第20話 合宿ラスト――それぞれの持ち帰るもの
第三章・夏合宿編のラスト回です。
今回は、合宿最終日の総まとめメニューと、先輩たち&社長からの一言評価。
さやか・いぶき・ノエル・らんが、それぞれ「今の自分」と「持ち帰る課題」をはっきり自覚して、山を下りていくところまでを書きます。
合宿最終日の朝。
窓の外が、いつもより少しだけ明るく感じたのは――
筋肉痛が“治った”からではなく、この数日で慣れてしまったからだろう。
「……脚、まだ生きてる……」
布団の中で足を動かしてみて、さやかは小さく呟いた。
痛い。
普通に痛い。
でも、「立てないほど」ではない。
初日の絶望的なガクガク感とは、明らかに違っていた。
「さやかちゃん、起きてますか……?」
ノエルの控えめな声が布団越しに聞こえてくる。
「うん、起きてる……つもり……」
「それ、いぶきさん基準だと“起きてない”になりますよ」
ノエルの言うとおり、次の瞬間には布団の端がぐいっと引っ張られた。
「起床です」
いぶきが、ぴんと伸びた背筋のまま立っている。
「最終日なので、寝坊はもったいないです」
「最終日だからこそ、ちょっとだけ甘やかしてほしい……」
「甘やかしは、寮に戻ってからにしましょう」
らんは枕を抱えたまま転がりながら、「あと五分〜」と呻いている。
結局いつも通り、四人はバタバタとジャージに着替え、顔を洗い、
眠気と戦いながら玄関前に集合した。
最後の坂道ランは、二周だった。
でも、初日の二周とは、見える景色が違う。
「いーち、にー」
ひよりの軽快な掛け声に合わせて、さやかは腕を振る。
脚は重い。呼吸もきつい。
けれど、「絶対無理」とまでは思わなかった。
(あ、あたし……ちゃんと走れてる)
前を走るみなせの背中はまだ遠い。
いぶきの淡々とした足音も、簡単には捉えられない。
それでも――
横を見ると、らんが肩で息をしながらも、必死に笑おうとしていた。
「さやかちゃん、最終日だから、笑顔でゴールしよ……!」
「ひぃ……らんちゃん、その余裕どこから……」
その後ろで、ノエルが真剣な顔で呼吸を数えている。
「すー……はー……すー……はー……」
呼吸を乱さないように。
怖くなっても足を止めないように。
自分なりのリズムを必死に守っているのが伝わってきた。
(あたし一人じゃ、たぶん途中で歩いてた)
そんなことを思いながら、さやかは最後のカーブを曲がる。
合宿所の建物が見えた瞬間、自然と脚が前に出た。
全員が走りきり、黒岩がストップウォッチを確認する。
「――タイムそのものは、まだプロの基準には遠い」
はぁ、はぁ、と肩で息をする新人四人に、淡々とした評価が落ちる。
「でも、初日と比べて、誰一人“止まりそうなフォーム”をしてなかった」
その一言に、さやかの胸がじんと熱くなった。
「星屑。特にお前だ」
「えっ、あたしですか」
「脚はまだまだ細いし、スタミナも足りん。
だが、足が止まりかけた時に“もう一歩”出せるようになってる。
あれは教えようとして教えられるもんじゃない。続けろ」
「は、はい!」
褒められたのか脅されたのかよく分からないけれど、
少なくとも「前とは違う」と言ってもらえたのは、素直に嬉しかった。
「星緋」
いぶきに向けられた黒岩の目は、少しだけ厳しい。
「フォームが崩れないのはいいが、“限界を少し超える”ところまで踏み込めてない」
「……はい」
「怪我をしないラインを守るのは大事だが、
たまに“息が上がり切るところ”を経験しないと、試合のラストの苦しさに慣れん。
お前は頭が良すぎる。もう少し自分を追い込みなさい」
「気をつけます」
いぶきは、真剣な顔で頷いた。
「ノエル」
「は、はい」
「顔色はマシになったな」
黒岩の口元が、ほんの僅かに緩む。
「前は、ロープを見ると青ざめてた。
今は、“怖いけど前に進もうとしている顔”になっている」
「……努力、します」
「努力はもうしてる。
あとは、“怖いです”と言いながら立ち続けろ」
「はい」
ノエルの喉から、かすかな声が漏れた。
「ティアラ」
「はいっ!」
「お前は……元気だな」
「えっ、評価それだけですか!?」
らんが抗議の声を上げる。
「元気は才能だが、元気だけじゃ勝てん。
スタミナの配分を覚えろ。
“ここぞ”で一番輝けるように、普段を少し抑えることも考えろ」
「……はい」
しゅんとしつつも、らんは真剣に頷いた。
朝食とストレッチを終えたあとは、合宿最後の「総まとめメニュー」だった。
マッスル・シンフォニーによる、フォーム重視の基礎トレ。
AQUARIUSによる、崩しから技への“自分のパターン”確認。
Stella☆Glareによる、入場〜ファーストコンタクトまでの流れ。
Bloody Eclipseによる、軽めの恐怖慣らしと受け身。
これまでやってきたことを、
強度を少し落としながら、ひとつずつ確かめていく時間だった。
「星屑ちゃーん! スクワットいっくよ〜!!」
マットの一角で、みなせが両手をぶんぶん振りながらさやかを呼んだ。
さやかの方にタタタッと駆け寄ると、その場でぴょん、と軽くジャンプする。
「はい、セットして! 足肩幅〜、つま先ちょい外〜!」
「は、はいっ!」
さやかは慌てて足を開き、みなせの前に立つ。
「一回目ー! ダウン! アップ! ナイス星屑ちゃん!
二回目〜、おっけー、いいよいいよ、そのまま!
……十回目まで、膝の向き問題なし! 優秀〜!」
「ほんとですか……?」
「ほんとほんと! みなせ、ちゃんと見てるもん! 筋肉はウソつかない!」
みなせは、ぐっと親指を立てた。
「でも、二十回目から、ちょっと内側に入る〜」
「うっ……」
「でもね!」
みなせは、すぐさま身を乗り出して笑う。
「初日より全然マシ! マジで違う!
“へたれ脚”から“耐える脚”にクラスチェンジ中〜って感じ!」
「へ、へたれ脚……」
「今はまだね? でもね?
星屑ちゃん、“耐える脚”になり始めてる!」
「ほんとに……?」
「ほんとにほんとに! みなせのマッスルアイはごまかせないよ〜」
笑いながらも、目だけはちゃんとさやかの膝と足首のラインを追っている。
「この調子で、帰ってからも続ける!」
みなせは、当たり前のように言った。
「スクワット、ランジ、カーフレイズ! レッグデイトリオ!
星屑ちゃんがこれ続けたら、“スピア”もっとヤバいことになる!」
「スピア……」
自分の中で、まだ“得意技”と呼べるほど固まっていないその技の名前に、
さやかの胸が少しだけ高鳴った。
「星屑」
そこだけ、みなせの声色がほんの少しだけ真面目になる。
「スピアは脚と腰。
だからね――脚を鍛えたぶんだけ、ちゃんと強くなる」
ぱん、と自分の太腿を叩く。
「筋肉、絶対裏切らない。星屑は走るし、ぶつかる子だから、脚大事!」
「……はいっ!」
筋肉の鬼の言葉は、なぜかすっと心に入ってきた。
「星緋さん、“今日のパターン”お願いします」
AQUARIUSのマットの上で、るりあが声をかける。
「崩しから――足取り、そしてアンクルホールドへ」
「はい」
いぶきは、ひよりを相手に、ゆっくりと動きを確認していく。
相手の腕を取り、体勢をずらし、重心を崩す。
そのまま足を払って倒し、距離を詰めて足首を取る。
アンクルホールドの形に入ったところで、るりあが手を叩いた。
「そこまで」
るりあは、顎に手を当てて頷く。
「初日に比べて、“崩した先の絵”がはっきりしてきましたね」
「ありがとうございます」
「崩し→足払い→アンクル。
これは、一つの“星緋いぶきのパターン”になり得ます」
アカリが補足する。
「これを“100回、何も考えずに出せるまで”繰り返せば、
試合でも自然に出るようになる」
「練習、します」
いぶきは、短く答えた。
「あと――」
るりあが、少しだけ表情を柔らかくする。
「スパーの時より、表情が少し柔らかいです。
“技に集中できている時の顔”、悪くないですよ」
「そう、そう」
ひよりも笑う。
「星緋ちゃん、ちょっとだけ“楽しそう”だった」
「……そう、でしょうか」
「うん。“分かった”って顔してたもん」
そう言われて、いぶきは少しだけ耳を赤くした。
リングの上では、Stella☆Glare組の総仕上げが行われていた。
「じゃあ、通しで行こっか」
ユリアがロープの外から見守る。
「入場から、コーナーポーズ、最初のロックアップまで。
さやかちゃん、らん、準備はいい?」
「はい!」
「行きます!」
二人はコーナーの外に下がる。
「音楽、頭の中で鳴らして」
リラの声に、さやかは深呼吸を一つ。
(お客さんがいて、
まながいて、森がいて、こはるがいて――)
自分の中の「見てほしい顔」を順番に浮かべる。
一歩、踏み出す。
背筋を伸ばし、リングに向かって歩く。
途中で、仮想の「観客席」へ視線を飛ばす。
その先にいる誰かに向かって、「ありがとう」と目で伝える。
コーナーに上がり、軽く手を挙げる。
(ここが、自分の場所)
そう自分に言い聞かせながら、ロープをまたいでリングインする。
隣では、らんが華やかなポーズを決めていた。
さっきまでより、ほんの少し動きが柔らかく、
“出力全開”というより“ここぞの瞬間にだけ光を強める”ようなメリハリがある。
「いいね」
ミコトが頷く。
「らん、最初の笑顔、さっきより“作ってない”感じ出てきた」
「ほんと?」
「うん。“頑張って笑ってるアイドル”じゃなくて、
“リングが楽しくて笑ってるレスラー”になりつつある」
らんの顔に、嬉しさと照れくささが同時に浮かんだ。
「さやかちゃんも」
リラが、ロープに肘をかけながら言う。
「“ごめんなさい入場”からは卒業したね〜」
「ごめんなさい入場……」
「前はちょっと、“お邪魔します”って感じが出てたの。
今はちゃんと、“ここに立ちたい”って顔になってるよ」
「……ありがとうございます」
褒められて、さやかの胸がじんわりと温かくなる。
「まだ硬いところはいっぱいあるけどね。
でも、“お客さんの前に出る覚悟”、ちょっとは見えてきた感じ」
ユリアのその言葉に、さやかはうなずいた。
(ここで、くじけたくない)
Bloody Eclipse組の「安全な地獄」も、最終日は少しだけ穏やかだった。
「はい、今日のノエルメニューは、“怖いです”を三回言うまで帰れません」
アサギが、ロープにもたれながら宣言する。
「……え?」
「昨日まで、“怖いです”をちゃんと言えるようになったろ」
エナが、ニヤッと笑う。
「今日は、“怖いです、でもやります”までセットで言う練習」
「なかなかにスパルタな日本語の授業ですね……」
ノエルが苦笑いする。
「じゃ、ロープワークから。
スピードは六割、回数は五往復」
レナがさらっと条件を出す。
「途中で怖くなったら?」
「“怖いです”って言う」
「それでも足が動いてたら?」
「“でも、やります”って言う」
「はい……」
ノエルは、大きく息を吸い込んで走り出した。
一往復目。
ロープに触れた瞬間、胸がきゅっと縮む感覚はまだある。
「こ、怖いです……」
「いいね、一回目」
サツキが、軽く指を折る。
二往復目。
ロープの揺れが、事故の映像と少しだけ重なりそうになる。
「怖いです……でも、やります」
「お、セットで言えた」
アサギが、わざとらしく拍手した。
三往復目。
呼吸が少し乱れ、足も重くなってくる。
「……怖いです。
でも、止まりたくないです……!」
「三回目、合格」
レナが、淡々と指を折る。
五往復を終えた頃には、ノエルの額には汗が滲んでいたが――
その目は、初日とは明らかに違っていた。
「ノエル」
アサギが、手を差し出す。
「うちに来た時より、“怖い”の中身が変わってきたな」
「中身……ですか?」
「最初は、“全部ひっくるめて怖い”だった。
今は、“何が怖いか”をちゃんと自分で言えてる」
エナが補足する。
「ロープの揺れが怖いのか、スピードが怖いのか、
技が止まらないかもしれないのが怖いのか」
「それが分かってれば、対処のしようもある」
サツキが、チェーン柄ジャージのポケットからガムを取り出しながら言う。
「昨日も言ったけどな。
“怖くないフリ”する奴より、“怖いです”って言う奴の方が、ずっと信用できる」
「……ありがとうございます」
ノエルは、小さく頭を下げた。
「合宿終わっても、またうちの練習来いよ」
アサギが、さらっと告げる。
「“正式マスコット昇格テスト”してやる」
「えっ、昇格とかあるんですか、それ……」
ノエルの悲鳴に、Bloody Eclipseの五人が一斉に笑った。
午後、全てのメニューが終わったあと。
道場に、少し懐かしいスーツ姿が現れた。
「――よく、最後まで残ったな」
天城星弥・PWS社長が、入り口に立っていた。
「社長!」
さやかたち新人四人だけでなく、先輩たちも一斉に頭を下げる。
「忙しいところ、わざわざありがとうございます」
黒岩が一歩前に出る。
「いや。合宿の最後くらいは、顔を出さないとな」
星弥は、道場をぐるりと見渡した。
汗だくで、疲労困憊で、それでもどこか晴れやかな顔をしている新人四人。
その周りには、それぞれのユニットの先輩たち。
「一ヶ月テストの時と比べて――」
星弥は、さやかの方を見た。
「星屑。顔つきが変わったな」
「えっ」
「前は、“怖いけど頑張ります”って顔だった。
今は、“怖いけど、それでもやりたい”って顔だ」
「……違い、あるんですか?」
「あるさ」
星弥は、少し笑う。
「“怒られたくないから頑張る”のと、“自分で決めたから頑張る”のは、
全然違う」
その言葉に、さやかは胸の奥が熱くなるのを感じた。
「星緋」
「はい」
「お前は、まだ自分の中で“正解の形”を探している段階だ。
だが、その探し方は間違っていない」
「……」
「理屈と身体の両方で掴めるタイプは、時間がかかるが伸びる。
焦らず、自分のペースで積み上げろ」
「ありがとうございます」
いぶきは、深く頭を下げた。
「ノエル」
「は、はい」
「ここに戻って来るだけでも大変だったはずだ」
星弥の声は、少しだけ柔らかい。
「怖いまま立っていい。
怖いまま、その恐怖と付き合い続けろ。
それが、お前だけの“強さ”になる」
「……はい」
ノエルの目尻に、うっすらと涙が浮かんだ。
「ティアラ」
「はいっ!」
「お前は――うるさいな」
「えぇっ!?」
らんが全力で突っ込む。
「でも、そのうるささは、PWSには必要だ」
星弥が、くすっと笑う。
「ただし、“うるさいだけ”で終わるな。
リングの上で、“説得力のあるうるささ”を身につけろ」
「……が、頑張ります!」
らんは、少しだけ照れ笑いを浮かべた。
「四人とも、まだまだ“プロレスラーの入口”に立ったばかりだ。
合宿で得たものは、“ちょっとした筋肉”と“ちょっとした自信”、
それから“山ほどの課題”だろう」
星弥は、ゆっくりと言葉を選びながら続ける。
「でも、それでいい。
“自分には何が足りないか”を、ちゃんと言葉にできるようになったなら、
この合宿は成功だ」
その言葉に、四人は自然と背筋を伸ばした。
「本部に戻ったら、すぐに日常の練習に飲まれる。
その中で、今日思ったことを忘れないようにしろ。
書き出して、ノートにでも貼っておけ」
「はい!」
四人の声が、きれいに揃った。
「期待しているよ。
――PWSの星屑たち」
星弥の言葉に、さやかの胸が大きく跳ねた。
(星屑……)
自分の名前と、彼の団体の名前が、
ほんの一瞬だけ重なった気がした。
夕方。
合宿所の前には、山を下りるバスが停まっていた。
荷物を積み込み、先輩たちが簡単に片付けを済ませていく。
「星屑ちゃーん!」
みなせが、プロテインシェイカーをぶんぶん振りながら駆けてくる。
「これ! ちゃんと飲む! 筋肉の約束〜!」
「えっ、あ、はい!」
「脚! 腰! ぜんぶ大事!
星屑ちゃんはね〜、ぜったい脚つけたら強いタイプ! みなせ分かる!」
みなせは、さやかの太腿を指でつつきながら、満面の笑みを浮かべた。
「また道場でレッグデイする! スクワット祭り! レッグプレス祭り! カーフ地獄!」
「ま、またですか……」
「マスト!」
ぴしっと親指を立てる。
「みなせの中で、“星屑ちゃん=脚鍛えたら化ける子”だからね!
楽しみにしといて!」
短い英単語と勢いだけの説得に、さやかの膝が軽く震えたが――
不思議と、嫌な感じはしなかった。
「星緋さん」
るりあが、いぶきに小さなメモを手渡す。
「今日やった“崩し→足払い→アンクル”のポイント、書いておきました。
忘れそうになったら、見てください」
「ありがとうございます。
本当に、お世話になりました」
「こちらこそ。
これからも、AQUARIUSの練習、遠慮なく来てくださいね」
いぶきは、メモ帳を両手で受け取り、大事そうに胸に抱えた。
「ノエルちゃん」
エナが、ノエルの肩をぽんと叩く。
「うちの“泣き虫子猫”」
「な、泣き虫って……」
「合宿中、逃げなかったから合格。
また遊びにおいで。今度は、もっと派手な技見せてやる」
「怖いフラグ立てないでください……」
と抗議しつつも、ノエルの声はどこか嬉しそうだった。
「らんちゃん」
リラが、らんに向かって両手を振る。
「帰ったら、入場の細かい振り付け、また一緒に考えよ〜」
「はいっ!
もっと“ティアラ☆キャンディだからこそ”って感じにしたいです!」
「うん、その意気その意気」
ミコトも、そっと付け加える。
「決めポーズの後の一歩目、忘れないでね。
“可愛いだけ”から、“勝てるアイドルレスラー”に進化するための一歩だよ」
「はい!」
らんは、ぎゅっと拳を握った。
バスに乗り込む直前、さやかは一度だけ振り返った。
合宿所の建物。
朝の冷たい空気。
終わらない坂道。
何度も転がったマット。
(ここに来る前と、今のあたし、ちゃんと違う)
それは、誰かに証明してもらうまでもなく、
自分自身が一番よく分かっていた。
「さやかちゃん、行こう」
ノエルが、そっと袖をつまむ。
「うん」
さやかは頷いて、バスの階段を一段ずつ上がった。
席に座り、窓の外を見る。
エンジンがかかり、バスがゆっくりと動き出す。
山道を少し下ったところで、さやかは無意識に、拳を膝の上で握りしめていた。
(絶対に諦めないって、もう一回、自分に約束する)
屋上で交わした四人の誓いが、
胸の中をじんわりと温め続けていた。
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
第20話では、
・合宿最終日の坂道ラン&総まとめメニュー
・マッスル組、AQUARIUS、Stella☆Glare、Bloody Eclipseそれぞれからの「現在地評価」
・社長・天城星弥から新人4人への総評と、“PWSの星屑たち”という言葉
・山を下りるバスの中で、少しだけ変わった自分を感じるさやか
を描きました。
みなせは「星屑ちゃん推しの筋肉お姉さん」として、
ちょっと騒がしく、でもちゃんと見てくれているテンション高めの先輩寄りに調整しています。
このあと、本部道場の日常に戻った第四章以降で、
合宿で得たものがそれぞれの動きや試合にどう反映されていくかも、
少しずつ描いていければと思います。




