第一話 旅立ち
第一章スタートです!!
『みなさん。我々人間が神から、この地上を与えられ、早何千年との月日が流れました。しかし、未だに魔族は、我々の敵であることには間違いありません。新たなる魔王は、いつか再び、我々人間たちを恐怖と不幸のどん底に陥れるでしょう。愛する家族が殺され、愛する恋人が殺され、嘆き悲しんだ人々は、今まで、泣き寝入りを余儀なくされていました。魔族がこの世に存在しているかぎり、この恐怖はきっとなくならないでしょう。私は、魔界へ旅立つこととなりました、新勇者です。魔族が再び、人間たちを襲わぬよう、全力を持って、努力致します。全ては人間たちの幸せのために!!!』
ワァァァァァァァァァァァ!!!
大歓声のなか、私は、壇上で一礼し、ゆっくりと降りていった―――――
「勇者の儀式を始めたいと思います……。勇者、ココ・ルメイド」
「はい」
私は、歴代の勇者がつけていた、言わば勇者のユニフォームのようなものを着ていた。
聖なる衣によって作られ、神のご加護が備わっているとされる、勇者の服。
新勇者が現れると共に、歴代と同じ紋章をつけた服を作られる。
私はなんと歴代初の女性勇者であり、なんと正式な勇者の血筋ではないのだが、この勇者の服を身に纏う。
動きやすいなかにも、温度調整の魔法がかけられ、常に私の体は適温に保たれるようになっているのだ。
服は青に、赤い紋章。
勇者の家紋のようなものをつけられた、薄い青色の服を着ている。
そして、手から放たれる魔法力を増幅させる手袋。
白いその手袋は、私の手にフィットするように作られている、オーダーメイドだ。
そして、ズボン、ブーツとなっている。
ブーツは、疲労回復の魔法がかけられ、一日歩いても疲れはしない。
素肌を見せすぎると、温度調整が効かなくなるし、ご加護もうすくなるため、ズボンをはいているが、これは特にこれといった特徴もない、スウェットとジーンズの中間のような生地でできた、不思議な服だった。
そして、次が一番のメインとなる、私の装備だ……。
「勇者となるあなたには、歴代勇者の魂と共に、幾度となく魔王に立ち向かった伝説の剣、『ホーリーゴールデンブレイド』を与えます」
ホーリーゴールデンブレイド。
そのまま直訳で、聖なる黄金の剣だ。
剣を鞘から抜き取ると、黄金に輝く、刀身がその姿を現す。
金でありながら、オリハルコンのように固く、強靭な剣となる、特殊な魔法がかけられている。
すばらしい手の込んだ一作である。
「ありがとうございます」
「時は満ちました。勇者よ、人間たちに光を与えるため、幸福を与えるため、恐ろしい魔獣、魔族を倒していくのです!」
「はっ!」
一礼し、私は王座の間を去る。
ここに私が初めて来て以来、早半年の時が流れた。
勇者となるため、剣技の修行、魔法の修行など、さまざまなものを重ね、勇者としての技能を磨いた。
リムおじさん、ルイは、牧場での暮らしをしている。
私のことを、何度も心配してくれたが、これは私がやると決意したことなのだ。
あとは私に任せてと。
王国が彼らの生活に干渉しないように釘は刺した。
私は剣術を師匠も上回るスピードでマスターしたのだ…。
「……………それでは、行って参ります」
宮殿から、私は足を踏み出した。
新勇者の宣言を発し、まだ数時間しか経っていない。
人々は未だに先程の宣言を出した広場に結集していている。
熱気で溢れかえり、勇者コールが響く。
今、「私が勇者です」なんて言おうものなら、たぶんこの人混みで押し潰されるだろう。
私はそこを潜り抜け、なんとかこの広場をバレずに抜け出した。
そして、通りを抜け、国の関所兼門を潜る。
私は勇者という、身分証明まで出来るため、簡単に門を潜り抜けることができた。
さぁ、私はこれから、勇者として旅をしていく。
そこには、たくさんの困難が待ち受けるだろう。
でも、私は負けない。
だって私には、おじさんたちと平和に暮らすという、目標があるのだから。