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12話 魔王は上級の炎魔法で米を炊く

「それで、あのクララってやつ大丈夫なのか」

「そうね。性格はあんな感じでちょっと面倒なところもあるけれど、腕はたしかよ。防犯めだまの『いんふら構築』をしたのもクララなの。クララがいなければ、防犯めだまたちは、ただのめだまでしかなかったわ」


「ただのめだまってなんだよ。こえーよ」

「それだけすごいってことよ。私からしたら、何をしているかわからないから、さしずめ魔法使いのように見えるわ」


魔法使いと聞いて、俺はエンジニアの藤木さんのことを思い出した。

藤木さんは、魔法使いというよりは自称赤魔道士と言っていたか。

技術はあるので、本人のモチベーションの方向性と合致したら心強いはずだ。

しかし、技術があらぬ方向性にいくと暴走するので、ハンドリングは必要である。


「クララは一度あのラボに籠ると、なかなか出てこないの。ごはんも、完全エイヨウショク?とかいって、いつもミキサーにかけた紫色で甘い匂いのする、謎のエナジー・ドリンクを飲んでるわ」


魔界にも、完全栄養食の概念があるのかよ。


「そういえば、カレーって、あのカレーで合ってるよな。ごはんの上にルーが乗っかってるやつ」

知っていると思う用語でも、念のため確認しておく。

これは大事なことだ。「アレ」だと思っていたものが現場が違うと、違う使われ方をしているなんてこともある。

それによるコミュニケーション・エラーによる事故は未然に防いでおきたい。


「ええ、アナタが想像しているカレーよ」

「よかった! それで、食材はあるのか?」

「ないわ!」



「なんでだよ!」



どうしてこんなにも自信たっぷりに返答できるのか。

「こんな蒸し暑い火山の中で食材がもつわけないでしょ。調達しにいくのよ」

「調達?」

「ふふふ。このダンジョンの外に出るということよ。この瘴気が蔓延り、モンスターどもが跋扈する魔界にアナタは耐えられるかしら」

「そのやたら小難しい言い回しはやめろって」


たしかに、ここは魔界だ。俺が住んでいた現代とは異なるはずだ。


空は黒雲が立ち込め、紫電一閃の雷鳴が轟音と共に空を切り裂く。

大地は割れ、地の底から噴き上がるマグマが地面を覆い尽くしているに違いない。


「いいだろう、ちなみに食材はないっていっていたが、それ以外の調理器具はあるという認識でいいんだな?」

「ええ、それは気にしなくていいわ。さすがにそれくらいの備えはあるもの」

「わかった。じゃあチーム分けといこう」

「どうして?」

「全員で外に出て、それから支度をしたんじゃ時間がかかって、あの腹ペコイカ娘を満足させられないだろう?」

口をぽかんと開けてはきょとんとした顔をするこの魔王にはおそらく本意は伝わっていないのだろう。


「あ〜? うん。なるほどね。わ、私も、そう思っていたところよ!」

声が上ずり、ただただ白々さが増すばかりだ。


「チームわけは、ローゼリアとリザのチーム。俺とハピたすのチームでいこうと思う」

「どうしてその組み合わせなの?」

「ローゼリアとハピたすを一緒にしたら、どう考えてもバッド・エンド一直線だろ?」

「面と向かって失礼ね!」

「ハピたすは翔べるだろ? ダンジョンの外を偵察するのに便利だ」

「どうせ私の翼はお飾りですよ」


ベーっと舌を出して精一杯の抵抗をしてくる。


「それに、ローゼリアは火が使えるじゃないか」

「使える、なんてレベルじゃないわ。私は魔王よ。煉獄に眠りし獄炎の焔龍の使い手よ」

火にまつわる漢字のオン・パレードでただの厨二病ロリ魔王にしか見えなかった。

ローゼリアは指先に魔力を込めると、ゴゴゴと音を立て炎を灯し始める。


「じゃあそのなんとか龍で炊飯の準備をしてくれ」

「はあ、焔龍で米を炊けっていうの?」

「ああ。よろしく頼まれてくれ」

「ちょっと! 焔龍は炊飯のためにあるものじゃないわ! ちょっと!待ちなさーい」


これ以上は時間のムダだ。

俺はローゼリアの子守りをリザに任せて、ハピたすとともにダンジョンの外に向かうことにした。


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