第一曲 巡り合わせ
帰宅ラッシュが始まる夕方頃、駅はひどく混雑していた。
人酔いするほどの人混みの中、一人の若者がその中で人を避けるように駅のホームに向かって歩いている。
いや、違う。周囲の人が若者を避けているのだ。
スーツ姿や学生服の人が多くいる中、その若者は黒いスーツの上に白い墓ローブを着ている。
長い時間をかけて伸ばしたであろう白髪は腰の高さまで伸びていた。
極めつけは光を含まない紫の瞳だった。全てを拒絶するような瞳は、自然と周囲に圧をかけていた。
だが、若者はあえてそうしている。
これが、本来の自分のあるべき姿だからだ。
電車に乗ってからも、周囲の人は異物を見るような目で若者を見る。
そして、一分の人は私人間でこそこそも若者について何か言っている。
聞こえていないとでも思っているのかもしれないが、その言葉は若者に聞こえている。
またかと思うほど聞き続けてきた陰口だが、それはもう聞き慣れてしまっている。
異様な見た目であることから、差別の目を向けられることも少なくなかった。
不良からカツアゲされ、金を取られたこともあった。
そんなことに比べれば、若者にとって陰口などは些細なものにしか過ぎなかったのだ。
しばらく電車に揺られ、目的の駅で若者は電車から降りた。
若者は交通ICカードを使い、改札から出ると、毎日のように通う本屋へと足を踏み入れた。
駅内に組み込まれる形で存在する本屋は、参考書を買うのにうってつけだった。
それに加え、ここには漫画から歴史書まで幅広い本が揃っている。
若者にとっては、本の報告と言っても過言ではない場所だった。
数多くの本が揃う中、若者は中世ヨーロッパの歴史がまとめられた本と、作曲の本を手に取った。
若者はその二冊をレジへ持っていき、会計を済ませた。
本屋を後にした若者は駅を出ると、大通りの歩道を真っすぐ歩く。
自分が行くべき場所に向けて歩いていく。
目の前にあるものを乗り越えるために。
車通りが激しくなる夕方頃、外は車の走行音で満ちていた。
帰宅ラッシュが始まっているのだ。
女は外に出るための準備を整え、鞄を持って外に出ようとする。
だが、簡単に外には出ない。
玄関についているドアスコープを覗き、玄関前に誰もいないことを確認する。
それを終えてから、女は外に出る。
鍵をかけ、アパートの敷地内から出るために歩き出す。
だか、運の悪いことに買い物を終えた隣の住民と鉢合わせてしまった。
しかし、隣にすむ女の住民は軽い挨拶を交わすだけで済んだ。
女はこれ以上誰にも会わないようにと、駆け足で階段を駆け下りた。
アパートの敷地から出た女は安堵の表情を浮かべた。
時間を見ると、まだ目的地の到着時間まで大きな余裕があった。
近場に行きつけの喫茶店があるため、女はそこで時間を潰そうと歩き始めた。
喫茶店に入った女は一番隅にある席に座る。
隅だからこそ誰も気にしないと考えると、ここは自分にとって安全な場所だと認識することができる。
女は店員を呼び、アイスコーヒーを注文した。
数分して、店員がアイスコーヒーを持ってきてくれた。
女は店員に礼を述べると、注文したアイスコーヒーを一口飲んだ。
この喫茶店に来るたびに飲むアイスコーヒーは甘くてまろやかな味がする。
女にとっては、疲れていた時には生を実感するほどだ。
アイスコーヒーを飲み終えた頃、ポケットに入れていたスマートフォンが振動した。
アプリの通知であることは確かだが、どのアプリの通知なのかは見なければ分からない。
時間の確認ついでにと、女はスマートフォンの電源つけた。
スマートフォンの画面を見た女は眉を歪めた。
画面に映ったのは女の父親からのメールだった。
女はそれを無視すると、時間を確認して会計へと向かう。
会計を済ませた女は目的地へと向かって歩き出した。
店でアイスコーヒーを飲んでいた時の穏やかな表情は、今はもうどこにもない。
その心を支配するのは過去の記憶だった。
学生の帰宅が始まる夕方頃、外は学生の声で溢れていた。
住宅地にあるとある家の窓からは、一人の女が外を覗いている。
女の視線の先には、会話をしながら家の前を通る何人もの学生の姿があった。
女はひどく怯えていた。
外に出るのが怖いのだ。
だが、そろそろ家を出なければ目的地の到着時間を過ぎてしまう。
女は覚悟を決め、鞄を持って自室から一階へと降りる。
そして、玄関で靴を履き、ゆっくりと扉を開けた。
扉を開けた女は、僅かな隙間から辺りを見回す。
周囲に人の姿は見られない。
安堵した女は外へ出ると、家の扉に鍵をした。
自分以外誰もいない家の姿を外から見ると、時々寂しくなる時がある。
西に傾く夕日が照らすものだから、とても哀愁感が漂ってしまう時はよくある。
だが、そんなことを気にしている暇はない。
こんなことを考える暇があるならば歩き出せと、女さ自分に言い聞かせる。
そして、目的地へと向かって歩き始めた。
しばらく歩くと、こちらに向かって歩いてくる学生が見えてきた。
女は慌ててパーカーで顔を隠す。
そのまま女と学生はすれ違った。
女は顔を隠していたパーカーを脱ぐと、安堵の表情を浮かべた。
こうやって人とすれ違うたびに自分の顔を隠すようにすることを徹底している。
過去に犯罪を犯したわけではないが、そうせざるを得ない事情が自分自身にあった。
外に出る時はつくづく生きづらい世の中だと思うこともあるが、それでも前を向いて歩かなければと思う時もある。
生きているだけで丸儲けだと自分に言い聞かせ、今をゆっくりと歩く。
誰にも侵されることのない自分の速度で。
今日と言う日に終わりを告げる夕方頃、道には人集りができていた。
人集りはとある一軒家に集中していた。
その人集りを構成するとは、新聞記者やテレビ局のアナウンサーやカメラマンだった。
彼らは執拗に玄関の扉を叩き、中にいるであろう住民の名前を呼ぶ。
家の中では呆れ顔の男が外へ出るための準備をしていた。
だが、男の表情は決して明るくない。
何日もマスコミが昼夜交代で家の前に居続けているのもあるが、その答えは家の中の静寂が示している。
男は
準備を終えた男は鞄を持ち、家の外へ足を踏み出した。
外へ出た途端、マスコミの激しい質問攻めと、立て続けにシャッターを切るカメラのフラッシュライトの雨遭った。
男は何も答えず、マスコミを掻き分けて道へ出る。
マスコミは男を執拗に追いかける。
だが、男は気にせずに道を歩き続ける。
しばらく歩いたところで、男は近くの角を左に曲がった。
その次の角を左に曲がり、その次は右に曲がった。
マスコミは必死に男についていくが、角を曲がる内に男を見失ってしまった。
マスコミは男を見つけようのあちらこちらを走りまわった。
だが、既に男はその周辺にいない。
男は目的地に向け、ゆっくりと歩いて行った。
それから間もなくして、店がちらちら見えてくる場所に差し掛かった。
男はあえて歩道の中央を歩く。
周囲の人々は男を避けて道の端に寄る。
そして、みるみる内に男の陰口を叩き始めた。
男は無表情のまま道の中央歩く。
あえて何も気にしない表情で道の中央を歩く。
その背中は何かを背負っているようで、どこか寂しそうだった。
誰もが忙しくなる夕方頃、テレビでは政治のニュースが流れていた。
国会の委員会では、一人の壮年男性が新しく提出された法案に対し、様々な疑問の言葉を述べていた。
その姿をテレビ越しに見ている男は、壮年の男性に憎悪の炎を燃やしていた。
その瞳の奥に、光は一切通っていなかった。
だが、そんなことを気にしている暇はない。
男はテレビを切ると、鞄を持って玄関へ向かった。
だが、鍵を机の上に置いたままだったことを思い出し、急いでリビングへ戻った。
鍵を手に取り、男は再び玄関に向かった。
外絵出ようとした時、ポケットに入れていたスマートフォンが振動した。
男はスマートフォンを取り出し、電源をつけた。
スマートフォンの画面には男の母親からのメールの通知が表示されていた。
時間もなかったので、男はメールを無視して外に出た。
部屋に鍵をかけた男は、階段を駆け下りて下の階に下った。
道中、下の階に住んでいる住民に話しかけられて少しばかり時間を取られたものの、男は難なくアパートの外に出ることができた。
しばらく道を歩くと、男は裏路地に入った。
比較的人通りのない場所を選んで先へ進む。
本来ならば光の下を歩きたいが、自分の立場上それが叶うことはない。
そう言い聞かせても、どうしても寂しさや虚しさが常につきまとっている。
男は常に葛藤していたのだ。
だが、男はそれを表情に出すことはない。
常に張り付いたような無の表情を浮かべ、どこにも興味のないような雰囲気を出す。
場所は薄暗い裏路地にも関わらず、僅に入り込む光が男の影を伸ばしていた。
日が傾き、辺りは少しづつ暗くなり始めていた。
高さのある店により、日光が入ってこない商店街はとても暗いものの、人はそこそこ出歩いていた。
そんな中、若者は辺りを見ながら目的地へと向かって歩いていた。
昔から馴染みのある商店街は、何年経っても変わることはない。
ある意味安心することができた。
しばらく歩き、商店街の分岐点に着いた。
後はここを右に曲がり、道なりに沿って進めば目的地である古山大学校が見えてくる。
旧帝国大学に劣らない学力を持ちながらも定時制課程を採用する大学校は、この地域周辺ではここしかない。
若者は家賃類を払うために昼は仕事に励み、夜は古山大学校で講義を受けている。
辛い生活習慣ではあったものの、三年もこの生活を続けている内に、この生活習慣が身についていた。
若者は腕時計で時間を確認すると、古山大学校へ向けて歩き出そうとした。
だが、若者は足を止めた。
薄暗い商店街の中で、ある光景が視界に入ったのだ。
視線の先にあったのは、いかにも不良そうな見た目の男に絡まれている女の姿だ。
視線の先にいる二人が通常の関係ならば良かった。
だが、目の前で行われているのは明らかに恐喝だ。
若者はこれを止めようと、二人のいる方向へ向かって走り出した。
不良の男に絡まれていた女は、必死に不良を追い返そうとしていた。
だが、不良の男はしつこく女に絡みついてくる。
女は恐怖していた。
警察に通報しようにも、スマートフォンは鞄の中に入れてしまっているためすぐに使用できない。かと言って、この状況では取り出すこともできない。
女は諦めかけていた。
「ちょっと、何してるんですか? 嫌がってるじゃないですか」
突如として、横から声が入った。
目をやると、そこには白いローブに身を包んだ白髪の女が立っていた。
だが、横に立っている女は明らかに普通の女ではない。
その瞳に光が宿っていなかったのだ。
不良の男は女に目を向けると、女に鋭い視線を向ける。
「アマ、邪魔してんじゃねえよ。俺はこの女に用があるんだよ」
不良の男は女に暴言を浴びせた。
だが、女は怯むことなく男の瞳の奥を見る。
その瞳の奥は明らかに黒く濁っていた。
明らかに悪である男を前に、女は笑みを浮かべた。
「まともに生きれないから暴力にものを言わせるんですよね? はっきり言って獣ですね」
女は嘲笑しながらそう言った。
次の瞬間、男の頭に血が上った。
「ふざけんじゃねえ!!」
男は拳を握ると、女を殴りに掛かった。
絡まれていた女は目をつむった。
目の前にいるのはどう考えても非力そうな女だ。一瞬の内に捻り潰されるだけだと思ったからだ。
次の瞬間、辺りに鈍い音が鳴り響いた。
だが、女の顔が潰れたわけではなかった。
女は既のところで何か分厚いものが入った鞄を間に挟み、男の拳を防いでいたのだ。
男は拳に走る痛さのあまり悲鳴を上げた。
「傷物になったらどうするつもりですか? 高かったんですよ、この歴史書」
悲鳴を上げる男には目もくれず、女は鞄の中から分厚い中世ヨーロッパの歴史書を取り出した。
絡まれていた女は困惑した。
まさか、歴史書で拳を防ぐなんて思ってもいなかったからだ。
困惑する女だったが、突如として肩を叩かれて驚いた。
振り向くと、そこには銀髪の女が立っていた。
あまりにも突然のことで、女は震えていた。
女が震える様子を見て、銀髪の女はやり方を間違えたと思い、少し反省した。
「大丈夫よ、私はあなたの味方。ここにいると危ないから早く離れましょう」
銀髪の女の言葉は、どこか安心できる言葉だった。
女は銀髪の女を信じ、銀髪の女と共にその場を離れた。
一方で、白髪の女は不良からの拳を最小限の動きで躱し続けていた。
男の怒りはその都度上がり、いつの間にか手をつけられない状態になっていた。
「おい、避けてんじゃねえ!!」
「避けないと痛いじゃないですか。私、痣は作りたくないんですよ」
女は男の言葉に返事をするくらいの余裕はあった。
だが、決して反撃に出ることはない。
女はあくまでも避けることが得意であり、攻撃に出ることは得意ではなかった。むしろ、そのための腕力が足りないくらいだ。
だが、女にも限界は訪れつつあった。
元から体力の少ない体では、長時間運動をし続けることは困難であった。
そして、ついに女は足を捻ってしまった。
女の姿勢が崩れる。
これを待っていたと言わんばかりに、男は拳をねじ込もうとする。
女は肋骨の一、二本が折れることを覚悟した。
だが、男の拳が女に振るわれることはなかった。
男の視界から見える世界が反転した。
何が起こったのか分からないまま、男は激しく地面に叩きつけられた。
骨に響く痛みが全身を駆け巡り、意識が飛びかけた。
男は暗くなりつつある視界の中、こちらを見つめる二人の男の姿を目に焼き付けた。
そこで男の意識は途切れた。
黒いパーカー服を着た男は、足を捻ってしまい、その場に倒れた女に手を差し伸べる。
女は男の手を取り、立ち上がった。
「怪我はないか?」
「大丈夫です。それよりも、助けていただいてありがとうございます」
女は窮地を救ってくれた男に頭を下げた。
「いや、礼は俺の隣にいるやつに言ってくれ。助けるよう促したのはこいつだ」
男はそう言い、隣に立つ茶髪の男を指差した。
パーカー服を着た男の隣に立つ張り付いたような笑みを浮かべる男は、自分は何もしていないと瞳で訴えかけてきた。
女はどうすれば良いか分からず、ひとまずその場で頭を下げた。
頭を上げたところで、女は不良に絡まれていた女を思い出した。
大丈夫か心配になり、周囲を見回した。
だが、女の姿はどこにもない。
「彼女なら大丈夫ですよ。安全な場所でことが過ぎるのを待っていましたので」
背後から声が聞こえた。
振り返ると、そこには男に絡まれていた女と、知らない銀髪の女が立っていた。
だが、銀髪の女は隣にいる桃色のパーカーを着た女を安全な場所に連れて行ったようであるため、信用して良いと判断した。
「あの……助けていただき、本当にありがとうございます。あのまま助けていただけなかったら、私はどうなっていたか……」
桃色のパーカー服を着た女はその場の四人に頭を下げた。
「大丈夫ですよ。それよりも、周囲にいた人が助けに来ないのが問題です」
「まったくそのとおりだ。困ってるやつがいたら助けてやれって、親から教わらなかったのかな」
白髪の女と黒色のパーカーを着た男は、立て続けにそう言った。
銀髪の女と茶髪の男は何も言わずに首を横に振った。
「さて、後片付けをしようか。とりあえず、警察に連絡だね」
茶髪の男はそう言うと、スマートフォンを取り出して警察に電話をかけた。
しばらくして、二人の警官が現場に駆けつけた。
警官達は、不良の男が泡を吹いて倒れているのを見て唖然とするも、その男の顔が連続婦女暴行罪の犯人と一致したため、すぐに作業に取り掛かった。
その場に居合わせた五人は、警官からの事情聴取を受けた。
不良の男に絡まれていた女を中心に、五人は当時の状況を事細かく、鮮明に説明するよう尽力した。
事情聴取が終わると、警官達は男を連れて去っていった。
五人は軽いため息をつくと、揃って肩を落とした。
「何だろう、すごく疲れた……」
「同感です。でも、連続婦女暴行罪の犯人が捕まって良かった」
黒色のパーカー服を着た男と、銀髪の女は揃って口を開いた。
白髪の女は横で軽く口角を上げると、腕時計を確認した。
時刻は古山大学校の講義が開始される間近まで迫っていた。
「すいません、これから大学の講義があるので私は失礼します」
女は大学の講義があることを伝え、その場を立ち去ろうとした。
「待ってください」
後ろから女を呼び止める声が聞こえた。
女は足を止め、もう一度、四人が立つ方向に向かい合った。
呼び止めたのは桃色のパーカーを着た女だった。
女は真剣な瞳をこちらに向けている。
「どうかされましたか?」
「もしかして、あなたも古山大学に行くんですか?」
桃色のパーカーを着た女の言葉に、他の四人は目を見開いた。
突然、四人の視線が注がれたことにより、女はあたふたし始めた。
「どうして分かったんですか?」
白髪の女は、優しい声色で聞き返した。
桃色のパーカー服を着た女は、他の三人の視線が注がれる中、とても緊張している様子だ。
女は一度深呼吸をして息を整えると、再び真剣な眼差しを白髪の女に向けた。
「この辺りの大学となると、古山大学以外存在していないからです」
女の言葉に、白髪の女は納得した表情を浮かべた。
それと同時に、桃色のパーカー服を着た女に視線を送りながら膠着している三人が目に入った。
「もしかしてですが、あなた達も古山大学の方ですか?」
女の言葉に膠着していた三人は、まるで魔法止まっていた時が動き出すように白髪の女に視線を送った。
「はい、今年で四回生です」
「同じく」
「僕も同じですね」
三人は口々に言った。それに加え、三人とも四回生だと言った。
白髪の女は驚きつつも、言葉を返さねばと口を開いた。
「同じく、私も四回生です」
「私もです」
白髪の女の言葉に合わせるように、桃色のパーカー服を着た女もそう言った。
その場にいた全員が、それぞれの顔を見合わせた。
全員同じ大学の同期生であり、もしかすると年齢も同じなのかもしれないと考えると、何かの巡り合わせを感じられずにはいられなかった。
だが、今はそんなことよりも時間の方が大切だった。
白髪の女は講義開始の間近であることを思い出し、四人にそのことを伝えた。
すると、四人も時間を忘れていたのか、その顔にとても慌てた表情を示した。
五人は、講義に遅れないために揃って走り出した。
世にも奇妙な巡り合わせにより、四人は出会った。
これは、運命の歯車が大きく動き始めた瞬間であり、闇を紐解くための前兆でもあった。
五人はそのようなことを知る由もない。
これから続く物語は、闇を抱えた大学生によって切り開かれる道の軌跡だ。