第2話
「おいしっかりしろよヘンリー!」
「駄目、電話が繋がらないわ。どうなってるのよ。人工衛星が核攻撃にでも遭った?」
マイケルの運転でヘンリーとエマ、他の仲間を乗せて車を走らせる。何故か分からないが電話が通じない。救急車も警察も何も呼べない状況であり、出血しているヘンリーのことを考えればこうするしかなかった。
「ヘンリーしっかりしてくれ! もうすぐ家に帰れる。ママのマッケンチーズだって食べられるんだ!」
「……俺が食いたいのは美人だ」
マイケルの呼び掛けにニヤリと笑うヘンリー。
ナビによればもうすぐ病院までたどり着ける、はずだったのだが……
「なんで!? なんで止めるの!?」
「ケツの穴にラップトップでも詰まったのか!? 早く走らせろよ!」
車の中で同級生達が騒ぐ、だがマイケルだってそうできるならしてやりたい。
「前を見なよ……そりゃ電話だって通じない訳だ」
「ああ!? え? なにこれ」
怒り狂った同級生がフロントガラス越しに前を見ると、そこにあったのは元の煌びやかな街の景色ではなかった。
「戦争か? それともここはパリか?」
車に乗る同級生たちが見たのは、暗い夜闇を明るく照らす炎と徘徊する人間の姿だ。問題なのは燃やしてるのは薪ではなく家だという点。道路には放置された車両があり炎上している。
そして徘徊しているのはフラフラとあてもなく動き続ける人間達。奇妙なことに誰も炎を恐れているような様子がない。
「降りよう。ここから先は車じゃいけそうにない」
「仕方ない。ヘンリー、肩かしてやる。これが終わったらクラブ代奢ってくれ」
「店ごと買い取ってやるよ。ついでに裸の女とローション代わりの蜂蜜もな」
同級生に肩を貸してもらい、マイケル達は車の外に出て歩き出した。
「なんでこんな状況なのに落ち着いてやがるんだ」
「すいません! 助けてくれませんか? 友達……いや彼氏が怪我しちゃって……」
「「「あ゛?」」」
女の発した言葉にドスの利いた声を出す他の女達。
しかし次の瞬間にはそんなことどうでもよくなる。
「あ。手を貸してくれるんですか? ありがとうござギャアアアアアアアアアアッ!!」
徘徊する住民に近づいた瞬間、突然住民が女の首筋に噛みついたのだ。
「いだいッ! 痛いいいいい! 離せ! 離せよ!! クソが!」
女は住民を引きはがそうと暴れたがまったくもって無意味だった。他の同級生たちも止めに入るが住民は蹴られようが殴られようがびくともしない。
「がぁあああああああッ!」
断末魔の悲鳴、首筋に噛みついていた住民がついに女の首を噛みちぎってしまった。
「このイカレ野郎が! 死にやがれ!」
近くに落ちていたコンクリートブロックで思いっきり頭を殴りつけるが、住民は倒れない。
「なんなんだよコイツ!?」
ゆっくりと、住民がマイケル達の方に向き直る。炎に照らされて顔が良く見える。
血にまみれ、半分腐敗したように肌が劣化したそれはもはや生きている人間のそれではなかった。それは創作で語られる者。動く死人。『ゾンビ』であった。
「かゆ……うま……」
何かよくわからない、言葉とも何とも言えない声を発した後、ゾンビが今度はマイケル達に視線を向ける。
「おい、来るな……来るなよ!」
「おい囲まれてるぞ!」
周りを見渡せば、暗闇から続々とゾンビたちがマイケル達に向かってゆっくりと歩いてきていたのだ。
「逃げるぞ! ヘンリー掴まれ!」
「駄目だ車のほうはもう囲まれてる!」
どこかに逃げ道は無いものかとマイケルは視線を向けると、ある場所が目に入る。
「皆! あそこにガンショップがある! ひとまずあそこに逃げよう!」
「サメの頭したピラニアにゾンビに、なんなんだよここは!」
マイケルの先導で、同級生たちは目の前に見える銃砲店へと走った。
一方その頃、ホワイトハウスでは……
「大統領! 各地で得体のしれない生物たちの活動が報告されています! サメの頭をしたピラニア、『ピラニアシャーク』にゾンビの姿が!」
執務室では大統領を前に、各地から送られてきた報告書を読み上げ報告する部下たち。大統領は信じがたい報告の数々に頭を痛めていた。
「ゾンビだのなんだの訳が分からんが……国民に被害が出ている以上見過ごせん。州兵を派遣し、事態の鎮圧を図れ。住民の避難と救助を最優先として──」
大統領が続けようとした瞬間、部屋の中に入ってくる男が1人。
「大統領大変です! カリフォルニアでとてつもなく大きなモルモットが暴れています!」




