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はじまり

 ここは屈強な戦士を養成する訓練学校。

 世界最大の傭兵派遣組織<メルセナリウス>が運営している訓練学校である。


 メルセナリウスはいわば世界の警察だ。各国の要人の護衛から社会的弱者の雇用創出に至るまで、世界の秩序を保つ役割を果たす。戦争のない平和な今の時代に欠かせない組織だ。入学生たちは将来、戦士として働くためにこの学校に集う。


 朝6時。

 訓練学校に併設された訓練生向けの宿舎の一室。

 カーテンの隙間から入った朝の光で、室内が薄ら明るく照らされると同時に、テソロが目を覚ました。


 ん〜、とテソロはベッドの上で寝転んだまま伸びをする。伸ばされた腕は、骨と皮一枚でできているかのように痩せ衰えていた。


 十分伸びをした後、ベッドの上で上半身を起こし、寝ぼけまなこを擦りながら部屋の中を見渡す。

 カーテンは半分ほどレールから外れ、部屋の中にある教科書や文房具は床に転がっている。また、ベッドの向かいに設置していたデスクは、死んだふりをしたカエルのようにひっくり返っていた。


 (今日は一段とひどいな。)


 布団から出した足をベッドの外に出してから立ち上がる。


 「今日も頑張る、か!」


 そんなことをぼやきながら、訓練学校に行くための準備を始めた。

 

 * * *


 基礎体力を鍛えるトレーニングが終わり、ペアで行う対戦形式の訓練が始まる。この訓練は、20戦分、勝負がつくまで休憩なしで連続して行われる厳しい訓練のため、訓練生にはかなり嫌厭(けんえん)されている。かく言うテソロも、その1人である。


 10戦目を終えたところで、テソロの戦績は0-10で負け越していた。


 肩を大きく上下させるほど疲弊しているテソロ。そんなテソロにお構いなしに11戦目が始まる。

 初っ端(しょっぱな)から対戦相手による木刀での激しい攻撃に耐えきれず、テソロが足を滑らせて背中から勢いよく尻餅を打った。


 「テソロ!その程度の攻撃も受け流せないようじゃ、憧れの戦士になんて、なれないんじゃないか?」


 強打したお尻をさすっているテソロを見て、教官のザルバシオンが嘲笑する。

 それに気づいた同級生たちも、クスクスと笑い始める。


 (くそっ・・・!バカにしやがって!)


 テソロは唇を噛み締めながら立ち上がったが、あまりの疲れに身体をフラつかせる。

 それを見たザルバシオンが、さらにバカにする。


 テソロはいくら寝てもなぜか取れない疲労が原因で、日を追うごとに身体が思うように動かせなくなっていた。

 食事や睡眠を見直したりしてみたが全く改善されず、ついに原因は分からなかった。

 不幸なことに、テソロには頼れる人もいないので、誰もこの症状を知らない。

 事情を知らない人間からすれば、テソロは単に”やる気のない生徒”にしか映らない。

 この訓練学校にいる人たちは皆意識が高いため、テソロははみ出し者としていじめの対象になっていた。


 地面を踏み締め、フラつく身体をなんとか支えながら訓練を再開する。しかし、結局対戦相手に一方的にボコボコにされる。


 (なんで、こんなにも上手くいかないんだ・・・。)


 20戦目を終了したところで、地面に這いつくばるテソロが、目に涙を浮かべながら、声にならない悔しさにぎゅっと拳を握り締める。

 そんなテソロを見て、ザルバシオンはため息をつきながら口を開く。


 「今日はもう訓練から外れろ。正直言って邪魔だ。明日もそんな調子だったら、退学してもらうからな。こちらもやる気も才能もない生徒の面倒を見続けられるほど暇ではないんだ。」


 「えっ・・・。」


 突然の宣告に、テソロは呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした。

2024/5/18

少し内容見直しました。

投稿後の変更になりますが、ご容赦ください。


P.S. ep.7くらいまでこのタイミングで見直す予定です。

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