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恩返しと仕返し

「お前がその行き倒れか。あんなところで行き倒れるとはどうしたのだ?蝙蝠に驚いて足でも滑らせたか?ん?」


 そいつが嫌味な口調で言う。

 大体話の察しはついた……アストンは金を払っての練習中に俺を助けてくれたわけだ。

 そしてこの弓兵(アーチャー)のアレックスは元パーティメンバーってわけだ。


「だが、弓兵(アーチャー)が居なくなったからな、頼れる仲間が増えたではないか」

「カリュエストールの滝壺で転んで気を失うような奴だぞ。何の役に立つのだ?」

「そりゃそうだな」

「しかも結構おっさんぽいよな」

「どこにでもいそうなモブガンナーだぞ」

「その年でソロでカリュエストールの滝壺で練習とか、アタッカー止めた方がいいんじゃね?」

「弱っちい奴はいない方がマシだよな」


 そう言って4人が大笑いする。

 アストンが我慢するように俯いた。


「マリーチカ、それにオードリー。こんなお人よしバカに付き合っててもしかたないと思わんか?」

「アタッカーなんて止めておけ。俺たちが可愛がってやるよ。たまにはアタックに混ぜてやってもいいぞ」

「……行こう」


 アストンが絞り出すように言う。


「デビュー戦を楽しみにしているぞ」

「見物してやるからな。精々良い物を見せてくれ」

「お前のような農村出身の田舎者がどんなアタックを見せてくれるんだろうな」

「さぞかし鈍くさいものだろうよ」


 後ろからミハイル達の声が聞こえてくる中で、酒場を出た。



 アストンが無言で宿への道を歩く。その横でオードリーが何か声を掛けていた。

 さっきまでのスポーツで勝ち試合を見た後の高揚したような気分はすっかり失せてしまっていた。

 この状況がまだつかめていないとはいえ、あそこで反論できなかった自分も我ながら情けない。 


「悔しいね……ボク、悔しいよ」


 横を歩いているマリーチカが呟いた。


「だってさ、アストンもオードリーもいい人なんだよ……それがあんな奴にあんな風に言われるなんて」

「そうだな」


 アストンがいい奴なのはもう十分に分かった。

  

「あいつらはなんなんだ?」

「この町のアタッカーだよ。なんか偉い人の息子さんなんだって。アストンが気に入らないらしくてよく絡んでくるの」


 マリーチカが教えてくれる。

 そういうことか。装備がやたらよかったのもだが、いい配信の時間枠を貰えているのも親の権力のなせる業か。


 しかし、誰かを気に入らないのに理由は要らないわけだが……なんでわざわざ人に絡んだり嫌がらせして構う奴がいるのか。

 これは日本でも地球でもここでも同じか。


「なあ、アストン、一つ聞いていいか?」

「ええ、どうぞ」


 アストンが振り返って足を止めるが……さっきのことは聞いてほしくないっていうオーラが出ていた。

 そのくらいは俺も察する


「あのアタックっていうのは戦う必要はないんだよな」

「ええ……まあ。でも戦わないとみてもらえませんよ」


 怪訝そうな顔でアストンが俺を見る。


 さっきのを見た限りバトルが華なのは分かる。

 ただ、同じスタイルで行くというのは競争が激しい分野(レッドオーシャン)に飛び込むことになる。


 同じスタイルでは後発が上位層に人気で勝てるとは思えない。

 人気を出す方法は一つじゃないし、同じ道を行かない方がいい。ゲーム実況でも言えることだ。


「一つアイディアがある。乗ってみないか?」


 そういうとアストンとオードリーが怪訝そうに顔を見合わせた。


「でも……なんというか、その」


 アストンが口ごもる。

 アストンたちから見れば俺は自分達と同じレベル1のモブガンナーで、しかも初級ダンジョンでぶっ倒れてたよくわからんオッサンに見えるだろうな。


「助けられた恩を返したい。一度だけ信じてくれないか?」


 なぜ俺がここに来たのかさっぱり分からない。

 ただこいつが俺を助けてくれたのは確かだ。


 ミッドガルドでは、HPがゼロになったら15秒の間のあとに再出撃(リスポーン)する。

 だが、この世界にはHPがゼロになったらリスポーンなんてことはないんだろう。

 ならこいつがお人よしを発揮して助けてくれなければ、あそこで死んでいてもおかしくはなかった。


 それにあそこまで露骨にバカにされると大変腹立たしい。

 見た目はモブガンナーでも中身は違うぞ。あの連中に目にもの見せてやる。



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