表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『義実家で家政婦扱いされる私に、冷徹な義兄だけが「逃げるための給料」を渡してくれた~夫を捨てて幸せになります~』  作者: 品川太朗


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/10

第10話「新しい日常、これからの未来」

ついに最終話です。

苦難を乗り越えたミユとリョウ。

二人が掴んだ、穏やかで温かい「本当の幸せ」をご覧ください。

 裁判から三ヶ月。

 季節は巡り、秋風が心地よい季節になっていた。


 私は今、リョウさんの会社で正社員として働いている。

 経理と総務を兼任し、あの時必死に覚えた簿記やパソコンスキルをフル活用する毎日だ。


「相沢さん、この決算書の処理、完璧ですね。助かります」


「ありがとう。次はこちらの資料をお願いできるかな?」


 社内の人たちは皆、私を一人の「仕事仲間」として尊重してくれる。


 「お前には無理だ」「邪魔だ」と否定され続けた日々が、まるで遠い昔のことのようだ。

 私は今、確かに自分の足で立ち、社会の中で呼吸をしている。


 十七時。

 定時を過ぎ、社員たちが三々五々と帰宅していく中、私は社長室のドアをノックした。


「社長、少しよろしいですか?」


「……ああ、入れ」


 中に入ると、リョウさんがデスクに突っ伏していた。

 ここ数日、新しいプロジェクトの立ち上げで激務が続いていたのだ。


 完璧超人に見える彼だが、仕事に没頭すると衣食住がおろそかになるという、意外な弱点があった。


「リョウさん、ちゃんとお昼食べました?」


「……忘れてた。ゼリー飲料は飲んだ」


「それ、食事じゃありませんよ」


 私は呆れながら近づくと、彼のデスクの端に置かれたコンビニ弁当の空き容器(昨日のものだ)を片付けた。


 かつての家での「強制労働」とは違う。

 これは私がやりたくてやっていることだ。だって、放っておくとこの人は本当に死んでしまいそうだから。


「今日はもう上がりましょう。夕飯、私が作りますから」


「……いいのか? 疲れているのに」


「リョウさんの顔色が悪い方が心配です。それに、私のマンションのキッチン、広くて使いやすいので料理したくてうずうずしてるんです」


 そう言うと、リョウさんはようやく顔を上げ、少し照れくさそうに笑った。


「……いつもすまない。甘えてばかりだな」


「お互い様です。リョウさんのおかげで、私はここにいるんですから」


 二人は並んでオフィスを出る。


 夕焼けに染まる街を歩きながら、スーパーで食材を選ぶ。

 「今日はハンバーグがいい」「人参は小さくしてくれ」なんて、リョウさんが子供のような注文をつける。

 そんな些細なやり取りが、たまらなく愛おしい。


 私のマンションで夕食を終え、コーヒーを飲んで一息ついた時だった。

 リョウさんがふと、真剣な眼差しで私を見た。


「ミユ」


「はい?」


「……このマンションの契約更新、来月だよな」


「あ、そうですね。早いものです」


「更新、しなくていいぞ」


 え、とカップを持つ手が止まる。

 まさか、追い出される?

 一瞬不安になった私を見て、リョウさんは慌てて首を振った。


「違う、そうじゃない。……その」


 彼は視線を泳がせ、耳まで真っ赤にして言った。


「俺の家も広いし、部屋も余ってる。……それに、俺の家事能力が絶望的なのは知っての通りだ」


「ふふ、そうですね」


「だから、その……一緒に住んだ方が、効率的というか、合理的というか……」


 しどろもどろな言い訳。

 でも、その瞳は熱を帯びていて、私の答えを待っている。


 私はコーヒーカップを置き、彼に向き直った。


 かつて「牢獄」だと思っていた結婚生活。

 でも、この人となら。

 対等で、お互いを思いやれるこの人となら、きっと違う景色が見られるはずだ。


「リョウさん」


「……なんだ」


「それ、家政婦として雇うつもりですか?」


 私が悪戯っぽく尋ねると、彼は強く首を横に振った。


「まさか。……パートナーとしてだ。一生、俺のそばにいてほしい」


 その言葉を聞いた瞬間、胸いっぱいに温かいものが広がった。

 私は満面の笑みで答える。


「……はい。家事能力ゼロの社長さんのお世話、私が引き受けます」


 リョウさんが安堵の息を吐き、私をそっと抱き寄せた。

 彼の腕の中は、どんな場所よりも温かくて、安心できる場所だった。


 窓の外には、都会の夜景が広がっている。

 私の未来はもう、曖昧じゃない。


 自分の足で歩き、愛する人と共に築いていく。

 そんな、明るく輝く日々が待っているのだ。


 私はリョウさんの背中に腕を回し、小さく呟いた。


「私、今、すごく幸せです」


 そう。

 あの日の涙も、苦しみも、すべてはこの幸せな結末へのプロローグだったのかもしれない。

 長い長い夜が明けて、私たちの新しい朝が、今ここから始まる――。


(完)

最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!


虐げられていたミユが、リョウの手を借りて幸せになれて本当によかったです。

不器用なリョウの溺愛も、これから加速していくことでしょう。


もし、この物語を「面白かった」「スカッとした」「二人が幸せになれてよかった!」と思っていただけましたら、


ページ下部にある【☆☆☆☆☆】をタップして、

評価をいただけると、作者として飛び上がるほど嬉しいです!

(☆5ついただけると、執筆の励みになります……!)


また、ブックマーク登録もしていただけると幸いです。


皆様の応援が、次の作品を書く力になります。

改めて、最後までお付き合いいただきありがとうございました!


━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

【著者の別作品のご案内】

本作のような「逆転劇」「スカッと」するお話が好きな方に、おすすめの完結済み短編です!


■今回の話と同じ【モラハラ夫へのざまぁ】が読みたい方へ


「お前は役立たずのクズだ」とモラハラ夫に罵られていた私、決意の離婚。~私がいなければ、あなたはプレゼン資料も作れない無能でしたね?~

https://ncode.syosetu.com/n1678lj/


『俺の腕なら事故らないから保険は解約しろ』と言って生活費を奪う夫。言いつけ通り更新をやめて3年後、雨の日に高級外車に突っ込んだ夫に事実を告げた結果

https://ncode.syosetu.com/n2572ll/


『(長男)が専業主夫になりました。~「稼ぎも家事も妻以下」とウチの最強実母に論破された男の末路~』

https://ncode.syosetu.com/n3568lj/


■【非常識な義実家・親族】を成敗したい方へ


カスハラ義父の尻拭いはもう限界です。 ~店員に土下座強要する義父を、店内の客全員による「公開挙手」で断罪し、ついでに事なかれ主義の夫も再教育しました~

https://ncode.syosetu.com/n1892lm/


『夫が亡くなり義姉一家に家を乗っ取られかけましたが、娘と結託して「偽造権利書」の罠を張ったら、全員逮捕されて平穏が戻ってきました』

https://ncode.syosetu.com/n9971lm/


結婚の挨拶で義父に3万5千円の幻の酒をゴミ箱に捨てられた。「父に謝れ」と言う婚約者に、SEの僕は「この案件はバグだらけだ」と判断し、即座に損切り(婚約破棄)を実行する。

https://ncode.syosetu.com/n2237ln/


「高卒のくせに」と私を見下したエリート兄が、遺産を食いつぶしてゴミ屋敷の住人に転落した結果

https://ncode.syosetu.com/n9784lk/


『「ガラクタ」と笑われた820万円 ~アンティークドールを破壊した従姉妹が、全てを失うまで~』

https://ncode.syosetu.com/n9994lk/


■【パワハラ・モンスター隣人・教師】を論破・撃退したい方へ


『「アレルギーなんて甘えだ」と娘にパンを強要した新担任。アナフィラキシーで搬送された病院で、医師に「それは殺人未遂です」と完全論破され、破滅するまで』

https://ncode.syosetu.com/n9684lj/


「『たかが忌引きだろ』と父の死を侮辱したパワハラ上司が、半年後に自らの行いで家族を失い再起不能になった件」

https://ncode.syosetu.com/n6079lj/


不法駐車には「物理封鎖」と「法的罠」を。~出戻り令嬢、ナメてかかってきた隣人夫婦に慰謝料代わりで『実家の負動産』を高値で売りつける~

https://ncode.syosetu.com/n1663lm/


■ちょっと変わった【恋愛・勘違い】のお話

「打算結婚の誤算。~俺は『親の財産目当て』という嘘を、死ぬまで突き通すことにした~」

https://ncode.syosetu.com/n3315ll/

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

転生したら最強能力が『見た男を狂わせる呪い』でした〜助けた騎士も優しかった貴族も、全員が私を監禁しようとしてくる〜

https://ncode.syosetu.com/n5268ln/

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
幸せになれて良かった〜(*≧艸≦)出来れば義母や元夫のその後とかも読みたかったです。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ