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第1話
「よう! 月豊、また学年トップだって? すっげーなぁ……」
「ちょっと、こんな大勢の前で言うなってば!」
長い付き合いの友の言葉によって注目を浴びた花村月豊は顔を赤く染めながら言った。
彼はその反応に可笑しさを堪えながら月豊の肩を軽く二回叩く。
「まーまー。別に悪い成績じゃないんだからいーじゃん」
「そう言う夕夜はどうだったんだよ?」
月豊の問いに、友――夕夜はグッと親指を突き出した。
「もちろん欠点ギリギリ回避だ!」
「……つまりは、いつも通りってことか」
何故か自信満々な夕夜に呆れて、月豊は溜め息を吐く。
「全く、夕夜はいつもお気楽だよな……」
「だって悩んでても仕方ねーじゃん」
そのなにげもない呑気な夕夜の言葉が、月豊の心に突き刺さった。
「悩んでても仕方ない、か………」
その独り言に、夕夜は首を傾げた。
「…どーした? 何か悩み事?」
月豊はハッとして頭を振ると笑顔を作る。
「ううん、大丈夫。何でもない」
「………嘘だな。思いっきり悩んでます、って顔だったぜ?」
やはり長年の友なだけあって、誤魔化すことは出来ないようだ。
月豊がうつむくと夕夜は溜め息をした。