姉さんだと思う。
でも私は一応勇者なのだ。
特訓もいっぱいこなした。
剣術や体術、魔法の特訓を重ねたのだ。
「大丈夫。私は旅をしてるの。魔物くらいで、いちいち驚いてなんかいられないよ」
この世界は、魔物という、非常に強力な動物が存在する。
魔物は、非常に強いものから、弱いものまでさまざまで、私も、あまりにも強すぎるものは除いて、そこそこなら倒せるように鍛えられた。
魔物で非常に強力なものを上げていくと、ユニコーンやペガサス、ワイバーンやヒドラなど、さまざまな種類がいるらしい。
その部類までいくと、一匹で軍隊を壊滅させるほどと聞くため、そんな化け物を倒すまでとはいかなくても、そこそこなら倒せるように修行をした。
その成果を見せるときだ。
「ミーウちゃん!ミーウちゃん!」
家の壁に足を挟んでしまって動けないのなら、その辺りにいるか、もしくはもう魔物に………
「助けてっ!いやぁっ、助けてぇっ!」
女の子の悲鳴が聞こえた。
この声は聞き覚えがある。
間違いなく、ミーウちゃん本人だ。
「大丈夫!!?」
私は全速力で、彼女の声が聞こえた方に走っていった。
しかし、
「グラァァァァァァァァ!!」
と、魔物の雄叫びと共に、数匹の角を生やしたコウモリのような化け物が、私の目の前に現れた。
その遥か後ろに、彼女がいた。
怪我は足を除けば全くないようで、私は少し安心した。
このコウモリの魔物は大して強くはなさそうだ……、私は、ホーリーゴールデンブレイドを手に取り、手っ取り早く、一番近くにいた魔物を斬りつける。
ズバッ!
という肉体が切り裂かれる音が響き、魔物は倒れた。
この瞬間、私を敵と認識したのか、この魔物は一斉に私に向かって襲いかかって来たのだ。
「やっ!」
私は剣でこの魔物たちをなぎ払った。
ブワッ!
という、空気を切る音と共に、肉体が離れたコウモリたちが倒れ、私は全てを倒した。
かと思われた。
「キャアァァァァァ!!」
「!?」
わずか一匹。
一匹は私を逃れ、彼女に向かっていったのだ。
そして、その角で……………
「「やめろぉぉぉっ!!」」
私は走っていった。
なんとかコウモリを止めないと、じゃないと、あの娘が!
その時だった。
茂みから突然二人の声が響いていた。
そして二人は茂みから飛び出し、コウモリにタックルを食らわしたのだ。
コウモリは二人分のタックルを受け、吹っ飛んでいったのだ。
「君たちっ!?」
「うわぁぁんっ!怖かったよぉぉぉ!」
「ごめんっ!大丈夫だったか!?本当に!!」
と、バート君、そしてなぜか、私をおばさん扱いした、あの男の子までいるのだ。
「どうして君たち、こんなところに!?」
「お姉さんが行ったあとも、どうしても心配で、こっそり着いてったんだ。そしたらコイツもいたんだ。事情を説明して、一緒にミーウを助けようとしてたんだ」
と、二人でもなんとか助けようとしていたのだ。
でもなんにせよ、助かったからよかっ―――――
「グワァァァァァッ!!!」
さっきの攻撃が気に入らなかったのか、奇声を挙げてまたあのコウモリが襲いかかってきたのだ。
「みんな、アイツは私がやっつけるから!みんな逃げてっ!」
「わかったよ。 立てるか?ミーウ…?」
「う……うん」
そんなわけない。
足は瓦礫やらいろんなものが上に当たり、傷ついている。
現に今も、かなりの傷が流れていて、止血を早くしないと命に関わりそうだった。
「すぐ行くから、絶対に帰るのよ」
「うんっ。分かった、お姉さんっ!」
三人は、いや、ミーウちゃんはバート君におんぶをしてもらってるから、二人は、走って帰っていく。
いよいよラストは、私が倒さなくては。
「うりゃああああっ」
「ギィィィィ!」
どうやらこの魔物は、角を使って突進してくるしか出来ないらしい。
なら……、
「横からっ!」
「ギッ!?」
私はギリギリのところで魔物の攻撃を横によけ、真上から剣をふり降ろしたのだった。
「お姉さん、ありがとうっ!」
と、ミーウちゃんにお礼を言われた。
ミーウちゃんの親御さんにも、お礼をたくさん言われ、お礼の品物までくれた。
これに関しては、私も感謝だ。
「お姉さん強いんだなっ!」
と、バート君は憧れの目で見てくる。
少し恥ずかしかった。
「え、っと………、おばさんなんて言って…すみませんでした……」
と、彼は謝ってまで来てくれた。
彼は、私のことを見直してくれたようだった。
まぁなんにせよ、よかったよかった。
村の復興にはしばし時間がかかるようだ。
私もお手伝いをしたかったが、勇者としての旅もある。
勇者の旅が終わったら、この村にも来てみようかな、と思いながら、私はこの村を離れた。
修行ははぶいちゃってますので、チートじゃないです。努力です。