なぞなぞ『きらきら』
毎日汚い言葉を使うまーくん。そんなあなたに、母ちゃんは、なぞなぞを用意しました。
【う】から始まって【こ】で終わる、きらきらした物は、な〜んだ?
この答えが分かったら、夕ご飯にしましょう。
by母ちゃん
「わかったぁ! うんk……」
まーくんの口を母ちゃんの手が塞ぎます。元気で健康なまーくんはすくすく育って言葉も覚えてきました。しかし、口癖が『う◉こ』になってしまったのです。
(ありのままに育てとか、経験を積みながら覚えるとか言うけれど、きっとそれじゃ、まーくんが恥をかいてしまう)
まーくんの母ちゃんは、そう思ったからなぞなぞを出しました。答えは【(魚の)うろこ】です。
(たった一文字違うだけで見える世界が変わるんだけど、わかってくれるかしら)
母ちゃんが悩んでいると、封印されし口が言葉を発したそうにウズウズしていました。手元を緩めます。
「なぞなぞの答え、わかった?」
「ううーんこ♪ うう〜んこぉ♪」
「歌うなー!」
大変な時に父ちゃんは釣りに出かけています。
(なぞなぞの答えを釣りに行くって言ってたけど、完全に逃げたんだわ!)
「ううーんこっこーうんこっこ〜♪」
「こりゃ、歌うなと言っとるだろ!」
「けけけけ!」
笑いながら、ピューと逃走するまーくん。母ちゃんは彼を追いかけ回しながら体力を消耗していました。
そんな時に父ちゃんが、
「帰ったぞ〜♪ ブリ釣れた! ブリ!」
と、ご機嫌で帰ってきたものだから、母ちゃんはブチギレました。その形相は阿修羅のごとく、言葉は槍のごとく父ちゃんに突き刺さりました。
「す……まん、ブリ……」
「流しに置いとけ」
「はい」
母ちゃんがブリをさばく間、父ちゃんとまーくんは、荒い包丁の音を聞きながら怯えていました。
(母ちゃん、ぶりぶり捌いてプンプンだね)
(便秘だからかな?)
──ダンっ!
「……静かになぞなぞの答えを考えときなさい」
母ちゃんの圧で2人は黙り込んでしまいました。「はい」と、揃っていう姿はハムスターのよう。
◇
「できた、ブリ大根」
「わー! ぶりぶり大根〜!」
体力のなくなっていた母ちゃんは突っ込むことを止めていました。ぱくぱく無くなっていくブリ大根。それを真顔で眺めていると……、
「いでで!」
まーくんの口に何か違和感があったようです。彼は口に手を突っ込み、異物を取り出してはメンチを切っていました。
母ちゃんは少し嬉しそうに、
「乳歯、抜けた!?」
と、まーくんが口から取り出したものを確認します。それは、紛うことなき【(魚の)うろこ】でした。
「なぁに、このきらきら」
食事を邪魔した鱗へのイラつきの目を隠せないまーくん。これは誤って飲み込んでいたら大変です。
母ちゃんは申し訳なさそうに、
「ごめんね。それは鱗って言って魚の食べられない部分なの!」
そう謝りました。
まーくんは、母ちゃんと鱗を見返したあと、もう一度口を開きます。今度は不思議そうな顔をしていました。
「なんで食べられないのが魚はあるの?」
「え、うーん……どうして……だろ?」
「魚はケーキじゃない」
「そうよね、ケーキじゃないわよね!」
「魚は……ケーキじゃない」
まーくんは、哲学を始めてしまいました。先に食事を終えた父ちゃんが、食器を持ちながら、
「俺の時代は、魚の鱗を持ってる男の子はモテてたなぁ」
と言いました。
「ホント!? 父ちゃん!」
「んー、ホントホント」
真に受けたまーくんは、魚の鱗を見つめながら歌います。
「へへ、うーろこっこ、うーろこ〜♪」
まーくんの陽気な姿を見ていた母ちゃんは溜息混じりにブリ大根を食べていました。
(ま、口癖が変わってくれるなら何でもいいわ)
◇
後に。まーくんが集めた魚の鱗をめぐって、園児たちの仁義なき戦いが始まることを誰が予想したであろうか。
しかし、それを語るには尺が少なすぎたようだ。
あとの物語は、ご想像にお任せする。
続かない(おしまい)
最後まで読んでくれてありがとうございます。
少しでも笑っていただけたら幸いです。




