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それから3週間後

 エピローグです。

 あと一話で完結

 あれから3週間経った。


 あのアタックはライブでは流されていなかったらしいが、その後にロンドのアタックとダンジョンマスター討伐、それと俺達とカイエン達のRTA、そしてあの水の精霊オンディーヌとの戦いのセットで各酒場に配信された。

 犠牲者が出なければこれ幸いと配信……というのは商魂たくましいとは思うが。

 

 そして、これはアタック配信史上最高のバズをたたき出した。

 3週間たってもあちこちの酒場でアーカイブが映っていて話題になっている。


 当分は話題になり続けるだろう。

 おかげでここ3週間はアタックを休んでいるが、実入りは良いというか稼ぎには困っていない。



「いやー、いつ見ても良いな」

「まったくだ」


 いつもの星空の天幕亭の昼時。

 マーカス達が映し板ディスプレイを見ながら言った……一体何度見てるんだ、こいつらは。

 

 映し板ディスプレイには水の精霊オンディーナと戦う俺達の姿が映し出されていた。

 自分たちのアタックを見ることは以外にないから不思議な気分だな。


「しかし、もう名実ともに最高のアタッカーだな」

「真理に迫る松明やロンドよりお前等の方が上だぜ、間違いない」


 上機嫌でマーカスが言う。


「……正直いってあんまり実感ないんだよな」

「私もです」


 アストンとオードリーが言う。

 気持ちは分からなくもない……少しづつ記録を上げてきた、とかじゃなくて、わずか半年ほどでここまで駆け上がったんだからな。


 それにあんまり生活が変わってないというのもある。

 特に高い宿で暮らしているわけでもないし、高い時計や車を持つなんて言う世界じゃない。手持ちは潤って金の心配は殆どなくなったが。


「まあそれはそれとして、だ。そろそろ復帰しないか?」


 サンドイッチをかじりながら提案してみたら、全員が頷いた。


「そうだな、アニキ」

「賛成です」

「ボクも賛成」


 あれだけの戦いの後だから三週間も休んでいたが、休んでばかりいると体も鈍るしカンも鈍る。

 それに名声に胡坐をかいていると滑り落ちるのも速い。動画配信もアタックもその辺は同じだろう。 


「そうだな……じゃあ次はどこへ行くか」


 とはいえ、水没都市フレグレイ・ヴァイアはSランクダンジョン。

 そこを攻略した上にダンジョンマスターまで倒してしまったから、次はどこへ行ったものか。


 Sランクならブリューゲルの逆さ尖塔あたりがいいか。神の怒りに触れて逆さにされて地面に埋められた、という設定のダンジョンだ。

 逆さになった塔の天井を歩いて行くという見た目が独特で、シュールな絵を見ている気分になる。


 もしくはダンジョンマスター攻略を狙うなら、風鳴りのタリム渓谷とかもいいかもな。

 ルートが単純でRTAにはイマイチ向かないが、景色が壮大で綺麗だしダンジョンマスターのロックも派手でいい。

 

 そんなことを考えているうちにドアが開く音がして、周囲がざわめいた。

 入り口の方を向くと、立っていたのは久しぶりに会うロンドだった。



 ロンドが周囲の拍手や歓声に応えながらこっちに向かって歩いてきた。


「やあ、皆さん。久しぶりですね。この間は助けてくれたこと、改めて感謝しますよ。

そして、知っているでしょうが……ギルドの計測によると、ダンジョンマスターの間に辿り着くまでの時間は私は56分25秒、貴方達は55分10秒でした。完敗です」


 ロンドが言う。

 タイム計測はそう言えばまったく気にして無かったが、そういうことらしい。


「ところで、今日はどうしたんだ?わざわざアルフェリズまで来て」


 アルフェリズと王都ヴァルメイロの間は遠い。

 ミッドガルドではカーソル一つで一っ飛びだったが、この世界では旅行するのも難儀だ。


 ギルドはアタッカー同士の伝書サービス的なものもやっているらしいから、わざわざ来た理由がわからん。

 余程重要な用事でもあるのか。


「それですよ。

あのアタックですが……私も反省しましてね。やはりソロのアタックは危険のようです。

ですので、アトリ、たまには私のアタックに付き合ってもらいたいのです。あなたたちのアタックは週一度ですから、休みの時一日くらいは私に付き合っても構わないでしょう?」


 ロンドが言うが……なにが、ですので、なんだ。

 相変わらずどこまでもマイペースな奴だな。それにオフの時間も大事なんだが。


「我々二人なら恐らく素晴らしい記録が出る。ゲームの記録を超えることも夢ではありません」

「それって……二人きりでですか?」


 マリーが聞く。


「ええ、そのつもりです」

「ダメ」


 マリーが俺とロンドの間に割って入るようにして言う。

 ロンドが顔をしかめて首を振った。


「マリーチカ。誤解してはいけません。前も言った通り彼と私はライバルであって恋愛感情はこれっぽっちもありませんよ」

「……でも嫌なの」


「アトリの愛情は恋人であるあなたの独占であるのは妥当です。しかし、優秀な人間の才能を独占するのは良くないとは思いませんか?」

「でも……やっぱりダメ」


 マリーが首を振る。ロンドがこっちをじろりと見た。


「アトリ、なんとか言いなさい」

「知らん。そっちで話し合ってくれ」


 ロンドが言うが……なんかすでに蚊帳の外のような感じだな。 

 言い争う二人を置いておいてとりあえず店の外に出た。



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