最終話
ロサンゼルスの戦いは苛烈さを増していった。
ピラニアシャークの群れがビームを乱射し、デストロイモルモットが肉弾戦を繰り広げ、ゾンビが臭い。
「キェェェェェェェェェェイェェェェェェッ!!」
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
「ゴガアァァァァァッ!!」
もはや人の力など及びもしない魔境である。既にこの怪物たちの周囲は焼け野原と化し、人の影は存在しない。
しかしこれは、人間側が加減をする必要がないという事でもある。
ロサンゼルス上空高度9000m地点。
怪物たちの頭上ではアメリカ全土から集結した爆撃機、B-52、B-1B ランサー、B-2、戦場において敵に死をもたらす翼持つ天使達、それが下にいる怪物たちを睨んでいる。
「爆撃開始!! 奴等を地獄に送ってやれ!」
「死んじまえ!! クソッタレの化け物共!!」
「何もそこまで口汚く罵らなくてもいいだろ!」
爆撃機の腹から、まるで雨のように爆弾が投下されていく。一発一発がコンクリート壁を吹き飛ばし、地面に巨大な穴を開ける代物である。
「3、2、1、着弾!!」
空から降ってきた爆弾の雨は3匹の化け物に命中し、傷を負わせていく。
「キェェェェェェェェェェイェェェェェェッ!!」
最初に察知したのは、ピラニアシャークだ。咆哮をあげながら空を見上げたかと思うと、口から青い光を放とうとする。
しかし、人間側もたったこれだけで仕留められるとは思っていなかった。
「キェッ!?」
青い光を吐きだそうとした瞬間、ピラニアシャークの顎に何かが直撃、下顎を吹き飛ばした。
直撃したのは砲弾だ。そして砲弾を放ったのはロサンゼルスの近郊にいる陸軍……
「空軍ばかりにいい顔をさせてやるか! ここは地上! 俺達の領分だ! タスクフォース! エンゲージ!!」
大地を埋め尽くすかの如くずらりと並ぶはⅯ777、155mm榴弾砲、そして米軍が誇る戦車Ⅿ1エイブラムスだ。
「一斉砲火! 弾はいくらでもから全部くれてやれ!!」
砲煙を上げながら次々と発射される砲弾の嵐。しかし足りない。弾数ではなく弾の威力が足りていないのだ。
「化け物3匹! 損傷はあるもののいまだ健在!」
「効かないなら効くまで撃てばいいだろ! 撃て!」
弾の威力が足りない。
威力が足りないならば口径を上げればよい。海上にて巨大な鉄の船がロサンゼルスへ砲を向けていた。
第二次大戦の遺物、戦艦ミズーリである。
「痛いのをブッ食らわせてやれ!」
「撃てェッ!!」
巨大なその砲から放たれる一撃はまさに神の一撃、一発一発がピラニアシャークたちの硬い外皮を破壊し、モルモットの皮膚を貫く。そしてゾンビは砕け散る。
そしてここに陸海空全ての戦力が結集した。
「キェェェェェェェェェェイェェェェェェッ!?」
「ア゛ア゛ア゛ッ!?」
「ゴガアァァッ!! ゴェアアッ!!」
降りやまぬ砲弾と爆弾の雨は徐々に徐々に怪物たちを小さくしていった。
「まだまだまだまだまだまだ!」
砲身が破裂する物も現れだすが、それでも攻撃の手は緩めることは無い。空から、海から、陸から。
アメリカに存在するありとあらゆる口径、威力の砲弾と爆弾がロサンゼルスに降り注ぐ。ノルマンディーでも、イラクでも、アフガンでもここまでの光景は見られまい。
「キイェェッ……エッ……」
「ア゛ッ……」
「ゴガア」
怪物たちの咆哮は、やがて砲声にかき消され消えていった。
「みなよミリー。化け物の最期だ」
ヘリに乗ったマイケル達はロサンゼルスへの攻撃が止まったのを見て、微笑みながらミリーに話しかけた。
「やっと終わったのね……長い夜だったわ」
待ちに待った朝日が昇るのを見ながらヘリの中では軍人たちが無線を介してしゃべり続けている。だがそれもいずれ終わるだろう。
「家に帰ろう。ママのスロッピージョーが待ってる」
「そうね」
顔を見合わせて笑い合うマイケルとミリー。
ここにロサンゼルスの戦いは終結した。
「痛っ……」
ミリーが思わず腕を押さえた。
「どうしたの?」
「……ううん何でもないわ」
ミリーは腕を隠しながらマイケルに微笑みかける。彼女の腕には、ゾンビによる噛み傷がはっきりと刻まれていた。
そしてそれは、何かの始まりを告げるかのように脈動していた。




