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星屑の少女はリングに立つ ―才能ゼロから始める女子プロレスラー・星屑さやか―  作者: バックドロップ
第4章 PWSビッグマッチ《東京国技館編》 ――星屑たちはリングの外で何を見るか
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第25話 国技館へ向けて――それぞれの持ち場

国技館ビッグマッチまで、あと少し。

新人四人は「試合に出ない側」の立場で、それぞれ重要な役目を任されます。

リングの外にも、本気の“戦いの場所”がある回です。

 PWS本部道場の空気が、いつもより少しだけ重かった。


 天井の蛍光灯、木の床、ロープの張られたリング。

 見慣れた風景なのに、胸の奥がそわそわする。


(……国技館まで、あと三日)


 星屑さやかは、となりに並ぶ三人の横顔をちらりと見た。


 星緋いぶきは、いつも通り背筋を伸ばして前だけを見据えている。

 ノエル・シエルは、指先をぎゅっと握りしめて、少しだけ肩が揺れていた。

 ティアラ☆キャンディ――姫乃らんは、不安を隠すみたいに笑顔を作っている。


 その前に立つのは、PWS社長・天城星弥。

 隣には白銀リョウ、リングドクターの早乙女真理、それからリングアナの煌上すばるの姿もあった。


「――よし、全員そろってるな」


 星弥が一度、四人の新人をぐるりと見渡す。


「改めて伝えておきたい。国技館大会《STAR☆RISING》は、PWSにとっても、お前たちにとっても特別な一日だ」


 その声は穏やかで、それでいて甘さがなかった。


「お前たちは今回は“選手として”リングには上がらない。けど……それは“ただの見学”って意味じゃない」


 言って、指を一本立てる。


「さやか、いぶき。お前たちはリングサイド補助。

 ノエルはBloody Eclipseのセコンド見習い。

 らんはStella☆Glareの裏方と入場サポート。

 ――どれも、本番の試合と同じくらい責任の重い仕事だ」


 さやかは、ごくりとつばを飲み込んだ。


 星弥の視線が、まっすぐぶつかってくる。


「リング周りのミス一つで、選手が怪我をすることもある。

 セコンドの判断一つで、レスラーの選手生命を左右することもある。

 裏方の段取りミスが、試合の流れを壊すことだってある」


 一拍おいて、柔らかく微笑む。


「怖がれとは言わない。……けど、『自分は関係ない』なんて思わないでくれ。

 お前たちは、“あの日のリング”を一緒に作る仲間なんだから」


 その言葉に、胸の奥がじんわりと熱くなった。


「実務の研修はそれぞれの担当がみっちりやってくれる。白銀さん」


「……ああ」


 白銀リョウが一歩前に出る。

 鋭い視線が、さやかといぶきを射抜いた。


「星屑、星緋。リングサイドに立つということは、試合中ずっと“危険地帯のすぐそば”にいるということだ」


「き、危険地帯……」


「リングの中だけじゃない。場外、ポスト、鉄柵。どこを取っても、ミス一つで巻き込まれる」


 淡々とした口調なのに、その一言一言が重い。


「だからこそ、動きのルールと“立つべき場所”を叩き込む。いいな?」


「は、はいっ!」


「了解しました」


 さやかといぶきが同時に返事をする。


「医療面の補助は、こちらでフォローします」


 白衣姿の早乙女真理が静かに続けた。


「怪我人が出た時、救急バッグや氷をどこに置いておくか。

 どのタイミングでリングに上がるか。

 あなたたちが混乱しないように、事前に動線を決めておきましょう」


 優しいけれど容赦のない“仕事の声”。

 さやかの背筋が自然と伸びる。


「セコンド見習いは、あたしたちの方でね」


 声を上げたのは、黒沼アサギだった。

 いつの間にか、道場の隅からBloody Eclipseの面々がこちらを見ている。


 紫苑イオラ、鉄輪サツキ、黒霧エナ、氷見レナ。

 そして、その少し後ろで身を縮めるように立つノエル。


「ノエル。怖がるのはいいけど、逃げるのはナシね?」


「……こ、怖いのは……なくならないです……。でも、逃げません」


 ノエルが小さく、それでもはっきりと返す。

 エナがふっと口角を吊り上げた。


「偉いじゃねえか。怖いって言える奴は、簡単には折れねえよ」


「セコンドの立ち位置、タオルの扱い、選手との距離感。全部教えてやる」


 サツキが冷静に付け加える。


「お前が怪我したら意味がないからな。逃げ足も、セコンドの仕事だ」


「……はい!」


「Stella側は、私たちが担当するわ」


 すばるが、ぱっと手を挙げた。隣にはユリア、白雪リラ、黒羽ミコト。


「らんちゃんには、入場の段取りからマイクのフォロー、

 ティアラや小物の管理、トラブル時の動き方まで、全部覚えてもらうからね」


「も、もう覚悟は出来てます……!」


 らんが、ぎゅっと拳を握って答える。

 ユリアが少しだけ目を細めた。


「裏方を甘く見ていると、ステージもリングも壊れるわ。

 ティアラ、これは“あなたの試合”でもあるの」


「……はい!」


 四人の返事が重なるのを聞き、星弥が満足げに頷いた。


「よし。それぞれの担当について行ってくれ。今日は一日、“国技館本番仕様”で叩き込む。全員、覚悟はいいな?」


「はいっ!」


◇ ◇ ◇


 リングに、白銀リョウが上がる。

 さやかといぶきはエプロンの外側、リングサイドに立っていた。


「まずは、基本中の基本からだ。――ロープチェック」


 白銀がトップロープをぐっと押し、張り具合を確かめる。


「星屑、試合前、必ずこうしてロープを一周分押して回る。

 緩み、テーピングの浮き、汗や水の滑り。全部、目と手で確認しろ」


「は、はい!」


 さやかも見よう見まねで、トップロープに手を添えた。

 思っていたより硬く、押し戻す力が強い。


(……こんなロープに、いつもあんな勢いで飛び乗ってるんだ……)


 普段は驚きと憧れで見ていた動きが、途端に違って見える。


「星緋」


「はい」


「マットの上を一周見てこい。異物、段差、ロゴマットのめくれ。

 何か一つでもあったら、試合前に直させるんだ」


「了解しました」


 いぶきは淡々と答え、すぐに軽いフットワークでリングを一周していく。

 足裏の感覚を確かめるように、視線は常に足元とコーナー、ロープの間を往復していた。


「氷、タオル、水。置き場所はここだ」


 リング下、ポストそばのスペースを白銀が指し示す。


「ここから動かすな。……いいか、試合中に焦ったやつほど、

 自分の足元をめちゃくちゃにしていく。

 お前たちは、“散らかった現場”を作るな」


 早乙女真理が、その横に救急バッグを置く。


「氷嚢、テーピング、ハサミはここ。

 選手を乗せるストレッチャーの位置も、必ず覚えておいてくださいね」


「ストレッチャー……」


 さやかの喉が、きゅっと鳴った。


 試合の映像で見たことはある。

 でも、それはどこか“画面の向こう側”の出来事のようで――。


(でも、今回の国技館は、私たちがそこにいるんだ)


 胸の奥で、何かがきゅっと締め付けられる。


「星屑」


「は、はい!」


「今の配置を覚えたなら、“試合中の動き”だ。俺がロープに走る。

 お前はリングサイドから、その動きに被らない位置に下がれ」


「あっ、はい!」


 白銀がロープに向かって走り出した。

 さやかは慌ててポスト側に避けようと――。


「そこはダメだ。そこにいると――」


 ドンッ、と白銀の身体がロープに当たる。

 さやかの目の前、ほんの数十センチのところまでロープがしなった。


「う、うわっ……!」


「……今の距離だと、実戦ではお前はロープに巻き込まれる。

 選手の足が当たるかもしれない。分かったか?」


「す、すみません……!」


 冷や汗が背中を伝う。

 白銀はため息をつきながらも、声を荒げることはなかった。


「謝るのは本番で失敗した時で十分だ。今は何度でも間違えろ。

 これはお前のためだけじゃない。リングに上がるみんなのためだ」


「……はい」


 悔しさと情けなさで、目の奥がじんと熱くなる。

 それでも、さやかはぐっと唇を噛んだ。


「もう一度だ。星緋、お前も動線を確認しながら見ておけ。

 ――リングサイドは、“観客席じゃない”ってことを体に叩き込め」


「はい」


「了解です」


 二人は、白銀の動きと自分たちの足の位置を、何度も何度も繰り返し確認した。


◇ ◇ ◇


 別スペース。

 マットが敷かれたコーナーで、ノエルが正座していた。


 目の前には、アサギ、サツキ、エナ、レナ。

 Bloody Eclipseの四人が半円を作るように立っている。


「じゃ、セコンドのお勉強会、始めましょうか。――ノエル」


「は、はい……!」


 アサギが手に持ったタオルをひらひらさせる。


「これ、ただの布じゃない。

 選手の汗を拭くものでもあるし、“終わり”を宣言する白旗でもある」


 ノエルの喉が、ごくりと鳴った。


「タオルを投げるってことは、『これ以上やったら壊れる』って判断。

 ――その判断を間違えたら、ウチなら一生恨むよ?」


「ひっ……」


 ノエルの肩がびくんと跳ねる。

 すかさずサツキがアサギの肩を小突いた。


「お嬢。ビビらせすぎです。

 実際にそこまでの判断をさせるなら、もっと上のレベルになってからですよ」


「分かってるわよ。ちょっと脅しとかないと、こっちのペースに飲まれちゃうでしょ」


 アサギが笑い、エナがくつくつと喉を鳴らす。


「ノエル」


「は、はい……エナさん」


「まずは立ち位置だ。お前はセコンドの中でも、一番“弱い側”だってことを忘れるな」


「よ、弱い側……」


「お前が怪我したら意味ねえってことだよ。

 場外に落ちてきた選手に潰されない位置にいる。

 乱戦になったら、真っ先に避難する。――逃げ足も仕事だ」


 レナが壁にもたれたまま、静かに言葉を足す。


「セコンドは全部を直視しなくていい。

 見るべきところと、あえて見ないところを選べ」


「……見るべき、ところ……」


「選手が起き上がれるか。息は上がってないか。

 視線がどこに向いているか。――そういうところ」


 サツキが、タオルとペットボトルと氷嚢をノエルの前に並べた。


「これを持って立ち位置につけ。合図したら、選手に渡す。

 “自分が何を持っているか”を常に意識しろ。取りに戻る時間は、試合にはない」


「はい……」


 ノエルは震える指で、タオルとペットボトルを抱えた。

 立ち上がる足が、少しだけふらつく。


(こ、怖い……。でも……)


 頭の中に、あの日のあまねの背中がよぎる。

 怪我を抱えた翼を、そっと押してくれたみたいな言葉。


「……怖いです。でも、やります。

 ちゃんと……ちゃんと見てますから……!」


 ぎゅっとタオルを握りしめながら、ノエルが言った。


 アサギが、ふっと目元を和らげる。


「いい子。怖いって言える奴は、簡単には折れないの」


 エナも笑う。


「泣きながらでもいい。逃げなきゃ、それで合格だ」


 Bloodyの四つの視線を受けながら、ノエルは小さく頷いた。


◇ ◇ ◇


「では、入場の段取りからいきます!」


 すばるの声が道場の一角に響いた。


 簡易な音響機材と、テープで作った“花道ライン”。

 その前に、らん――ティアラ☆キャンディが立っている。


「曲が鳴る。

 イントロの、この小節で幕が開く。

 このドンッて音のところで、一歩目、前に」


「このタイミングですね……!」


 らんは目を閉じ、指先でリズムを取りながら、その場で一歩踏み出す。

 ユリアが後ろから、その動きをじっと見ていた。


「……悪くないわ。ステージに立っていた時間は、嘘をつかないわね」


「えへへ……。ありがとうございます」


 ミコトがマイクを一本持ち上げる。


「こっちはマイク。ワイヤレスのオンオフ。

 トラブルで一本死んだら、すぐ予備を渡せるように、位置を覚えておいて」


「はい!」


 リラが、ティアラの髪飾りとマントを手に取る。


「ティアラとか、マントとか、小物の管理は超大事だよー。

 落としたら危ないし、壊れたら泣いちゃうしね」


「それ、あたしのメンタルも壊れるやつです……」


「だからこそ、任せられるのよ」


 ユリアが真っ直ぐ、らんを見た。


「裏方は、表より楽だと思う?」


「……思いません。

 むしろ、全部がうまく行くかどうかは、裏方にかかってるって……

 アイドル時代、何度も痛感しました」


「なら話は早いわ」


 ユリアは、すっと片手を伸ばした。


「ティアラ。

 今回はリングには立たない。

 でも、“Stella☆Glareのステージを完成させる一人”であることは変わらないわ」


「……はい!」


 胸の奥に込み上げてくるものを、らんはぐっと飲み込んだ。

 ティアラ☆キャンディとしてではなく、姫乃らんとしての仕事。


(ちゃんと、やりきらなきゃ。ユリア様たちのステージ、

 あたしが裏から守るんだ)


 そう心の中で誓いながら、らんは再び花道に向かって歩き出した。


◇ ◇ ◇


 その日の道場は、一日中“国技館モード”だった。


 リングサイドでは、さやかといぶきが白銀の動きを追い続ける。

 ロープワーク、トペの軌道、ポストへの突進――

 どこで誰が落ちてきても避けられる立ち位置を、体が覚えるまで繰り返した。


 別リングでは、マッスル・シンフォニーの面々が最終調整をしている。


 轟みなせのスピアが、マットに低く潜り込む。

 翔迫ミナトのドロップキックが、エプロンギリギリから飛び出す。

 マディソン・グレイが黙々とスクワットとブリッジを続け、

 エスメラルダ・ルミナがロープの上を猫のように走り回っていた。


 さやかは息を切らしながらタオルを運び、その光景を横目に見る。


(いつもの筋肉組なのに……なんか、空気が違う)


 笑っている。冗談も言っている。

 でも、その奥にある集中の色が、いつもより濃かった。


 反対側では、AQUARIUSの三人――白星るりあ、紅条アカリ、赤城火智が、ホワイトボードを囲んでいる。


「ここで相手のペースを切る。

 火智は、この場面で一拍おいて“間”を作る」


「はい」


「アサギはこう来るから、受けきるか、かわすか。

 逃げ道を一つ、自分で用意しておきなさい」


 いぶきは、リングサイド補助の合間に、そのボードを横目で見た。


(……自分も、いつかあの輪に入りたい)


 胸の内でそう思いながら、いぶきは救急バッグの位置を直す。


 Stella☆Glareは、音響スペースで入場の確認をしていた。

 ユリアが一人、ステップワークと呼吸だけを繰り返している。

 リラとミコトは、簡易マイクで掛け合いの練習をしている。

 らんはメモ帳を片手に、動線とタイミングを書き込み続けていた。


 Bloody Eclipseの一角では、エナとレナがホワイトボードに×印を付けている。


「ここで膝を狙う」


「ここで心を折る」


「ここで、観客の声を完全に奪う」


 アサギとサツキも加わり、どこからホノシオ組を壊していくかの打ち合わせが進んでいく。

 その少し後ろで、ノエルがタオルとペットボトルを抱えたまま話を聞いていた。


(怖い。けど――)


 リングに戻った自分の足は、もう、あの日のようにすくんではいなかった。


◇ ◇ ◇


 夜。

 スターダスト寮の食堂には、遅めの夕食組のざわめきが残っていた。


 テーブルの一角に、新人四人が集まっている。


「……つ、つかれたぁ……」


 らんがテーブルに突っ伏す。

 その隣で、ノエルが湯気の立つスープを両手で包んでいた。


「らんちゃん、お疲れさまです……。メモ、真っ黒でした」


「さやかは? まだ動ける?」


「う、動けるけど……頭の中がロープと選手と氷でパンパン……」


 さやかは笑いながら、箸を持った手をぶらぶらさせる。

 向かいのいぶきは、真剣な顔で味噌汁をすする。


「星屑。

 今日はいっぱい怒られてたけど……最後の方は、ちゃんと動けてた」


「いぶきちゃんもでしょ。

 白銀さん、“合格ライン”って言ってたもん」


「合格ラインは、あくまで“最低限”。

 ……本番で、自分の判断が一つ遅れただけで、大ごとになるかもしれない」


 いぶきは吐き出すように言ってから、小さく息をついた。


「でも、怖いって思えるぶん、まだマシかも。

 何も考えずに立ってる方が、きっとずっと危ない」


「ノエルちゃんは?」


「……怖いです。でも、エナさんたちが、ちゃんと教えてくれるから……」


 ノエルは胸の前で指を組んだ。


「“逃げ足も仕事だ”って言われて、少しだけ楽になりました。

 全部を支えようとすると、つぶれちゃうから……

 “見てるところを選べ”って」


「それ、ちょっと分かるかも」


 らんが顔を上げる。


「裏方もさ、全部自分でどうにかしようとするとパンクするんだよね。

 音響さん、照明さん、スタッフさん……。

 “自分が見るべきところ”を見つけるの、すごく大事だなって思った」


 ふと、テーブルの真ん中に置いていたさやかのスマホが震えた。


「あ、星屑、誰から?」


「まなからだ」


 画面を開くと、メッセージが並んでいた。


『国技館、チケット取れた』

『ちゃんと星屑探すから、どこにいても分かるよ』

『TOになる準備はいつでも出来てます』


 最後に、スタンプの代わりにシンプルな文字が一つ。


『がんばれ』


 さやかは思わず、ふっと笑ってしまう。


「……なんて?」


「“TOになる準備は出来てます”……だって」


「うわ、もう完全にトップオタじゃん」


 らんが笑い、いぶきの口元もかすかに緩んだ。


「星屑には、ちゃんと“濃いファン”が付いてるんだな」


「まだ、一人だけどね」


 さやかはスマホを胸元に抱きかかえた。


「でも……それでも、すごく心強い」


 画面の光が消え、食堂の天井の明かりだけが四人を照らす。


「国技館。

 あたし、リングには立てないけどさ」


 らんが、やわらかく言った。


「それでも、絶対に“あの日の景色”の一部になってやる」


「私も、逃げません」


「私は――」


 いぶきが、少しだけ言葉を選ぶように口を開いた。


「自分の判断が、誰かを守れるように。

 ……冷静でいられるようにしたい」


 さやかは、三人の顔を順番に見てから、ぎゅっと拳を握った。


「私も、絶対に邪魔にならないように……

 ――ううん、“いてよかった”って思ってもらえるように、動けるようになる」


 その言葉に、三人とも頷いた。


 窓の外には、まだ都会の夜の明かりが瞬いている。

 でも、さやかたちの視線の先には、もっと遠くの光景があった。


 東京国技館。

 大きなリング。

 まなやファンたちが見上げる、あの日の光。


(私の戦いは、リングに上がる日だけじゃない。

 リングの外からだって、始められる)


 そう心の中でつぶやきながら、さやかは空に向かって、小さく拳を掲げた。

読んでくださってありがとうございます。

今回は、国技館大会に向けての“準備回”でした。


さやか&いぶきはリングサイド補助、

ノエルはBloodyのセコンド見習い、

らんはStellaの裏方と入場サポート。


それぞれが「試合に出ない側」として、

リングを支える立場に立ち始めました。


次回からはいよいよ、東京国技館「STAR☆RISING」当日。

第1試合から順に、ビッグマッチ本編へ入っていきます。

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