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俺達のその後

「やあ、アトリ。久しぶりだな」

 

 店の外で通りを眺めてぼんやりしていたら、声をかけてきたのはカイエンだった。

 こいつまでアルフェリズに来ていたのか。

 

「久しぶりだな。今日はまたどこかの店のイベントか何かか?」

「いや、違う。君に頼みがあってきたんだ。頼み事をするときは直接来るのが礼儀だと思ってね」


 カイエンが言うが……なんかさっきも聞いたような話だな。


「この間のダンジョンマスターとの戦いは好評だったし、あれで俺としても自信がついた。

ついては真理に迫る松明のメンバーでもダンジョンマスターに挑んでみようと思う」


 カイエンが言う。

 こいつらならよほど強力な奴か変則的な攻撃を仕掛けてくる奴でなければ倒せるだろうな。

 単純な戦闘力では俺達やロンドより遥かに上だ。


「ついては、ルートやダンジョンマスターの情報について指導してほしい。

それと、できれは暇なときで良いんだが、トレーニングとして先導してくれるとより助かる。どうかな?」


 カイエンが言う。

 情報なしでダンジョンマスターに挑むのはリスクが高いのはこの間の戦いでも明らかだし、ダンジョンマスター討伐を狙うなら、道中では余計な消耗をしない方がいい。

 

「その位なら構わない」

「相変わらず君はなんというか……いい奴だな。感謝する」

 


 カイエンと話していたら星空の天幕亭のドアが開いた。

 出てきたロンドがこっちを見る。マリーがその後ろにいた。


「やあ、今彼女と話がつきましたよ、アトリ」


 ロンドは普段通りだが、マリーがロンドの後ろに隠れるようにして顔を逸らしている。

 どうかしたんだろうか。


「どういう話だ?」

「本当に私が言っていいのですか?」


 ロンドがマリーに聞いてマリーが頷いた。


「アトリ、マリーと今すぐ結婚しなさい」

「……はい?」


 あまりの唐突な話に思考が止まりかけた。ロンドの後ろのマリーが頬を真っ赤に染めて俯いていた。

 横ではカイエンがやれやれって感じで笑みを浮かべている。


「あなたとマリーが結婚すれば、私と同行して良いそうです。ですから結婚しなさい。今すぐとは言いませんが、できれば早めにね」

「それ……関係あるのか?」


 脈絡がなさすぎるし、強引過ぎるだろ。

 ロンドが分かってないなって感じで首を振った。


「女心の分からない男ですね。いいですか?結婚とは特別なものなのですよ。たった一人のその人との特別な結びつきの証なのです」

「あのね……ボクと結婚してくれれば、ボクはアトリのお嫁さんでアトリとは家族になるでしょ……ロンドさんと一緒にアトリが行ってもね……あんまり心配しなくていいっていうか……その」


 マリーが俯いたままで小声で言う。

 そういうものなのか?


「アニキ、いいじゃねぇか。俺達と一緒に式を上げようぜ」

「そうですよ。それは良案です」


 いつの間にか店から出てきていたアストンとオードリーが言う。


「ボクとじゃ……嫌なの?」

「そうじゃないんだがな」


「こんなかわいい子に結婚をねだられて何を躊躇することがあるのですか。意味不明ですよ」


 ロンドが呆れたように言うが、そう言う問題じゃない。

 いずれはそうなるとか考えなかったわけじゃないが、突然言われると流石に頭がついて行かない。

 ダンジョンでもそうだが、奇襲を受ければ気は動転するし混乱はする。


 マリーが真剣な目で俺を見た……というより全員の視線が集中する。

 いつの間にか、道を歩いていた人たちが人だかりになっていた。店の中からも見られているのが分かる。


 まるでダンジョンマスターの間に入る前のような張り詰めた空気が漂った。

 なんというか、断るのは勿論、考えさせてくれとか時間をくれとかそう言うことすらいえる雰囲気じゃないな、これ。


「分かったよ……じゃあ結婚しようか」

「嬉しい!ありがとう、アトリ!」


 マリーがぎゅっと抱き着いてくる。同時に周りから大きな拍手と歓声が上がった。

 客だけじゃなくて周囲の店とかからも聞こえてきた。


「結婚かよ!トップアタッカー同士で!」

「最高だな、おい!めでたいこったぜ」

「今日は記念日にしよう。アルフェリズの記念日だ」


「式はあたしの店で頼むわよ、アトリ!」

「盛大にやろうぜ!アルフェリズで一番の派手な式にしようや」

「やっぱり俺の目に狂いはなかったな!最高だ!」


「アニキ、おめでとう。マリーも良かったな」

「幸せになってね、二人とも」


「おめでとう、君達に祝福を。是非俺達も参加させてくれ」

「まったく、勿体ぶるものではありませんよ、アトリ」


 周りから色んな声が聞こえてくる。

 マリーが抱き着いたままで顔を寄せてきた。


「どうした?」

「大好きだよ、アトリ。本当に幸せ。大好き。あのね……それと」


 マリーが耳元でいった。


「……結婚するんだから、もう夫婦みたいなものだから……あとでいっぱいキスしてね」




 これにて完結。

 文庫一冊分、10万字程度で話を纏めてみましたが、如何でしたでしょうか?

 読んでくださった方に、百万の感謝を!


 面白いと思っていただけましたら、ブックマークや、下の【☆☆☆☆☆】からポイント評価をしてくださると創作の励みになります。

 感想などお待ちしております。


 

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― 新着の感想 ―
[良い点] ダンジョンアタック系ゲームに転生というネタは何個か見たことがありますがそれでRTA配信を絡めた上でスパチャといった配信の機能まで絡めて読者に理解しやすくしながら命あるダンジョンアタックと言…
[一言] 今日読み始めて今日読み終えましたw RTA配信は無知ですが、嫌味な登場人物がほぼいなくて、テンポよく読めて楽しめました。 終わってしまって残念です。 他の作品も読ませて頂きます。
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