第十話 将軍
「………!?」
光の竜は、一瞬にして霧散。
残ったのは、なにもなかった。
「天魔法だと………。そんなもの、いったいどこで手に入れたんだ」
「我が王国の資料室のなかにある、魔法の書にて封印されていた古代魔法だ」
つまり、古来の遺産を開けてしまったということだ。
俺は、冷や汗が流れているのを感じていた。
天魔法がどんなものか理解できない今、攻撃なんてできないんだ。
魔法は現代、炎、水、雷、土、風、草、影、毒、闇、光、時、空の属性がある。
人間一人には、かならずどれか一つの属性の魔方陣が体に刻まれ、代々遺伝により受け継がれている。
しかし、魔法文明が進むなかで、滅びてしまった魔法属性もある。
その理由は、あまりにも膨大な力であるために、使える一族共々消えてしまったり、欠陥魔法であったりしたためである。
前者の一つが天魔法、天空の力を操る魔法である。
また、余談であるが、後者に当たるのが、気魔法と呼ばれるものだ。
天空の力は強大で、あまりにも恐ろしい。
目の前の人間はそれが武器となっているのだ。
「………………こりゃ、どうしようもない、な。分かった。従おう」
「さすが元勇者!自らの力量は理解していらっしゃるようだな」
「親父!良いのかよ」
「…………あいつの力は確かにお墨付きだ。古代魔法ではあるが、それでも相当強い……。情けないが、負けだよ…」
「潔いのはいいことさ。さて、我が王国、レオードン王国へと来てもらおうか!」
私たちは、大した支度もさせてもらえず、連れていかれた。
特に遠くもない国だからとは言っていたが、着替えくらいは持っていきたかった。
さて、しばらく馬車に揺られていたわけだが、リムおじさんのことが、私は気になって仕方がなかった。
私のこと、怒ってるかな?
簡単に人質にとられたりしたし。
それにやっぱり、私のことを避けようと思って―――――
「ココ!すまんっ!」
「!?」
いきなりおじさんが謝って来た。
頭を下げて、謝っていた。
「…………ごめんな、ココ。怖い思いしただろ?お前は、俺たちにとって大切な家族だ。だから、できるかぎり危険なことには首を突っ込ませたくなかったんだ。ココを傷つけるだなんて、これっぽっちも思ってないんだ」
と、おじさんは私を見ながら、真剣な表情で語りかけてきてくれた。
私は、おじさんの言葉に、冷たくなりそうだった心が暖かくなるのを感じたのだった。
ついでに目からは、大量の涙も流れてきていた。
拭いても拭いても溢れてくるので、どうしようもなかった。
私はおじさんの胸にうずくまり、
「…………よかった……。よかったよぅ」
と、涙声で呟くくらいしかできなかったのだった―――――。
王国が見えてきた。
ひたすら続く長い森を抜けると、川を挟み、向こう側に大きな城壁を発見した。
私が行ったことのあるあの街よりも厳重な壁になっていて、大きな門や大砲などもあり、完全な都市国家であった。
「ここからは、将軍マユーガさまによるご案内となる」
「……………………マユーガ、だと?」
おじさんは、将軍と呼ばれたその人を知っているようだった。
しばらく門の手前で待っていると、門から人が出てきた。
「ようこそリム・ルメイド殿とその家族たち!私がこの国の将軍を勤めている、マユーガ・バタフルと申します。以後お見知りおきを。まぁ、リム殿はよくご存じかと思いますが?」
と、一人のイケメン男性が出てきた。
しかし、おじさんの様子がおかしい。
「……マユーガ。まさか、お前の差し金じゃないだろうな?だとしたら、分かるよな?」
おじさんから殺気があふれでてる。
よほどの過去があるのかも知れない。
でも私はあまり過去を気にしたりはしないので、そこまで追求はしない。
「さっそくですが、宮殿へ参ります」
「やっぱり会わないとダメか…」
おじさんは国王に会いたくはないらしい。
理由はともあれ、今さら帰るなんてこともできないだろう。
私たちは、あの、石造りの、豪華な宮殿へと向かっていった。